やいやい、エシャンタールやい!
りぃ!こんなところでなにをしている!?
あっれ?
私もう指名手配されてないよね?
真龍の王バハムートを止める手立てを見つけ出すことはできたか!?とうとう、戦いが始まるぞ。真龍どもの攻撃で、冒険者を乗せていた飛空艇が落とされた。
なんと。
戦闘艇の準備も終わり、俺たちが工作できるのもここまでだ。しかし……、おまえたちには幸か不幸か、ジュノ戦闘艇隊の指揮をとられるエシャンタール様が見当たらん!
いないの?
ナグモラーダ様も護衛もつけぬまま行方がわからぬし……くそ!まさか、おまえたちの差し金ではあるまいな!?
あんたは、本当にもう。
ばれたか。げっへっへ。
……いや、悪かった。皮肉はやめてくれ。
いくら無意味な戦いを嫌うといっても、むざむざ祖国が焼かれることを喜ぶ輩などいまい。
だねぇ。
私も同じだ。古代の民だろうがなんだろうが、真龍どもからこのジュノを救ってくれるのならば、協力するほかない。
ウォルフガング様!3番戦闘艇を持ち出した犯人がわかりました!
どうも、あのタルタルたちの仕業のようです!彼らが「定めの地」とやらに行くと話しているのを聞いた者がいます!
戦闘艇を持ち出しただと!?もしや、あいつらがお二方の行方について、なにか知っているのか!?
チェブキー兄妹が飛空艇盗んだ?
いくら何でも動かせないでしょう。
乗組員脅したのかな。
しかし「定めの地」とは、いったいどこのことだ!?手分けして手がかりを探せ!
タブナジアかしら。
天華崎だって。
えっ、なんでスフィアロイドが出てくるん!?
見張り?
あれ?
エシャンタールだ。
りぃ。よくここがわかりましたね。やはり、母なるクリスタルの記憶に導かれて?
母なるクリスタルの記憶?いや、分かんない。
なんで私が母なるクリスタルの記憶を?
カー君からも「母なるクリスタルの祝福ある人」って言われたけど。
なんかどうかなった覚えがないぞ?
クリスタルラインを止めても、人の営みが生の営みが続く限り、母なるクリスタルの記憶は続く。
ああ、私がどうこういうわけでなく、人だから母なるクリスタルの記憶に導かれた。ってことだったのかな。
それは誰にも止めようがないこと。なぜなら「人」は、クリスタルの光から生まれ、クリスタルの光となって果てるものであり……
(……そして「人」は、闇から生まれ、闇に戻るものでもあるから……。)
……?
(……そう、「人」は相反する「光」と「闇」……。そのふたつをその身に宿している……。)
(……すべてを照らす「クリスタルの光」にて生まれ出で、無を望む「虚ろなる闇」にて死んでいく……。)
(……それは、女神アルタナの作り出した循環。男神プロマシアのために作り出された循環……。)
アルタナがプロマシアのために作った?
りぃ。なぜあなたは、私の心を……?
え?
今、エシャンタールの心を読んだの?
セルテウス……
あっ、またアミュレットを通して何してるか見て出てきたな。
あなたは、りぃになにを?
……。
えっ…?
私、いつの間にかセルテウスに魔改造されたの!?
イヤアアァァアァ!
…いや待てよ、私もエシャンタールもアミュレット持ってるから聞こえたのでは?
……いいえ。今は、それを問うときではないのですね。今は、1万年の時を経て、あなたに再び巡り合えたことの意味を確かめ合うとき。
セルテウス。定めの時は来たりて、あなたから託された霊獣との契約は、人の手によって果たされ……「世界の終わりに来る者」は、封じこめられました。
タブナジアの魔石として体内から虚ろを取り出したこと言ってるのかな。
しかし、あなたと共に現れた霊獣バハムートは、契約が果たされていないと言う。
やはり、「世界の終わりに来る者」を母なるクリスタルの循環より解き放たなければ、あの契約は果たされたとは言えないのでしょうか?
……。
循環から解き放つ?
ただの死でないのなら、エシャンタールのように不老不死にということ?
セルテウス。人の言葉にする必要はありません。「絆の証」が、あなたと私の偽りのない心を繋ぐでしょう。
さぁ、1万年の間、私とあなたが辿った道を分かち合いましょう。ヴァナ・ディールの、未来のために。
1万年間のビジョンを見るのにどれくらい時間がかかるんだろう。
シュー……バリバリバリバリ
攻撃音!?
あっ、セルテウス速攻デジョンで逃げた!
