おや?りぃじゃないか。どうだい?仕事には慣れてきたかい?
うーん、ぼちぼち?
あたいね、今日はとっても気分がいいんだよ。ちょうどあんたが入社した頃を境にして、少しずつだけどうちの収益が上向き始めてることに気づいたのさ。
おおっ!
良いね~!
あんたが、運とやらを運んできたのかもしれないネェ。
えっ、そうかな。へっへっへ。
今日は、他にも何か良いことが起きる予感……
??? : 戻ったぞっ!
ヴァナ・ディールマーチ2のBGMが流れてきたっ。
なんじゃこの金ぴかの鎧!
ハァァ……アイツだよ……。
知り合い?
おやおや、遅かったネェ。こんなに時間かかったんだ。わざわざ不滅隊の監視哨、ぜ~んぶに不滅隊への差し入れを届けてくれたんだろうね?
私も最初にやった差し入れやってきたんだ?
ということは、新米の傭兵?
??? : むうっ!
よもや前みたいに迷子になったり不滅隊への差し入れを盗られたりなんて、してないだろうネェ。
えっ、へっぽこくんなの?
元サンドリア神殿騎士の……
ライファルだ!
とっ、トリオ……!!!!むぐっ。
待て!
偽名を使ってるんなら名前を呼んじゃ駄目だ!
ってかなんでここに!
そして偽名使うくらいなら目立っちゃダメだろうに、なんなのそのキンキラキンな鎧!!!
ああ、そうだったネェ。どうも、異国の名は覚えにくくていけないよ。
そんなに違うかな。
ねぇ、騎士サマ。あたいが、またうっかり忘れないよう、この紙にしっかりと名前を書いとくれよ。
ん?あぁ……仕方ない。貸してみろ!
はっ、この手法は!
ふむふむ……なんだい、この字は?読みにくいったら!R・a・i・l・l・e・f・a・nと……ん?……ライファン?
むっ!……最後は「l」だ。
やれやれ、どこまでも、冗談の好きな騎士サマだネェ。自分の名前を間違ってみせるなんて……。
ピエージェ王子しか読めない、解読に数日かかるミミズのダンスのような字をこれだけ読んでしまうナジャ社長、すごくないすか!!?!?
まっ、いいさ!大した問題じゃないよ。これで、あんたもようやく我が「サラヒム・センチネル」の社員になれたんだものネェ。
さてと……ライファル二等傭兵。あたいの下で働くからには、それ相応の覚悟をしてもらうよ!
なにっ?二等……
ひぃえ!!
王子であり王立騎士団の長である人が二等兵!!!
ん?
さっき、元神殿騎士って言ってたよね。
そこも偽ってるのか。
りぃ!ぼけっと突っ立ってんじゃないよ。あんた、先輩なんだ。この騎士サマに、傭兵根性ってやつを叩っこんでやんな!
えっ、えええええええ!!!
さてと、これで良し♪
いや、どうしろと。
ライファル。
ライファル二等傭兵!
聞いてない…?
……なんだと?
聞こえてた。
その不遜な呼び方、聞き捨てならん!
な~に、また寝ぼけたこと言ってんだい!?どこぞの国の王子サマでもあるまいし。
!?
ピャー!
こんなんバレるの時間の問題じゃないですか!
王子、正体隠すならもっと設定詰めてきてちゃんと演じてよ!!
いいかい?教えたげるから耳かっぽじってよ~く聞きな……。
ここは、あたいのシマ。あんたらは、あたいのステゴマ。代わりなんざ、いくらでもいるんだよっ!
はっきりと捨て駒言われたー!!
……もう、我慢ならんっ!
オチツイテ!!
おい、冒険者よ。この者の態度、不愉快ではないのか?これでは、まるで王のようではないかっ!?
いやまぁ、散々いろんな目にあってきたし慣れてるというか…。
王子はこんな物言いされるの初めてだよね。きっと。
ハァ~ッ……あんた、傭兵の分ってモンがちぃ~っとも、わかってないようだネェ……。
ダンッ!
傭兵はねぇ、泥水すすっててめえのタマ張って、なんぼの世界だっ!
ダンッ!
そんな風に、こまっかいことをうだうだ言ってるようじゃ、うまいシノギにゃ一生ありつけやしないんだよっ!
言葉のチョイスがカタギじゃないんよ!!!
りぃ!さっさと、このボケ冒険者を公務代理店に連れてって、きっつ~い作戦に送ってやんなっ!
ええっ!
断わるっ!そのようなことに、付き人など不要だ。
ちゃんとアサルトやるの!?
先約もあるしな。またの機会にさせていただこう!
先約?
あっ、ちゃんと目的があってアトルガンに来たのね?
んで、こっちの国の人と話すことがある………のなら、どうして身分を隠しているのか?
むむ。
何が起こってるんだ。
まさか、今後のミッションではこの2人の王の板挟みになるんじゃ………。
いやだ…。
あっ、アブクーバが逃げた!
…………。
こっ、これは……。
とんでもなく怒っているのでは…?
にっ、逃げ遅れたー!!!
ダンッ!
ったく!あの、でくのぼうっ!せっかくのいい気分を台なしにしやがって!
りぃっ!居合わせた、おのれの不運を呪うがいい。さっさとあのバカを追いかけるんだよっ!!
ぎいえええええ!!