グリモアを継ぐもの

えっ、どこ、ここ?
現代のザルカバードに来たんだけど……空が真っ黒。

デュナミス?

??? : やあ、また会いましたね。りぃ。
りぃ !!

シュルツ おや、あのとき私が死んだとでも?
りぃ まさか。

シュルツ いやだなぁ。ちょっと仮死の魔道式を使っただけですよ。
りぃ 仮死の魔法?それは想定外。

身代わり人形みたいなの置いてたのかと思った。

シュルツ それにしても、あの後の公宮での騒動ときたら……ふふふ、君にも見せてあげたかったなぁ。

騒動?
まさかゾンビみたいに動いて驚かせたんじゃ…。

いずれにしても、ろくでもない事をしたのは確かだな?

シュルツ それにしても懐かしい。20年ぶり……かな?おっと、失敬。君には、昨日のことのように思えているのかもしれませんね……。

未来から来たって知ってたのか。

シュルツ ……さて昔話はこれぐらいにして……と。シュルツ流軍学の師として君に最初で最後の試練を授けましょう。

そういえばあの真紅のグリモアどうしたんだろう。

シュルツが隠したのか。
ウルブレヒトを取り込んで完成して白くなって、それをナグモラーダが持って行ったか。
それとも今シュルツが持っているのがウルブレヒトが作った真紅のグリモアか。

シュルツ いやね「グリモアを継ぐもの」としてまた最後の高弟として、君が相応しいかどうか師として見定めたいと思いましてね。ほら、そこをご覧なさい。

シュルツ 戦術魔道式Θ……いわゆる移送式を書きつけておきました。

この転移魔法、学者だけが使えるのかな。

シュルツ 移送式は覚えていますよね?ただ、ちょっと違う点があります。今度は偉大な学者の証に呼応するように、式を書いたからです。つまり、まず君はそれを探索せねばなりません。

シュルツ もし偉大な学者の証を見出したら、後はそれをかざすだけで、式が私の待つ、王の墓標へと誘ってくれるでしょう。

シュルツ ふふふ。あまり、師を待たせないようにしてください。それではまた。次の講義で会いましょう。

学者の限界クエストの相手はシュルツか。

偉大な学者の証持ってたからすぐに行くよ。

目の前まで飛ばしてくれるのありがたい。

ってか、どうして王の間なんだろう。

あっ!
グリモアが赤い!!

シュルツ 遅刻ですよ、りぃ。弟子が師を待たせるものではありません。
りぃ えー。すぐ来たよぉ。

シュルツ ふふ、冗談、冗談。偉大な学者の証の探索は、なかなか歯応えのある試練だったでしょうからね。

シュルツ ……でもそれで試練は終わりではありませんよ。ここからが、本試験なんですから。

シュルツ それではぼちぼち始めるとしましょうか。……あ、ペンとインクは必要ありませんよ。我が一門の理念は「知行合一」。二十余年の間に学んだ、君の軍学の成果。実戦をもって、見定めるのが一番ですから。

未来から来てたって知ってたじゃんよー。
20年も学んでないよぉ。

シュルツ 算多きは勝ち、算少なきは勝たず。而るをいわんや算なきに於いてをや……。はたして、君には一分の勝算でもあるのかな?

ククク…。
一分どころか完全完璧な勝算があるんだぜ。

フェイスがいるからなぁ!

シュルツ ……お見事です。よくぞ、この域まで魔道戦術を昇華させましたね。ですが、りぃ……。この試験で私は確信しました。

シュルツ 君の戦術……長年の勉学で高めたものではありませんね。

はっ、未来から来たって疑ってる段階だったんだ?
はっきりとバレてしまった…!

ってか、あれ??
グリモアが白いよ!?

赤くなったり白くなったり、どういうことなの。
何か意味があるんだろうなぁ。

シュルツ 天才的な資質に支えられているだけで、円熟の境を迎えてはいない……。なにが言いたいのかみなまで言う必要はありませんね?

