此処は…………なしゅもでござるか?
!!
りぃ殿!
ほげぇ。
久しぶりの行き倒れだ…!
ぷるぷる、ぷるんっ!
オバケ、さがしてるた、おねーさん!!おばけのふねから、とびでてきた!ピョピョルン、びっくりー!ドキドキやよー!
あの技で船からはじき出されたのか。
無念なり。あの物の怪どもは、今もまだこの海を彷徨っているのでござろうか……。
それにしても、あの頭目が内に隠していた奇怪な気…………いや、失敬。拙者の取り越し苦労でござろう。
そうでもないんじゃないのかな。
一体何者なのか。というか、生きてるのか死んでるのかどちらなんだろう。
そういえば、御主にはあの船について拙者の調べしこと、まだ、何ひとつ伝えていなかったでござるな。
もし、噂どおりなら、あの船の名は「ぶらっくこふぃん」。「漆黒の柩」の意でござる。されど、あとるがんの歴史書によれば、ぶらっくこふぃん号は、200年ほど前に沈められたはず……。
乗組員はおばけとして200年前の人が復活したとして……船もおばけとして復活とか無理よねぇ?
もう一度作ったのかしら。
その時、船に乗っていたのは、いふらまど王国の浪人。通称「こるせあ」でござった。
「こるせあ」とは海賊がこと。されど、ただの海賊ではござらん。
彼らは王国再興を悲願とし、強大なあとるがん艦隊と勇敢に渡り合った亡国いふらまどの、元御家人だったのでござる。
滅ぼされた後に御家人からコルセアになって戦ってたってことかな。
そして、その「こるせあ」を束ね、率いていた提督こそが……。
るざふ王子。鬼神の提督と恐れられた武人でござる……。
やっぱりこの人がルザフ王子かぁ。
そっくりすぎるけど、さっきの人は子孫って可能性もあるのかしら。
やっと、羽毛が乾いてきたようでござる……。
これっ、羽根を抜くでないっ!
めっちゃ抜いてる…。
話を元に戻すでござる。このききるん共の住む「なしゅも」も、大元をたどれば、いふらまどの海軍基地だったそうでござる。
そうなの?
イフラマド王国の首都がアルザビで、ナシュモが海軍基地か。
つまり、ここ、なしゅもを中心とするあらぱご諸島は王都を失った、いふらまど王国の最後に残された領地であり……民に託された再興という望みの火を……いつしか復讐の炎へと変えざるをえなかった、るざふ王子最期の地でもあったのでござる……。
なるほど…。
アラパゴにいるガイコツとかフォモルってイフラマド王国の人なのかな。
もし、噂が真実なら、船であった男は、あるいはその……
ねぇ…。
ずっと羽をむしられてるけど…。
痛くないの?
威嚇したぁ!
さすがに逃げ出した。
ともかくも、御主も見聞したように、幽霊船は夢幻ではなく、現を漂う船であったことは確か。
うん。
まっこと信じ難きことなれど、我らは事実をありていに報告するしかござるまい。
拙者と御主が別に証言すれば、さしもの疑り深い社長も信じようというもの。我らの勤務評価もうなぎのぼりではござるまいか?
どうだろう…?
されば、拙者は一足先に帰社し、社長に概要だけ言上しよう。御主も早々に戻られよ。
うん。
御免!