ただいま。
よくぞ成し遂げてきたな!闇の王の復活前に間にあったのか!?
何言ってんだ、フォルカー?復活した奴を倒したに決まってるだろ、なあ!?
うん、まぁそうだね。
まさか!?あの闇の王を!?
一介の冒険者が、とお思いですか?最近市井の者たちがよく言っている言葉をフォルカー隊長も御存知でしょう?
「冒険者たちの時代」とな……。
この時代が誰の時代だったかなど、後世の歴史家が決めれば良いことだ。
そして闇の王が復活前に封じられたか、それとも復活して倒されたか、それはどちらでも良いことだ。
合理的だわね。
プレジデントのことが分かってきたぞ。
何故プレジデント呼びにこだわるのかは分からないけど。
重要なのは、闇の血族の勢力拡大を止めることができた、ということ。そして、それを行った者には報酬が必要ということ。
御苦労だった。この功績に対しおまえのランクを6にしよう……。そして報酬だ。
ありがとっ。
闇の王を倒したとは言え、まだ闇の血族が滅びた訳ではない。獣人たちの本拠地では、あやしい動きがあるとの報告も受けている。
いつものセリフだが、これからもよろしく頼むってことだ。
はー、一件落着だね。
そうか、闇の王の正体は……。ザイドは薄々感づいていたのかもしれんな。だから部隊を離れて……。
20年前に闇の王を倒したのはザイドだから、とどめをさせていないのが分かってて救う方法を探してたのかな。
いや、戦ってる最中に正体に気づいてとどめをさせなかった…のかな。
すまんな。このことはフォルカーにはまだ黙っておいてくれ、ウルリッヒ隊長のことも、奴に告げるのは酷と言うものだ。
叔父さんが闇の王誕生の原因になったとか、とんでもない事実だものね。
奴は叔父を尊敬していた。それゆえにラオグリムの死で隊長の地位を得たという陰口に悩んでいてな……。
うん。
こうやって隠してしまうことが良いとは決して思わんが、我々弱い人間には、時という薬が必要なときもあるんだ。
知る必要のないことは、知らないままでいいよ。
何のお話ですかな?
ん?カルストの奴、相変わらずだな、って話さ。
かわし方が上手い。
でも、私は少しわかった気がしますよ。プレジデントの人となりが……。
だねぇ。
そうだ!そう言えばまだ聞かせて頂いてませんよ。工房長がプレジデントを推薦なさった理由。
ああ、昔聞かれたな。15年前のパルブロでの事故のときだ。わしが責任をとって、火薬研究所所長を退いた後も、政府は責任のなすりつけあいでゆれた。
その頃からもう腐ってたのか…。
そんななか、たった1人パルブロを捨ててツェールン鉱山の再開発する案を提出したのがまだ新米官僚のカルストだった。
クゥダフに占拠された鉱山を取り戻すために、時間も戦力も必要、取り返せたとして多大なる犠牲は必至、再び使い物になる鉱山に戻す時間もお金も必要。
となれば、他の鉱山を開発した方が時間もお金もかからない、何より犠牲者が出ない。
ってことよね。
合理的だわ。
そりゃひどい案だと思ったさ。パルブロで働いてた奴の気持ちも考えてない。だがな、少なくともこいつの政治屋としての技術は信用できると思ったよ。技術屋の勘さ。
用語辞典によると、ツェールン鉱山の開発が始まったのが12年前だから、プレジデントの案が採用されてその時から掘り始めたのね。
シドは再開発って言ってるから、ちょっとは掘ってたのかな?
それに……あいつ、わかりやすいだろ?想像つかないか?あいつがその案を提出したときの、功名心で必死な顔。
腐った大臣たちにはらわたが煮えくり返ってるところが想像できる…。
シドのガハハ笑いで闇王ミッションは締めくくられたのであった…。