君か。その後、飛竜とはうまくやっているのか?
やってるよー。
竜騎士自体やってないけど…。
そうか、君のことだから心配はしていないがな。
ところで、このところ我々王立騎士団を狙った闇討ちが横行しているのだ。祖国を守る義務のある騎士たちがこの体ではいい笑われ者だが、ことはもっと深刻でな。
なんたることたる。
その闇討ちを行っているのはラスト・ドラグーンことエルパラシオンなのでは、という噂がまことしやかに騎士団の間に流れ、騎士たちが萎縮しているのだ。
えぇ。そんなことある?
君も知っているだろうが、エルパラシオンといえばランペール王時代の騎士団長にして、当時唯一の竜騎士。
ちゃんと知ってるぞ!
すでに鬼籍に入っている彼が闇討ちなどできるはずがない。だが、騎士たちが恐れるのにも訳がある。エルパラシオンにはある逸話があってな……。
ランペール王が内乱を平定した直後、彼は凱旋パレードにも参加することなく、王の命令で辺境の地へと遠征を言い渡されたのだ。
よほど緊急の用事が?
その遠征に戦略的意味などなかった、と歴史家たちはいう。ランペール王はエルパラシオンの力を恐れていた、というのが一般的な説だ。
ほう…?
そして、彼は消息を絶った。ランペール王は残兵からその報告を受けると満足そうに頷いたという……。
だが、私はこの話を信じてはいない。それにたとえ真実であろうとも、ラスト・ドラグーンが復活するなどありえない話だ。……だが、それを証明する術も今の私にはない。
事件を調べないとだねぇ。
そこで君に頼みたいことがある。必ずや存在するであろう真犯人の情報を集めてほしいのだ。同じ竜騎士としてラスト・ドラグーンの不名誉な噂が流布するのは耐えられないだろう?
いいよ。
ん?
…えっ!?
人の着ておらぬ甲冑が勝手に……?
なんで!?
あ、動かなくなった…。
ラーアル様!
あっ、あっちも!
こっちも!?
ええい、何を恐れている。そんなものはただのまやかしに過ぎぬ!
君ら騎士なら自分で倒しなよ!!
ラーアル様、このところ重なる王立騎士団の災いはやはりラスト・ドラグーンの霊が……。
口を慎め、アラマビオン。ここは城内だぞ。
ハッ、申し訳ありません。
これらの甲冑はもう動くまい。元通りに片づけておけ。無論、このことは他言無用だ。
ハッ!
これは一刻も早くカタをつけねばな。最近、何か身の回りで変わったことなど起こらなかったか?
うーん、ああ、ラストドラグーンに関することなら…。
なに、ラスト・ドラグーンのブレーを奪おうとしたやつがいただと……?そいつは怪しいな。まずはそこからあたってみるといいかもしれない。
その手の情報はブルゲール商会の連中に聞けば何か分かるだろう。やつには貸しがある。もっともやつ自身はそうは思ってないだろうがな。
気絶させられて奪われたのがそのブルゲールなんだけど、何か分かるかしら。
リーダーがあんたに聞きたいことがあるってよ。ちょっと待ってな。
なんだろう?
あんたに聞き忘れたことがあった。オレから親父の形見を盗ったやつは、いったい誰だったんだ?
う、ううーん…。えーっと…。
なに、名前はいえないが盗賊で、そいつのバックに黒幕がいる、だと?ほう……、そいつはおもしれェ。とっ捕まえて一発殴ってやらねぇと気がすまねぇな。
私の代わりに捕まえてくれたらありがたい。
その黒幕が狙っているのはラスト・ドラグーンにまつわる品か……。そいつを先に手に入れちまえばおびき出すことができるかも、な。
なるほど。
お前がその盗賊の名前を言うつもりがないなら、それでいい。お前にも事情があるだろう。それにそんなザコに用はないしな。その代わりといっちゃなんだが、あるものを取ってきてほしい。
何を取ってくるの?
そいつはクフタルの洞門に隠されているというラスト・ドラグーンの兜さ。オレも以前から狙ってはいたんだが、冒険者のお前にピッタリな仕事だ。じゃあ、頼んだぜ。
わかったよぉ。
あんた、犯人の名前を言わないなんて度胸あるな……。あれでもリーダーはかなりキテるんだぜ。悪いことは言わない、すぐにクフタルの洞門の宝箱を探すがいい!
まぁ、私は社員じゃないからね。ビビることもないし。
クフタル行ってくるかぁ。