まったく、どういうことですの!?なぜ、アジドマルジドがよくて、わたくしはダメなんですの!?
いきなりご立腹だ!!
これはろくな事がない。早く逃げ…
あら、りぃ。ちょうどいいときに来ましたわね……。
ぎゃあ!!
あなたに命じますわ!このわたくしと新魔法「フェイス改」に挑戦し、みごとに成功させなさい!
フェイスじゃなくて、改?
細かいことはどうでもいいのですわ!オーッホホホホホ!
ち、挑戦します。
よくぞ、きっぱりとおっしゃいました。
そう言ったからには、魔法が失敗した場合、わたくし久々に、本気になって……しばきたおしますわよ?
は、はい……ガクガクブルブル
オヤマァ!そんなに怯える必要はございません。この新魔法のカラクリ。わたくしには見当がついておりますの。
実はわたくし、この世界とは別の世界に旅したことがございましてね。
えっ…?
そんなサラッと。
FF14に出たやつかな?
ここヴァナ・ディールでちんまり暮らしているわたくしたちは、なーんにもわかってなかったことを知りましたの。
わたくしたちが認識してる世界というのは、わたくしたちが考えているよりも、とっても広くて深いのですわ。
精神的なものじゃなくて、異世界の事言ってるのよね。規模が違うわ。
そして、世界は一見バラバラのようでいて、方法さえわかれば行き来できるのです。
それはシャントット様だけでは…いや、冒険者もあっちこっち飛ばされてるな…。
おわかりですこと?つまり、世界は繋がっているのですわ。
は、はい……
ほんとうにおわかりになっているんですの?
ううっ。
ともかく。バラバラの世界が、実は繋がっているなら、バラバラの人と人も、実は繋がっていると考えられませんこと?
ふむ。
……ええ、もちろん、人とは限りませんことね。生きるもの、すべての心が実は繋がっている……その繋がりを魔法に応用できないものかしら?
例えば、他人の考えを筒抜けにしてしまう魔法を編み出し、いちばん痛いところをグリグリするとか。
ヒイィ!
……と、そんなことを考えていましたら、ジュノ魔法学会が「フェイス」とかいう魔法を編み出したとか言うじゃありませんの!
信頼・親愛・友情とかきれい事をのたまっているようですけど、心と心の繋がりを利用しているのは明らか。
なるほど、信頼・親愛・友情でできてる感じが全然しなかったけど、そういうことか。
わたくしの考えを盗んだに違いありませんわ!
そんな無茶な!
しかも、しかもですことよ?わたくしがフェイスを使用することを禁じた方がよいと言って…… フェイス用のスクロールをわたくしに渡しませんでしたのよ!
それは…賢明なのかもしれない!!
……わたくしのどす黒い考えを盗んだに違いありませんわ!
ひぃ!!
まったく。あちらがその気なら、よござんす。わたくしは、フェイスを自力で編み出すことにいたしました。
なんてこった!
その初めての実験台が、あなた。ほんとうに光栄なことですわよ、オーッホホホホホホ!
ひいいいいい
さぁ、目を閉じて、命がけで、わたくしのことを考えなさい!鼻から血と汁が出るほど、考えなさい!
ぎひぃ
うーん、ううーん、ぐぬぬぬぬぬ、ムムーッ!!
……。
な、なんともならない…。
失敗、なのかしら?
それなら、仕方ありませんことね。さあ、目を閉じて、永遠の闇に飲まれなさい?
ええーっ!?
で、でも目をつぶらなければしばき倒されそう。
思えば、あなたと出会ったときから問題のある冒険者だと思っていました。
ナヌ…。
博士の家に土足であがりこみ……
それはすみません…。
殺タルタル未遂事件まで犯し……
ムムッ。
それはシャントット様だよっ。
え?その犯人は、わたくしですって?オホホ、これは走馬燈用のナレーションなんですからちょっと黙ってらっしゃい。
えーっ!?
この後殺されるの!?
けれども、そんなあなたも、いつのまにか闇の王を倒すまでに。
お褒めの言葉が!?
そして、星の神子様を救い、この地に、星月の力を取り戻してくれました。この件では、あなたに100点満点をあげましょう。アジドマルジドも、面倒をかけたようですしねぇ。
感激で鼻から血と汁が出そうですッ!
そんなあなたなのに……どうして、あなたはフェイス改を成功させなかったんですの?
フェイスならともかく、世界初の改だし!!
星の大樹を助けるために、わたくしとコルモル博士、ヨランオラン博士で駆けずりまわったことがあったでしょう?
黒魔道士AFクエだね。
ってか、駆けずりまわってたの私だけだよっ!
あのときに、わたくし、下水くさくなった帽子をあげましたわよね。そのお礼をするなら、今でしたわよ?
ええっ、あれ、臭いって押し付けられた…!
さて、走馬燈はこんなところにして……そろそろ、あなたの人生を終わりにしてさしあげましょうかしら
イヤアアアアアア!!!
……と、あら???
うおおおおおお
ぜえ。はあ。ぜえ。はあ。
成功、なのかしら?
オーッホッホホホ!命の灯火が消えそうになるとき、バカ力が出るというのは、ほんとうですのね!
そ、そのために殺そうとしたのね…!
よくがんばりました。あなたは、わたくしの分身が呼び出せるようになりましたわよ。
こうやって褒めてくれるからまた頑張ろうってなっちゃうのよね。きっと。
新魔法のカラクリについてわたくしの見解が間違っていないことがこれで証明されましたわ。
けれども、まだまだ秘密がありそうですわね……。
まあ、それはおいおい、あなたがみつけておきなさい。スゴイ発見があったら、わたくしに教えなさい!
……と、こうしている場合でありませんでしたわ。さっさとここから出ていきなさいな。そうしたら、わたくしを見張っているヒウォンビウォンを闇の底から、目覚めさせますから。
目覚めさせる…?
あまり時間をかけると殺タルタル未遂事件が、ほんとうの殺タルタル事件になってしまいますからね!
まさか、フェイス改の実験を見られないように、外にいるヒウォンビウォンに呪いをかけて眠らせてた…!?
そして、そのままにしておくと、死…。
オーッホホホホホ!
ヒィー!
フェイス:シャントットを習得した!