冒険者さん。お久しぶりです。……あら？
冒険者やっと見つけたぞ！今までいったいどこにいたのだ！？
あちらこちらに行ってました…。
ギルド桟橋でおまえに伝言したこと、きちんとヤツに伝えたか！？
こんなに熱血だから本物の方ですね。
あれは本人聞いてたから、特に伝えては無い…。
カッファル伯爵夫人様、あなたの平穏な時間をかき乱して申し訳ない。しかし私にとっては、生死に関わる重要なこと。
……冒険者、おまえなら知っているはずだ！卑しき血流れるヤツはどこだ！？
…卑しき血。
卑しき血？ルーヴランス、もしやあなたが言っているのは、赤い仮面の男のことですか？
面識あるの？
！？ヒナリー叔母様、ヤツは、まさか、あなた様に何か！？
落ち着きなさい、ルーヴランス。
実はこの方、赤い仮面の男からあなたへの伝言を申し付かったそうなのです。
いったい、何て！？
ああ、偽ヴランスの正体知ってるわけじゃなくて、「赤い仮面の男」って情報を聞いたのね。
「ウルガラン山脈にて待つ。騎士として誇りある戦いを望む」と……。
即ダッシュで行ってしまった。
あんなに頭に血をのぼらせて。ルーヴランスは大丈夫でしょうか？ウルガラン山脈まで、彼のことを追いかけてくださいませんか？
うん。
アレが玉にキズな所なんだろうなぁ。
来たけど、ここのどこ…。
って、いるし！！
どっちがどっちよ。
構えから推測は付くけど、ヘッドギアが見えないから断言できない。
どうする？
やめて！ルーヴランス！
どっちがルーヴランスなの！？
いや、ルーヴランスしか選択肢が無いし、ここからじゃどっちがルーヴランスか分からんのもそうだし、ルーヴランスと声をかけるしかないのか。
こらー！ルーヴランスー！
こっち見た。
もうひとりが動いた…！
紫！本物！
ってことは
アタルフォーネ！！
はっはっはっは！ようやくこの技が決まったぞ！もし生まれ変わりがあるならば、次には、僧侶にでも生まれ変わるといい！この世で犯した罪を償うためにな！
どうして自分の名前じゃないのにふり返ったの。
おまえのおかげだ、礼を言う、りぃ。ヤツめ、私のことをなめきっていたようだ。
しかし私は、昔の私とは違う。ドレッドドラゴンに敗北したときから修行をしなおした。生まれ変わったのだ！……それもすべて世界の平和を守るため！
ドレッドドラゴンって…かつてドラゴンミッションに登場していた頃があった、その時の事か。
闇の王を追い、黒き神を追った私は、彼らの上にのさばる謎の存在「世界の終わりにくる者」に挑まなければならん！
…挑む？
おっと、余計なことを言ってしまったようだ。「世界の終わりにくる者」については、この私に任せておきたまえ。
え。
では、またどこかで会おう。私がこの世界を救うときに、また。
それもう、倒したよ…？
偽ヴランスはあれで死ぬわけがないし、今あそこで笑ってそうだし、放っておいて帰るか…。
近くに仲間いるだろうし。
名前呼ばれてこっち見たのは、きっと相手に仕掛けさせるためだったんだな。
心配しているであろう夫人に、ルーヴランスは無事だと報告せねば。
ん？
この前の修道士？
これはこれは。あの騎士の方、大変なけん幕でしたから血が流れるのではないかと怖れておりました。ご無事で戻られたようでなによりです。
…ちょっと待って。
名前は Meransarget だし顔も違うけど、この人怪しくないか？
え？相手の方は命を落とされたと？それは痛ましい。その方のために、私が祈りを捧げましょうか？
いや、いいよ。
死んでないし。
フフフ……怖れておいでですか？その方の御魂は、あなたにこうおっしゃっておりますよ。
