バフラウから行って~とのことだったので、見張りの人に白銀貨渡して入場。
ん?誰かいる。
ねぇねぇ、見て見て!あれは何?とっても、とっても、気になるもーん!
オートマトン工房にいる子だな。
ほらほら!ここは古い建造物の中なんだから、もう少し落ち着いて……
アブダルラブダ、初めてここに来たんだもーん。大興奮だもん!
今日は、タティーヤがオートマトン工房でお留守番!ガッサドさんと、おでかけできて嬉しいもーん!
ふっ、そうか。連れてきた甲斐があったというものだ。
だけど、あまりに大きな声で話していると魔物が寄ってくるかもしれないよ?僕たちがついているとはいえ、もう少し、気をつけたほうが良いと思うな。山猫のとこの傭兵にも遺跡の見回りを依頼するほどなんだ。
……この海底遺跡にはね、魔物がそれこそ山のように潜んでいてここで命を落とした錬金術師も多い。ほら、月のない闇夜、暗碧海の方から、海鳴りが聞こえてくることがあるだろ。
あれは、そんな錬金術師たちの亡霊がすすり泣く声なんだ……。
そういえば、白門からナシュモに行く銀海航路。
BGM切ってSEだけにしておくと、ナシュモに近づくにつれ、滅亡したタブナジア侯国が見える蒼剣の丘の夜の時の苦しんでいるような声と同じような音がするのよね…。
リシュフィー!そのくらいにしておきなさい。ぼうやが、怯えているわ。
ほ、本当なんだもん?
さて、どうでしょう?
ひ、ひどいんだもん!リシュフィーのいじわるだもん!
!!
……どうした? アミナフ。
お静かに……。
あの者……。
あ、どうもどうも。
あれれだもーん?
おねえさん!!どうして遺跡に来てるもん?遺跡に興味があるのなら、アブダルラブダと一緒だもん♪
興味もあるけど、今日はお仕事かな。
からくり士のクエストクリアしてるから、私のこと知ってる感じね。
そうだな。山猫中尉バッジをつけているところを見ると、山猫の傭兵だろう。お前のオートマトンは元気か?
うん。AFまで取っちゃったよ。
その様子、この遺跡のことについて何も知らぬようだな。……いいだろう。お前も話を聞いてゆけ。
よかったもんね?アブダルラブダも、ガッサドさんにアルザダール文明の謎について、教えてもらってるとこだったもーん♪
全部教えてくれそうな感じかな。
上から聞いてみよう。
本当は一番気になるのは後ろのタコなんですけどね。
タ……窓について。
ん?やはり、窓に興味があるか……。
なんで向こうに魚が泳いでるんだもん?あの窓が割れたら、どうなるんだもん!
あの魚たちは実際に海に棲息している魚だ。今、我々が見ているのは、暗碧海の底を横から見た光景、ということになるな。
あの窓には想像を絶する水圧がかかっているはずだ。無論、割れたら我々はひとたまりもあるまい。
結構深いよねぇ。
この水圧に耐えられるように作ったってことは、海面上昇して沈んでしまったんじゃなくて最初から海底に建てたのかしら。
これは…ジラート文明に匹敵しそうな技術?
あ、あの星みたいにキラキラ光ってるのは何だもん?あんなの見たことないんだもん!
よいところに気がついたな。あれは「血髄油」の燐光だ。
けつずいゆ?
知ってるもーん。オートマトンの血髄油だもん?
よくできたぞ。窓枠に、血髄油で作られた泡のような被膜が張られており、それが海と我々のいる空気のある場所とを隔てているのだ。
えっ、めちゃくちゃ強靭な窓じゃなくて、油の膜で守られてんの!?
泡ってことははじけちゃうもん?
確かにそうだな。しかし、何百年も耐えてきたのだ。今日明日、壊れるということもあるまい。まさに、驚くべき技術だ。まず、安心していいだろう。
えっ…本当に大丈夫なのかしら。
だが、この被膜とて絶えず血髄油が供給されているからこそ、保たれているはずだ。いつかは、その供給も尽きる時が来ることだろう……そう、いつかはな……。
ガ、ガッサドさんまで脅かすもん。アブダルラブダ、なんだか帰りたくなってきたもーん。
なんで供給が続いているか分かってない感じだな?
大丈夫!??
柱について。
この柱に着眼するとは、なかなかやるな。
ただ、この柱の形状は、海底考古学を少しでもかじった者にとっては驚くには値しないものだ。
緩やかな円錐を描く天地の基部。そして、頼りなくも見える中央のややくびれた円筒部分。今からおよそ900年前、古のアトルガン皇国、アルザダール朝末期の神殿に盛んに用いられた形式と、同じものだからだ。
少なくとも900年前からあるってこと?