……ク、逃げられたか。
お前かよ!!
エシャンタール、今のが、おまえの策とやらか?「絆の証」にて心を繋ぐなど。おまえもプリッシュなる女のように、その心を乗っ取られるつもりか?
まだ乗っ取られたとか言ってんの。
証拠もないのに自分の思い付きを信じてそれを軸に動くのは危険極まりない。
……いや。乗っ取られたということにし、保身を図るつもりだったかもしれんな?セルテウスを故意に逃がしたときの言い訳に。
あっ、兄妹!
なるほどナグモラーダに言われて飛空艇盗んだのね。
……。
さすがにジラートの民。見苦しい否定をしない、か。
呆れて物も言えないだけでは。
しかし、母なるクリスタルは私に教えてくれたぞ。おまえも私と同じくクリューであったということを。
ジラートじゃなくてクリューだったの。
まぁ、現代人にとっちゃどっちでもいいんですけど。
明星の巫女イブノイル様が、「心の言葉」失いしクリューの民を癒すべく作り出した「虚ろの器」……。
癒しの道具なの?
真龍の王バハムートがその名を出したときに気づくべきだった。
おまえたちジラートどもが、神都アル・タユの調査を拒んだは、あれが完成していた事実を隠すためだな?それほどまでに、私の持つ「クリューの交渉能力」とやらが惜しかったのか?
……神都アル・タユは、1万年の昔、「虚ろの器」と共に滅びました。
いくら私が説明しようと、どうしてもあなたは信じようとはしませんが、ジラートは皆、今もそう信じて疑いません。
ナグモラーダは自分が信じたいことしか信じないよね。
あのとき神都を包んだクリスタルの力と、神都に飲まれた霊獣の力。それらの作用により時空が乱れ、1万年の昔よりここへ彼らは現れた……という説明だな。
時空が乱れたの?
バハムートとセルテウスは1万年前の戦いの直後にここに現れたってこと?
その割に1万年経ってるって分かってる感じだったけど。うーん?
……それが本当に、ジラートの信じる真実かどうかは、クリューであるこの私には計れんが……どちらにしろ、既に私は、霊獣ディアボロスより、素晴らしい福音をいただいている。
福音?
霊獣ディアボロスいわく神都アル・タユは、第5の母なるクリスタルの向こうに、今もなおあるそうだよ。
ああ、それ。
神都に暮らしていたジラートの民も、今もなお生きているそうだ。
そ……れは……!
それを聞いては黙ってはいられまい。時空のゆがみの先だろうがなんだろうが、私はそこへ行き確かめねばならん。
そして、おまえと同じように「虚ろの器」にて不死の身体を手に入れる。心の言葉をも取り戻す。
……ナグモラーダ……。
ナグモラーダはクリューになってしまったことが未だに耐えがたいんだな…。
あなたはジラートを愛し、ジラートに焦がれているからこそ、あの時もクリューを裏切ったのでしたね……。けれども、行ってはなりません。セルテウスは忠告してくれました。
神都アル・タユは、もはや、私たちの知る祖国ではない。人が足を踏み入れてはならぬ禁断の場所だと。
禁断の?
これで、セルテウスの心を読んでみなさい。セルテウスは教えてくれます。
そうして奴にむざむざ心を乗っ取られよと?
まだ言ってる。
……とりあえず、おまえにはここで死んでもらおう。セルテウスに殺されたということでな。
……!待ちなさい、助けてくださるのならいくらでも出しましょう!
お金??
……!?おまえは……、ハハハ、確かにクリューだったことがあるようだな!?いいぞ、そこまで堕ちた姿を見せるとは!
……。フフフ、落ちたのは私ではありませんよ?
??
落札ぅ!
まいどありぃ!
!!!
デジョーン☆つぅ~!!!
トリプルデジョンIIだあああ!!!
どこまで飛ばされたんだナグモラーダ!?
助かりました。私に手を貸してくれて、本当ありがとう。頼もしい3兄弟たち。
いったいいくら請求されるんだろう。ガクブル。
これでナグモラーダは、ジュノにはいられなくなるでしょう。あなたがたは、もっとも正しい判断を下した。
てへ!
けれども、セルテウスは行ってしまったのですね……。セルテウスの見せた……神都アル・タユ……しかしあれは……
十分に情報交換できたのかな。
おおっ。
ああ……真龍との戦いが始まる。意味なき戦いが、始まろうとしている。
(……それでも戦うほか道はない。女神アルタナよ……、私たちに勝利を……)