シュルツ でも、ふふふ……君と私は似ているのかもしれませんね。お互い、訳ありという点で……。おそらく、察しのよい君のことだから気づいてはいるでしょうがすでに、私は人間をやめて久しい身。

隠しもしなかったらねぇ。

シュルツ そう、いまを遡ること200年ほど前……

シュルツ 第二次コンシュタット会戦のころ私は絵師あがりで共和軍に登用された変わり種の作戦参謀でした。グンサー・シュルツ……。耳にしたことはありませんか?これでも当時は名の知れた軍師だったんですよ。

やっぱり同一人物だったのね。

シュルツ しかし、その後、病を患い死の床を前にした私は、計らずも後悔の念に駆られている自分に気づいてしまったのです。まだ、試していない戦術。設計図だけの兵器。理論はできている新戦術魔法。すべてが私の死とともに潰えてしまうことに……。

シュルツ そんな私の心の間隙をつき現れたのが、魔神ビフロンス卿でした。彼は、私の戦術に並々ならぬ関心があったようです。

真紅のグリモア作って契約したんじゃなかったんだ。

シュルツ 以後、彼に与えられた魔物の肉で不老不死となった私は、この世を遊戯盤として彼の要求に応え、数々の対局を繰り広げてきました。

シュルツ その後、世界で起きた数多の戦争や紛争で、私と彼の対局の影響を受けていないものの方が、少ないぐらいです。
りぃ えぇ!?

シュルツ 先の大戦とて、そうでした。私は人間側。彼は獣人側を選びました。ただ、明らかに私の方が駒落ちで、不利な対局。

シュルツ そこで私が用意した新手。それが、君の手にしている「グリモア」とそれを用いる門下生、軍学者の投入だったのです。

それが「十数年かけた大手合」か。

シュルツ さて、ところで君は先の大戦の後、同門の士がどうなったか知りたくはありませんか?
りぃ 知りたい。

グリモアは禁書として没収されるらしいって、アーリーンが言ってたけど、それにしても現代で学者の話題をとんと聞かないのは不自然なのよね。

シュルツ 聞くは一時の恥聞かぬは末代の恥。それでこそ軍学者です。

シュルツ 例の連続魔道士失踪事件が元で大戦後、各国は一斉にグリモアを禁書とし、我が門下生への弾圧および焚書が始まりました。国外に追放された軍師……いわれなき罪で捕縛され、獄死した参謀……一時期流行した学者狩りで暴徒に殺された史家……
りぃ えっ!?

魔女狩りみたいなことが起こって、国外追放された人以外は殺されたってこと…?

シュルツ 受難の時を経て軍学者……特にグリモアを用いる我が門下を継ぐ者は表向き絶えてしまいました……。あなたは私の最後の門下生なのかもしれません。

表向きってことは、どこかに誰かは残っているのね?
国外追放された人かな。

シュルツ いずれにしても我が門下生の非運を想うといまにも私の胸は張り裂けそうです……

可愛がってはいたんだろうからねぇ。

シュルツ と、言いたいところですがとうに私の流すべき涙は涸れてしまいました。この眼窩で動く義眼には必要ありませんからね。心とて同じこと……まがい物なのです。

うーん、本心かなぁ?

シュルツ ……ふふふ。なぜ、私がこんなことを君に話すのか、不思議ですか?……さあてね。その君の好奇心が私と似ているから、でしょうか?

自分と同じように普通じゃない人……平気で時間を渡ってる私を見つけて、今まで誰にも言えなかったことをちょっと懺悔したくなったのかしらね。

シュルツ 知的好奇心は学者の宝。大切にすることです。ただし、私のように限度を越えぬよう……。
りぃ 肝に銘じるよ。

また消えた!

シュルツ さて、りぃ。私は君を「グリモアを継ぐもの」として正式に認めましょう。

シュルツ 見事、合格です。……証書はありませんけどね。我々の軍学の旨は「知行合一」いつの日か、またヴァナ・ディールに軍学が必要とされる日が必ず訪れるでしょう。

シュルツ そのとき君は私と同じ陣営につくのでしょうか?それとも……。

人間vs獣人の戦いだけでなく、人間vs人間の戦争もやってるんだろうね。

シュルツ ふふふ、楽しみですね……。というわけで、此度の対局はお預けとしましょう。

シュルツ 来たるべき新たな戦が始まる、その日まで……。

学者のお話も、召喚士の話みたいに後を引く感じで終わっちゃったなぁ。
いつかどこかで続きが見れるのだろうか。