「ギルド桟橋に仕掛けた罠を、おまえが無残にうち破りさえしなければ私は死ぬ必要もなかったものを……」と。
何言ってんの。
やれやれ、おまえの無反応さには呆れるな。俺の芝居は退屈か？
芝居って言っちゃったよ。
仕方ないか。今まであったことを思えば、おまえがちょっとやそっとのことで驚くはずもないからな。
では再会を祝そう。このくだらない世界に、ダラダラと続く日常に。
まったく、腹立たしいな。俺たちが命がけで切りひらいた運命は、まるで予定通りだったかのような平穏さだ。
私たちのやったことが大成功だったって事だよ。
容赦なく狂わされたのは、俺たちの運命だけ。ことが予定通りに進んでいれば、西国からタブナジア復興の援助をもらえる手はずだったんだが……
目をつけていた「タブナジアの魔石」は、プリッシュの手で男神に打ち込まれて消えてしまった。
今思えば、大量の虚ろを欲していた男神に超濃縮高濃度虚ろであるタブナジアの魔石を投げ入れたのはとてもヤバかったのでは！？
全部まとめて消してやる。ってつもりなのかと思ったけど、プリッシュはどうして投げたんだろう。
加えて、枢機卿の正体がああだとわかった今では、奴を敵にまわすはこれ以上ない愚策となった。
逆に手伝ってもらえばいいのに。
タブナジアの復興に関しては、手を貸してもらえるんじゃないの？
それに、皆が望む楽園、アル・タユの地をこの目で見てしまった俺には、楽園の扉への興味も失せたよ。
あれじゃぁねぇ。
かなり興味持ってたのにね。
…アタルフォーネの喋り方がずいぶんフランクだな？
もうルーヴランスじゃないから騎士っぽい喋り方しなくていいってことか。
これが素のアタルフォーネなのね。
……しかしまぁ、いい。これ以上、奴の名を名乗らずに済むようになるだけマシだ。凡庸な人間になりきるは楽だが、身のほど知らずの愚か者になるのは苦行だからな？
何も言えねぇ。
おまえも奴と何度か会ってわかっただろう？ミスタル家に生まれつく者は皆、熱血で目立ちたがり屋……
えっ、代々そうなの…？
お父さんも、フランマージュも？
そのうえ愚か者だ。なにしろ、奴はミスタル家を貶めるもととなった「決闘」を二つ返事で受けてたったんだぜ？
確かに…。でも都合よかったでしょ。
……なに？だからこそ、あんな芝居で片がついたわけだと？
うんむ。
そうだな。俺の望みを叶えるためには、名を変え、今一度、再出発すればいいだけのことだ。
「再生の鏡」さえあれば、私にはどのような罪も見ることができる。どのような者でも俺に協力することだろう。
ひぇ。
それが手口だったのか。
ってか、その鏡の修理の材料集めたの私なんだから感謝してよね！
タブナジア復興、侯爵家の再建、騎士団の新生。そして……
レヴメルの名が復活する。
レヴメル？
レヴメル…。
あーーーーー！！！
ルーヴランスのお父さんと決闘した相手の人の名前だー！！！
アタルフォーネも元伯爵家だったの！
ミスタル家はセルビナに行ったけど、レヴメル家はタブナジアに行ったのかな。
それだったらタブナジアの復活をこれだけ頑張ってるのも分かるね。
んで、その手柄の褒美に公爵家復活してもらう計画なのかな。
りぃ、俺も奴も、ひとつだけ似ていることがある。歴史に「名」を残すまで、決して諦めぬということだ。
では、失礼するよ。さようなら、りぃ。
うん。頑張れ。
過去の罪が打ち消されるくらいに。
今度はあまり悪いことしないように。
…もしかして、お父さん同士が同じ顔同じ髪の色だったのは、ルーヴランスとアタルフォーネを同じ顔にするためかなぁ。
あっ、仲間が迎えに来てる。
まさかアタルフォーネ盗賊団とこんなに関わることになるとは思わなかったよ。
もしかしてまた、登場することもあるのかな。