やれやれ。勝手な話は、そこまでにしてもらいましょうか。ルザフさん?
フリット……。
復讐をあきらめるのはあなたの勝手ですよ。でも、こちらは部下共々復活させてさしあげましたしブラックコフィン号だって浮かべてあげた……もう、契約は履行済みなんですよ?
あなたは、ハザルムに行き新たな冥路の騎士への叙任……つまり、オーディンの化身となるしか道は残されていないんです。
フリットってそこらへんにいるインプじゃなくて、オーディンのしもべ?
じゃないと部下の復活とか船を引き上げるとかできないよね。
でないと、どうなるかわかってますね?あなたも、あなたの手下も……。
……。
ねぇ、ハザルムって?
くすくすくすっ……。
お気の毒なことです。聖皇さまなのに、なぁ~んにもご存知ないんですねえ?お人形遊びが過ぎて自分が宰相さんのお人形になっちゃったといったところでしょうか?
……なんですって!
よせ、フリット。
皇国にとって都合の悪いことは知られないようにされてただろうからね…。
これは失敬。お詫びに、ハザルム試験場について教えてさしあげましょう。
あそこで行われていた錬金術とやらの実験が、一線を越えてしまったんでしょうねえ。無礼にも、オーディンさまのおわすヴァルハラ、あなた方の言うところの冥界へと通じる穴を開けてしまったんですよ。
えぇ!
穴開いちゃったの!?
そっか、オーディン本体は冥界にいるのね。
まぁ、おかげでこちらの世界への近道としてぼくらは利用させてもらってますけどね。くすくすくすっ!
フリットは冥界出身なのか。なるほど。
……わかった。ハザルムに行こう。
ええ、ええ、そうでしょう!ハザルムに行きましょう。それしか選択肢はありませんからねえ~。
るざふヨ、ほんきカ?
俺は、ハザルムでオーディンに謁見し、契約を破棄する。
ええ、ええ。契約を破棄しましょう……って、えええええ!?ななな、なに考えてるんですか!?ルザフさん!
ルザフ、いいの?
ああ。人には各々逃れがたい宿命がある。だが、その宿命を変えるのもまた人だ。
俺は、それを君に教えられた。
?……マウに?
君を見ていると……忘れかけていた昔の自分、そう、まだ希望に溢れ留学していた頃の自分を思い出す……ウルグームには知らないことがたくさんあった。俺の知りたいことに満ちていた……。
アフマウ。君は皇国を……そして、皇国の民の窮状を救う術を探しているんだろう?そのために、今では自分の国アトルガンの……いや、世界の真の姿を知りたいと願っている。
ええ……でも。
アフマウ、いや、ナシュメラ……。
!?
だったら、君も来ればいい。ハザルムへ!そして、自分の目で真実を見極めるんだ。
……う、うん。
(くすくすくす……。世の中には、知らない方が幸せなことだってあるんですけどねぇ……。)
提督。
……どうした?
また、ネズミが艦内に入りこんだようです……。
……待って!
ひ~ぃ~え~~~
なんだ?
その人はマウ専属の傭兵なの。お願いよ、手をださないで!
でも、どうして……どうして、ここに?
ルザフを探せと言われたけど、正直アフマウが心配だった。
アフマウを探してたのよ。
うれしい。りぃ、マウを手伝いに来てくれたのね♪
いや、手伝いって訳では…。
リンクパールは没収してあったはずだが……君が呼んだのか?
え?ええ、そうよ。マウを守る……そう、護衛してもらおうかなぁ、なんて!
ね、ねぇ?メネジン!
……う、うむ。……手紙をビンに入れて、流したのだったな……。
無茶な。
(やれやれ、また厄介者が増えましたねえ……。)
本当か?どうも、胡散臭い話だな?
コホン!ちょうどいいじゃないですか?ルザフ提督。王国再興には先立つモノも必要です。
ほら、提督が皇国から奪還し、タラッカ入江に隠してあるイフラマドの財宝……その隠し場所付近を近頃、不滅隊が嗅ぎまわっているとか……。
なに?
だが、あれには強力な隠蔽の魔法をかけてあるのだろう?この世に2つ、お前と俺しか持っていない冥衆の護符がなければ、だれにも気づかれないはずだ。
ええ、あの魔法には自信があります。けれど不滅隊のみなさんもその道のエキスパート。万にひとつ、破らぬ保障はありませんから。
そこで、りぃさんを使うんですよ。
ここから、ハザルムに向かうならちょうどタラッカ入江の近海を通ります。ルザフさんの冥衆の護符をその傭兵さんに渡して、財宝の側で警備してもらえばいいじゃないですか。
この人、アフマウさんの忠実な傭兵なんでしょう?だったら安心してまかせられるしいざという時にも、不滅隊を欺くことができそうですし。
いやよ、りぃはマウといっしょに……。
そうですか。仕方ありませんねえ。失礼とは思いますが、この傭兵さんが船に残るというなら掟に従い、怪しいところがないか徹底的に調べるしかありませんけれど……
ねぇ、サラブワーン副長?
そ、そうだわ。りぃは、たしか、ええっと……
(とりあえず、ここは話をマウにあわせて!)
うん。
そう!皇国軍の信頼も厚いの……だから、確かに財宝の護衛にぴったりよ♪
わかった。そういうことならこいつを信じ、任せるとしよう。
アッサリ信じたぁ!
りぃ、こいつを受け取れ。いいか、俺たちが迎えに行くまで持ち場を離れず心して財宝を守っていてくれ。
ここまで来てまさか財宝見守り係になるとは。
だが、財宝よりも大事なことが起きたと思った場合……命を捨てる覚悟で俺の下に戻ってこい。
だいじなもの:冥衆の護符を手にいれた!
本当に降ろして行ってくれた。
不滅隊が来るから財宝を守れと言われても、実際どうすればいいことやら…。