だが、この遺跡の柱で注目すべきは形状にはなく、構造そのものにある。どうやら、回転および伸縮をしたらしき跡があるのだ……。
えっ!?
どういうことか、さっぱり、わからないんだもーん。
ふっ。私にも解らぬ。恐らくは、時代と共に変化する水圧に耐えられるよう、建物自体がフレキシブルな構造をしているのだろう、ということぐらいしかな……。
ああ、なるほど。
ふーん……、だもん。
近い将来、この技術を解明し、オートマトンに応用できれば、とあらぬ夢をみたりもするが……
ガ、ガッサドさん!アブダルラブダ、もっとマジメに勉強することに、たった今決めたもん!!
床について。
床か……。これはまた傭兵らしい視点だな。
アブダルラブダも!ガッサドさんに、これのこと聞きたかったもーん!
……数種の異なる石材で組まれたモザイクは、アトルガンの初期王朝、アルザダール朝の高度な建築技術の賜物だ。今では、その多くの技術は失われてしまったのが残念だが……
アトルガン皇国は続いてるのに、どうして技術が失われたんだろう。
この青白く光ってる紋様はいったいなんなんだもん?
どこかで見たことある模様……
どこかで見た?
アブダルラブダが行ったことある場所に同じ模様が。
ここの遺跡には初めて来たって言ってたから、そんなにいろんな所に行ったことはなさそうよね。
うーん、うーん……。
ぐるぐるぐるぐる……。
あれは移動装置になっている。我が皇国に今も受け継がれている移送の幻灯と、基本的には同じ仕組みだ。だから、皇立文化財調査事業団の錬金術師によって安全が確認されたものは、そのまま遺跡調査に使用しているのだよ。
うーん、うーん……。ぐるぐるぐるぐる……。なんで、900年も昔のものが動いてるんだもん?
そうだな。そこが不思議なのだ。事業団は、この遺跡の調査を進めながら、積もった埃をはらい、汚れを落としこそしたが復刻作業や保存処置はまったく行っていない。いや、必要なかったのだ。
恐るべき耐久力。
この遺跡は、まるで誰かが住んでいるかのように、当時の姿をそのままに、とどめている……。姿だけではなく、機能もそのままにな……。
ずっと誰かが使って来たのか、もしかしたら遺跡の意思とか…?
……。なぜだか、わからないんだもん!でも、きっとアブダルラブダたちを、待ってたんだもん!
ふっ……アブダルラブダ。お前のいうとおりかもしれんな……。
待ってた…。
そうなのかな。
この遺跡はまだその役割を達成していない、と。
さて……つづきは、工房に戻って話すとしようか。
えぇー。もう帰るんだもん?まだ来たばかりだもん。
タティーヤ1人に、いつまでも工房の店番を、させておくわけにもいかないだろう?
わかったもーん……。でも、またきっと連れてきてくれるもん?
約束しよう。
リシュフィー、一足先にアブダルラブダを、アルザビに連れて帰ってはもらえないか?
?ガッサドさんは、一緒に帰らないんだもん?
あぁ。私は、この山猫の傭兵と少々話したいことがある……。
ふーん。わかったもーん。お先に、バイバイだもーん。
私に話?
さて、お前に折り入って話がある……。
そういえば見回りの仕事、私を名指ししてたんだったな。
ご覧のように、私は皇立文化財調査事業団の顧問錬金術師を兼務していてね。こうして、遺跡に足を運ぶことも多い。
あれ、そういえば彫金エプロン着てるけどオートマン作成って彫金の技術?
そして錬金術も顧問をするほどの腕前ってこと?
事業団の真の目的が何だか、お前には察しがついているかね?貴重な文化財の保護?それとも偉大な古代文明の研究?どれも建て前にすぎん。
我々事業団は、聖皇の命で失われた魔笛の行方を探しているのだよ。
失われた魔笛…?魔笛って2個以上あったの?
……そうだ。我々が捜しているのは、皇都にある魔笛とは別のものだ。
ところでりぃ。お前は魔笛のことを、どの程度知っているのだ?
うーん、確かなのはアストラル風が出てるらしいってことくらい?
