
へぇ、吟遊詩人に会ってダンスを披露したって?
うん。
どれだけ上達したか、見てやるよ。ほら、踊ってみな。

ほい!

タッタッタターララ

タッタッタッター。

……!どうしたのさ!あんたのダンス、見違えたようによくなってるよ。
ほんと?
そうか、素晴らしい吟遊詩人との出会いがあったんだね。

そろそろ、こいつを受けとってもいい時期だ。その調子でがんばりな。
やった~!

……しかしまぁ、よくもここまで踊り子らしくなったもんだねぇ。あんたが星くず石を持ってきて、入団を認めるしかなくなったときは、これからどうしようかと思ったけれど……立派な素質があったんだねぇ。
へへっ。

……そうそう、だけどあの石は、実はもう光らなくなってしまったんだ。
あら、残念。
私が昔から持っている石も、しばらくして光が消えちまったんだ。ほら……

!?
光った!?

ブリリオート舞踏団のみなさんですね。あいさつに伺いました。

バ、バレリアーノ……!
……ん?ライラ!?やっぱり、君だったのか!

団長、知り合いなの?
……いや、知らないね。
知らない風には見えないけども。

私のことを覚えていないのかい?ほら、10年前……君は私の一座に入りたいと言ってきただろう?
団長がバレリアーノ一座に!?ほ、本当ですか……?

……ああ、そうさ。
あっさり認めた。
でも怒ってる?

いやぁ、立派になって!ワイアットさんから舞踏団の話を聞いたとき、きっと君だと思ってたんだ。

私があのとき君の申し出を断ったのは間違っていなかったな。君は、こんなに素晴らしい舞踏団を作りあげたのだから……。

また君のダンスを見たいと思っていたんだ。今度ゆっくり拝見させてもらうよ。
団員がめちゃくちゃ驚いてる。

こちらの怒りと動揺には気づかない感じで行ってしまった。

だ、団長……あの人のカン違いですよね?いまの話……。
……本当だよ。

だけど「また君のダンスを見たい」だなんて、よく言えたもんだ……。私のダンスを見もしなかったくせに……。
ええっ!?
20年前にメシューム湖で見たってこと?
あの笛の奏者がバレリアーノだよね?


……10年前、私は母の主催する舞台の花形、「輝く星の踊り子」に選ばれた。

私の人生の中でいちばん誇らしい瞬間だったよ。母はとても厳しくて、実の娘だからといってひいきをする人ではまったくなかったから……
フェロールが後ろで泣いとる!

……それからしばらくして、街にバレリアーノ一座がやってきたのさ。知ってるかい?当時のバレリアーノ一座は芸人だけでなく、楽団や踊り子も抱えた大所帯のサーカスだったんだ。
どうして今の数人になったんだろう。


彼らの見世物と楽しいダンスは、子供にも大人にも、大人気だったんだよ。

私は、初めて観たサーカスにすっかり心を奪われてしまったんだ……。

彼らが街を去るころには、私は一座に入ることしか考えてなかった……。周りの反対なんて気にしなかったよ。
劇団の主役になったのに、それを投げうってまで入りたかったって、相当だったのね。

待って!
君は……?
私はライラ・ブリリオート。この街でいちばんの踊り子よ。
ああ、君が噂の……。
旅の一座の座長に知られてるって、ライラ相当有名だったのね。

あなたたちの芸、見させてもらったわ。とても素晴らしかった!
それは、よかった。どうもありがとう。
それで、決めたの。私、あなたの一座に入らせていただくわ。
えっ?
上から~~~~!!

私のダンスをあなたたちの一座に加えれば、もっと素晴らしいものができると思うの!
ああ、そうだな……。

でも、断るよ。
速攻きり捨てたー!

えっ……!

君を一座に入れるわけにはいかない。
な、なにを言ってるの!?この私を入れないですって……!?

私のダンスを見てちょうだい!あなたも一目見れば、私の実力を……
その必要はないよ。もう私の心は決まっている。すまない……。

さっき、「私があのとき君の申し出を断ったのは間違っていなかったな。君は、こんなに素晴らしい舞踏団を作りあげたのだから……。」って言ってたから、実力を認めているからこそサーカス団に入って小さくまとまるのを良しとしなかったってことよね。
それプラス、実力があるからって、高慢な人を二つ返事で入れたら和を乱しそうで憚られる。ってのもありそうだよなぁ。
ってか、待って。
これは10年前のことだから、私がメシューム湖で会ってから10年後ってことよね。
10年で……あの長髪の兄ちゃんが、オールバックの髭になってるなんて!
な、なにがあったんだ…。


…………。
そんな話がねぇ……。
その後、バレリアーノのサーカス一座は、天幕の火事がもとでいちど解散してしまってね。踊り子も一座からいなくなった。
あらら。そういうこと。
彼のサーカスが焼けてしまったことには心から同情するよ。だけど、一座に入るのを断られたあのときのことはいまでも忘れてないよ。

その後、私は家を出て、このブリリオート舞踏団を結成して……バレリアーノに負けないように、ここまでやってきたんだ。
断られた悔しさがあったから、更に頑張れたってのもあるのかな。
だから、私が育てあげたこのブリリオート舞踏団……星くずのようにきらめくあんたたち踊り子は、私の誇りなんだよ。
ダンサータイツを手にいれた!