参った~。今さ、口の院の来期の予算の使い道で、黒魔道士団、白魔道士団、赤魔道士団の各士団長がもめてるんだよね。
あらま。
だけど、うちの院長はあいかわらず不在だし、意見をまとめられる人がいなくてさぁ~。
しょうがないから、僕らで決めることになったんだけど、僕らは作戦司令部の人間だから、杖の性能については、それほど詳しくはないんだ。
作戦司令部とかあったんだ!?
軍隊だから、そりゃそうか。
だから、3本の杖を手に入れて、みんなが納得がいくまで、性能を比べてみようと思うんだけど、誰か協力してくれないかな?
仕方ないなぁ。
ありがとう!じゃあ、その3本の杖を1本ずつそろえる役目はキミに頼んだ!よろしくね~。
うん。
3本の杖の名前は、魔道士団の団長に尋ねて、ちゃんと自分でそろえてね。人から借りたりしちゃダメだからね。
3本の杖はお借りするだけで比較会の後に返せるとは思います。
あ、そうなんだ。
寄付するのかと思ってた。
……思いますが……果たして、比較会が無事に終わるかどうか……。
え…?
不吉すぎる。
そういえばここは、口の院…。
強化魔法は、姿の見えない援軍。思いがけないダメージを与えて、敵を混乱させる。赤魔道士のパワーアップは、何十人もの援軍に相当するわ。お分かりでしょ?ローズワンドが、ぜひともほしいのよ。
オールルって赤魔道士だったんだ。
戦いは、先制攻撃がすべて。黒魔道士が、戦いのかなめだ。その杖に投資をしないで、どうやって戦いに勝とうというのだ?黒魔道士団には、ミスリルロッドが必要なのだ。
こちらにたどり着かれる前に倒さないと、高確率でやられるからね。
大きな戦争になればなるほど、兵の数が勝敗を分けるだろう。命は、限られている。命は、すぐに作り出すことは出来ない。そんな命を守るために、オークスタッフが必要だ。
昔は、白魔道士の残りMPがPTの命の残り量といっても過言ではなかったものね…。
各士団長が欲しがってる3種類の杖は、口の院の保管所にあったはずですけど……。
えっ、じゃあなんで欲しがってるの?
……ああ、でも、たしかあれは去年の予算会議のときに……。そうか、だから冒険者を頼んだのですね。
何があったんだ。
今は全部の杖がエミネンスで貰えるようになってるんだって。
助かるー!
あっ、杖をそろえてくれたの?ありがとう!
どういたしまして。
しかし、今はまずいですよ。奥に、シャントット博士が来ており……。
えっ!?
あら、ちょうどよかったわ。
!!
オホホ!初めましてかしら?わたくしは、口の院の前の院長、シャントット博士ですことよ。
はじめまして?
初期クエで、ここで初めてシャントット様が登場することが多かったのかな。
ハックルリンクル、あなたが持っているその杖が、各士団長がもめてるっていう杖なのね。
詰め寄ってる。
ほら、貸してごらんなさい。オホホ、わたくしが決めてさしあげますわ!
どうやって判定するんだろう?
……まずは、これがローズワンドね。そ~れ~!
魔法!?
バイオだ。
実際に使ってみて確かめてるのね。
ふぅん、まぁまぁねぇ。
じゃあ、次にいきましょ。これがオークスタッフだわね。そ~れ~!
人形壊れない!?
いい手ごたえだけど、ちょっと効果が甘いかしら?
さぁて、これが最後。ミスリルロッドね。そ~れ~!
えっ?
ぼぎゃあああ!!!
なんだか遠くで高位回復魔法の音がする…。
……おいっ!
う、うう…。
おいっ!大丈夫か?
う、うーん…。
あと5…50分…。
…ん?…あれ?アジマル?
ひえ~。危なかったなぁ!
アジドマルジド院長がちょうど来なかったら、あなたは天国に召されていたところですよ。
ひいいいい
また瀕死の所をアジマルが助けてくれたのね。
そんなヤワな人が魔道院にいるほうがいけないのですわ。
シャントット博士……。
オホホ!ちゃんと手かげんはしましたわよ!
……。
そう怒らない怒らない。わたくしとアジドマルジド院長の魔法を食らうなんて、貴重な経験ですことよ。
そ、それはそうかもしれない。
ほら、これを差し上げますわ。これで楽しい週末をおすごしあそばせ。オホホホ~!
去っていった…。
……で、俺がいない間にいったい、なにをしようとしてたんだ?
何を…。
杖ってあんな使い方するつもりだったんだろうか。
まさか、昨年の杖が無くなってるのって、シャントット様が同じように使って壊れたとかでは。
魔法大会なんてもので遊んでいるヒマがあったら、腕をあげるために魔法の練習をすべきじゃないのか?
次の予算の使い道で、この3本の杖のどれにしようか、各士団長がもめて決めかねてたんです。
アジドマルジド院長がバシッと決めてください。そうすれば、すべて丸く収まるのですから。
次の予算……?
ああ、あれなら、もうジュノに注文書を出してきたぞ。買ったのは、剣に斧に鎧に盾に……。
独断で購入済みかーい!
待ってよ、院長!どれも魔道士が装備できないものじゃ……???
ハハハ、これらはおまえたち作戦部隊のために買ってきたのさ。じっくり研究してくれよ。じゃあまたな。
アジマルも去っていった…。
ミスリルロッドは壊れてしまった!
4800ギルを手にいれた!
朔の腕輪を手にいれた!
そっかー、院長は僕ら作戦部の重要さも、ちゃんとわかってくれてるんだなぁ。お金をかけないと学べないことってあるもんね。
確かにね。
……それにしても、キミの杖を1本壊しちゃってごめんよ。おわびにいいものあげたから許してちょうだいよ。
なるほど。他国の武器や防具を買い揃え、これを研究し、作戦に磨きをかけろということですか。
弱点を突ければ一気に有利になるからね。
研究のし甲斐があるわ。
しかし、それはすなわち他国を敵にまわす可能性を示唆している……?われらが口の院は、そこまでウラを読まねばならぬということでしょうね……。
確かにあらゆる可能性を考えておくのは必要かも。
何が起こるか分かったもんじゃないし。
対獣人にも応用できるだろうしね。
ふふふ……。悔しくなんてないわ……。勝負はいつも、時の運……。時がたてばたつほど、毒はまわりまわって……。ふふふ……。
結構ヤバい人なのかしら…。
院長がああいうならば仕方がないこと。今回は、作戦部に花をもたせてやろう。大きな戦では、優れた作戦で状況が180度くつがえることもあるからな。
だねぇ。
作戦とても大事。
シャントット博士は、とても困ったお人だ。時折、口の院に遊びに見えては我らに嫌がらせをして帰っていく……。それがシャントット博士らしいと言えばらしいのだが。
嫌がらせをして…。
何て迷惑な…。
大変でしたね。シャントット博士は、いつでもああやってだれかれ容赦なく、強力な魔法を使うのです。そうやって、何本の杖が壊されたことか……。ああ、頭が痛いです。
あ、やっぱり昨年のはシャントット様が壊してたんだ。
もしかして、シャントット様の魔法力に耐え切れなくて杖が壊れてる?
なんたることたる。