アトルガンに戻ってきたぞーい。
王子いないな。
手紙届けた報告しようと思ったけど。
??? : ……御免!
ぬおお!?
??? : 御主、西から渡って参られた冒険者のりぃでござろう?そして、今は「さらひん・せんちなる」に仕える足軽の身。相違ござるまい?
うん。
ヤグード的には傭兵は足軽なのね。
いや、これは失敬つかまつった。拙者も、そなたと同じ中の国より参ったゲッショーと申す者。……「やぐうど」でござる。
いやさ、心配には及ばぬ。拙者、異端のかどで彼の教団を追われ今は、この国で仕官の口を探す、素浪人の身でござれば。
ヤグード教団から抜けたのか。
確かに異端っぽい感じ。
御主と同様、うっかり「さらひん・せんちなる」に仕える足軽の身となり申した……。
うっかり…。
さて、いきなり単刀直入にて恐縮でござるが、御主、「らいふある」という足軽と懇意でござるか?
勝手に首振った。
なんとっ!存ぜぬと申すか?話が違うではないか……
……「こんじき」の具足をまとった男と申せば判るか?
丁度探してたのよ。
まぁ、よい。
いいんかい。
その「らいふある」と申す者より、「さらひん・せんちなる」の足軽、りぃに渡してくれ、と拙者が預かった品がござる……。
なんだろう。
回想になった。
……東の諸国とあとるがん皇国は、かれこれ十年以上にもわたり、断続的に戦闘を続けているのだ……。
……それは長い。それでは両国とも疲弊しておろう。まして、それを支える民はどうなる?
困窮しているでござる。殊に東の国には、他にも大事が起きておる故。
虚ろ、か。
この国とて同じだろう。広大な国土と膨大な兵力を抱えていたはずの軍事大国が、今では皇都の防衛に、傭兵の力まで借りねばならないのだからな。
今は、両国の間に横たわる戦場に両軍が幾重にも塁壁を張り巡らせた結果、戦線は、膠着状態に陥っているようでござる。
塹壕戦か……。私が聖皇ならば、巨大な突破力を備えた兵器か、魔法を使用するか……
あるいは、敵後方の都市や幹線道路に工作兵を送り込み、補給線を破壊する方法を採るだろうな。どちらも、その手段があればだが……。
…………。
……どうした?おかしなことを言ったか?
的確な戦術を述べすぎたのよ。
いや、御主は、騎士くずれのただの傭兵ではないのか?ずいぶん戦略的な見地からのもの言いだが……。
お……おお。そうであった。いかんいかん。
そう言うお前こそ、ミンダルシアのヤグードにしては、東国の情勢にまで明るいとはたいした国際人ぶりではないか?
……いやはや、これは耳学問でござるよ。それより……ん?
ヤグードは東の国と交流があるからね。
昔、ひんがしからウィンダスに使節団が来たけどウィンダスが門前払いしてしまって、でも手ぶらで帰れないから近くにいたヤグードに親書を持って行ってそこから交流が始まった。って。
どうした?ゲッショー?
しっ……曲者にござる!そこに潜みし者よ、出て参れっ!
煙と爆音とともに急に現れたー!!
トラビアルスではないかっ!?
なんだ、御家来でござるか?
もう、ゲッショーもトリオンが身分が高い人って分かっちゃってるじゃない。
!!!
ピエージェのやつめ。クリルラに何を……。いや……、あのことを知るのは……ハルヴァー!ええぃっ!
ピエージェ王子が考えがあるって書いた書状だ。
クリルラが責任を取ってえらい目にあわされるとか書いたのかな。
あの事っていうのはきっと過去の「事件」よね。
一体どんな内容の手紙なんだ。
……いかがした?
ゲッショーよ……。話の途中で中座する非礼を許してくれ。すぐにでも、国元に帰らねばならなくなった。
ほう。それはまた急でござるな。……国元でなんぞあったか?
!!
ふっ。
国というより、クリルラの一大事って感じ?
お前には関係なかろう?
すまぬ……。立ち入ったことを聞いたな。
……いや、私こそ言い過ぎた。
そうだ。この者は我が国の従騎士……
トラビアルスと申します。先ほどの非礼、御許しください……。
ほう。さっきの身ごなし。東方の忍びの技であろう?
はい。よくご存知で。
この者を、しばらくここに滞在させる故もし、火急の用あらば伝えてほしい。
承知した。
立場は違えど、互いに憂国の士。いずれまた、この街で相まみえることもあろう。今日のつづきは、そのときにでも話すとしよう。
憂国?
ゲッショーはヤグード教団を追われてきたのよね。それでも憂いている?
いや、オズトロヤとか国って定義なのかな?
そもそもヤグードはミンダルシア大陸の先住民で、タルタルにサルタバルタを追われてメリファトに行ったわけで…。
あれ?
ヤグードの名前って、ヅェー・シシュとかメー・デギみたいのだよね。
ゲー・ショウじゃなくて、ゲッショー?命名規則が違うよ。
うーむ。
ひんがしに詳しいし、話し方がすごくテンゼンっぽいし、もしかして本当は中の国ではなくひんがし出身なのでは?
使節団が来て交流が始まった時、護衛を兼ねてひんがしに100人ヤグードが行ったらしいからその子孫とか。
ああ、……そうだな。
ん?
なんだかそれはできそうにないって思ってそうな感じ。
どうしてだろう。
……急ぐのであろう?早う行け。
いろいろ世話になった。……さらばだ。
……かような次第で、「らいふある」は国元へと帰った。そろそろ、「まうら」に着いておる頃であろうか。
それにしても、あの背中まるで王の如き威厳であった……。
サンドリアは安泰っぽいね。
おお、そうだ。これはその後「とらびあるす」より御主に、と預かったものだ。
ありがと。
では、りぃ。拙者、そろそろ失礼いたす。 我らが社長は、阿修羅の化身でござれば、道草がばれたら首がいくつあっても足らぬのでな。
ナジャ社長は阿修羅だったのか…。なるほど…。
だいじなもの:ライファルの書置きを手にいれた!
これだけかい!!
でも書置きを残してくれるのは嬉しいね。
??? : ……ナ四国の要人が、ジュノに参集。臨時四国会談が、開かれたよしにございます。
ん?これは?
??? : そこに、わらわの傭兵も参加していたのは確かか……?
??? : 御意。
??? : ……大儀であった……。……下がって休むがよいぞ……。
つまりこの幕の向こうにいるのが聖皇で、聖皇は女性で。
私はつけられていて、ジュノでの会議も見られていた、と。
??? : よし、下がれ。
??? : ははっ。
??? : ……やつを、泳がせておいて正解でしたな。計画どおり、食いついてまいりました……。
??? : ……丞相。
泳がせておいた「やつ」
きっとトリオンのことね。
中の国にわざとに情報を流した?
何が目的なんだろう。
??? : ……冒険者をあなどるでない。われらも次なる手、打たねばならぬ……。