あれは餌だ。とかは推測の域を出ないし。
複数あるとか今知ったし。
あまり知らないかな。
魔笛とは、皇都アルザビにある封魔堂の魔笛の座に、常時、安置すべき我が国の至宝。アストラル界の「風」を噴出して、耳に聞こえぬ音を発し……それは、人々に勇気と活力を与え、繁栄へと導く糧をもたらしてきた。
だが、それが故に蛮族も魔笛を欲し、これを奪わんと何度も皇都に侵攻してくる。そう、魔笛は我々に力をもたらす代償として、平和を奪っていったのだ……。
そもそも魔笛は、かつて我が国で大流行した鎖死病を鎮めるため、時の聖皇さまによって皇都に持ち込まれた。病に苦しむ民をそして内憂外患の皇国を救わん、とな……。
鎖死病って、昔バストゥークで流行った病気よね。
えーっと、用語辞典によると天晶暦711年から716年だって。
716年にアトルガン皇国より派遣された錬金術師によって偶然発見された特効薬で終息したらしい。
偶然発見されたってことは、流行ったのはバスより前だったのか後だったのか?
アトルガンの鎖死病は、ナシュモで流行った疫病のことなのかな。別なのかしら。
「時の聖皇さま」だと何年に流行って魔笛が設置されたのか分かんないなぁ。
だが、魔笛は1つではない。……と言ったら、お前は驚くだろうか?皇都で激しい争奪戦が繰り広げられているあの魔笛の他に、実は、4つの魔笛がかつて存在していたことが古文書や遺物より確実視されていてな。
合計5つもあるの!?
それらを見つければ、あるいは、この果てしなく無益な争いを止められるかもしれない。そう、我々事業団は考え、失われた魔笛を追い求めているのだよ。
圧倒的力を手に入れて、蛮族をねじ伏せることができる…かな。
その後はひんがしを掌握して、中の国にまで攻めてきそうな気もするけど…もともとアトルガンは他国を征服して大きくなった国らしいから。
どうだろう?りぃ。その魔笛探しを手伝ってはもらえないだろうか?
うーん、ヤバそうだけど手伝わないわけにはいかないよなぁ。
ふっ……。なぜ、名を知っているのかが、気になるのか?驚くほどのことではない。そもそも、山猫に依頼を出したのは私なのだ。……お前を指名してな。
あれ?そういえば。
からくり士のクエストの時には名乗らなかったかな。
お前は、あの変わり者の多い監視哨の防人から、ずいぶんと気に入られているようだ。彼らの強い推薦もあったのだよ。
そうなの!?
あのいろんな青魔法撃ってきた人たちですよね!?
りぃよ。すべての魔笛を探し出せば、アトルガン皇国……否、エラジア大陸全土にも平和をもたらすことが、できるかもしれんぞ。
うーん、そうかなぁ。
蛮族の脅威はぬぐえるかもだけど。
魔笛指向儀を手渡された!
その魔笛指向儀は、魔笛が近いと反応する。いわば、水晶指向儀と同様の役割を果たすものだ。
水晶指向儀って、ナジャ社長が錬金術ギルドから貰ってたやつよね。
傭兵の階級章に仕込んであるクォーツ発信機の位置が分かるという、つまりGPS。
でもこの場合、近いと反応する。だから、ドラゴンボールのドラゴンレーダーみたいなものか。
ただ、注意がある。魔笛から吹き出した風は、この世界で拡散しながら消滅するため、微弱なアストラル反応を拾っているとキリがない。だから、少々の反応は無視するよう、あらかじめ設定してある。つまり、すぐ近くまで寄らなければ反応しないのだよ。
分かっただろう?そういった理由でも、傭兵として国中を走り回っているお前は、打ってつけだった訳だ。
なるほどね。
だから魔笛指向儀は、常に携帯しておいてくれ。
ということは、皇都にいると反応しまくるの?
……? ああ、安心してくれ。皇都の魔笛には反応しない。
えっ、なんで!?
よく分からんけど便利機能なんだな?
では、頼んだぞ。りぃよ。エラジア大陸の未来は、お前の魔笛捜索にかかっているのだ。
うん。
待て、りぃ。
うん?
私が事業団の長であること、公にはするな。街では知らぬふうで通してくれ。私もそうする。町工場の長としての生活も大切にしているのでな。
うん。わかった。
……。
ん?これは、誰かが遠方から覗き見てる?
誰だ!?
……アミナフよ。「鈴」はつけた、と宰相どのに伝えよ。
御意。
鈴?
クォーツ発信機の時もそう呼んでた。
ということは、魔笛指向儀にGPSの発信機も仕込まれてるってこと!?
ナジャ社長とアトルガン皇国両方からずっと監視されてるってこと?
やだーーー!!!
だいじなもの:魔笛指向儀を手にいれた!