貴き血流れてからの連続クエストを受けに来たよ。
30年前に北方調査に行ったフランマージュの子孫たちのいざこざに関する内容だったのよね。彼らの関係で今のところ分かっているのはこちら。
冒険者の方。ちょうどいいところへいらっしゃいました。
どうしたの?
今日は、私の夫があなたにお話があるということなのです。
王室料理長をやってるという凄腕のご主人ですね。
おまえが、妻の依頼を受けていた冒険者か。
そうです。
あまり料理人っぽくない格好してるのね。
妻はおまえに信頼を置いているようだが、本当にその信頼に足る腕を持っているのか?
うーん、腕はわかんないけど、約束は守るよ。
以前、妻の申し出にて血判を押したそうだが、あのようなもの簡単に押すようでは危ういぞ。
うっ。それは本当にそうだと思います…。
ミスタル伯爵家とレヴメル伯爵家の決闘の際に押された互いの血判は、サンドリア王室へと渡ったことで、決闘の証拠となった。
なるほど…。
ん?レヴメル伯爵?
ミスタル伯爵はレゼルビューで、決闘した相手ってことは、神殿騎士団員のエプリフォーンも伯爵だったのね。
…そして、ミスタル伯爵家とレヴメル伯爵家は大きな罰を受けたのだ。
爵位剥奪だね。
私自身は、この争いに関わりはないが、妻の母はレヴメル家に奉公していたがため、この血判を持ち出したという罪に問われた。
母は、無実です。けれどもいくらそういっても、母の言葉は無視されたそうです。
そっか…。
そういうこともあって、妻はこの件に熱心になってしまった。
しかし、王宮料理長といえども、私はただの料理人。騎士を生み、国を動かす伯爵家の争いに興味はない。
ま、首を突っ込まない方が利口だよね。
どのように薄汚い取り引きや思惑があろうと、すべては既に起こりし過去。食べ尽くされた料理に求められる真実などない。
とても料理人っぽい言い回し。
あなたのおっしゃりたいことはわかります。けれども、これから起きる未来には、私たちも責任を持たなくてはなりません。
奥さんもしっかりしてらっしゃる。
そのルーヴランスというミスタル家の方が、命を狙われているというのならば、教えてさしあげなくては…。
しかし、その者自身のこと、おまえはよく知るまい?テュロム家の料理人の話では、テュロム伯爵はこの頃、脅迫者に悩まされているそうだぞ。
テュロム伯爵はフランマージュがいなくなった後、ギルド桟橋の領地をいただいた人だね。
そして今、ルーヴランスを探してる人なんだけど…誰かに脅されてるの?
その浅ましき脅迫者というのが、おまえの言う、ルーヴランスかもしれん。それならば伯爵がルーヴランスを捜している理由がつく。
ふんむ…。
ルーヴランスという男はセルビナで育てられた。ということは、きちんとした騎士教育を受けていないわけだ。
そうなるね。
成長後、サンドリアに上京した折、その腕を見込まれて王立騎士にはなれたようだが、今はそれも辞めてしまった志半端な騎士。
…。
ただ、確かにそれだけで内実を判断するのは誤りだ。
おおっ。柔軟な人でよかった。
だからこそ、冒険者。おまえに確かめてもらおうではないか。
うん?
テュロム伯爵を脅迫しているという騎士道から外れた男が、ルーヴランスなのかそうではないのか。
ほむ。
料理人が言うには、テュロム伯爵は脅迫者には応じていないらしい。しかし、その脅迫者は自分と連絡を取りたいのならば、ギルド桟橋のトンベリに話をしろと言ってきたそうだ。
トンベリに?
話はそれだけだな。では、私は王宮に帰らせてもらおう。ソバーヌ、くれぐれも周りに気をつけるようにな。
はい…。
奥さんが心配でたまらないんだね。
思い詰めたら危険なことやってしまいそうな感じがちょっとあるもんね。
私が調べてくるからさ。ここで待っててね。