あの荷物はサンドリアに運ぶ、と。あっちのは……
運送屋さんなのかな。
おや、冒険者の方。なにかご用ですか?私は荷運び屋を営んでいるルードルフォと申します。
用というか、話しかけただけでした。すみません。
サンクティア!サンクティア!
ん?
ルードルフォ親方、サンクティアを知りませんか?やっと給料が入ったから、ずいぶんと遅れたがあの娘の誕生日を祝ってやろうと思ったのに姿を見せなくて……。
やれやれ。チェルバデュライさんよ。給料が出たんなら、俺から借りてる10000ギル、返してくれよ。
借金かかえとるんかい。
やめなさいよ。サンクティアが何ヶ月、壊れた装備を着続けてると思ってるの?
装備も買えないんかい。
砂漠を越えて、重い荷物を運んで……こんな辛い仕事をしてるってのに、あんな装備じゃ見てられないわ。
でも借りた金を返すのはあたりまえのことだろ。
それはその通り。
でも仕事に必要な最低限の装備は福利厚生で賄ってあげてほしい。
借金だらけで身包みはがされて追い出されたってのに、ここでも、ラッキーロールでスるんだからさぁ……。
いやはや、面目ない。返す言葉もない。
え、借金抱えてるのに更にギャンブル?
バカなの?
こんな安月給で辺境巡りだからねぇ。娯楽がないのはしょうがないが、故郷に奥さんと赤ん坊を残して来てるんでしょう。だったらお金なんか借りてないで、お金を稼いで仕送りしなきゃあ。
いやはや、まったくその通りで。はい。
妻子持ちで借金抱えて単身赴任中にギャンブル?
言葉を選ばず言うと、クズじゃねぇか。
ほら、無駄口はそこまでだ。おまえたち、次の荷運びの準備は終わったのか? 急がんと間に合わんぞ。
そういえばこの人ら、雇い主の前で辛い仕事とか安月給とか言ってたぞっ。
ところでチェルバデュライ。娘の誕生日祝いってことで、おまえに休みをやったわけだが……。
肝心の娘が消えたからといって、明日も休みにするわけにはいかんぞ。わかってるな?
あ、はい。もちろんです、わかってます……。
……それにまさか、逃げたんじゃないだろうな?おまえの借金は、おまえひとりじゃ一生かかっても払えん額だ。
予想をはるかに超える借金額だった。
あの若い娘っこならあと30年は働けるだろうから、それでようやく、めどがつくくらい……。
あ、探してた娘ってもう大きくてラバオにいるのね。
ということは奥さんと一緒にいる赤ちゃんは下の子なのか。
…え?
父親の借金返すために一緒に働かされてるの?
そのこと、あの娘にはよーく言い聞かせてあるだろうな?
そんな、まさか、娘が私を置いて逃げるだなんて……
は?
なにこいつ。
娘に借金返済させる気満々じゃねぇか。
フン、それならいいがな。どこか抜けてるあの娘のことだ。ゾリボの話を真に受けて、滅びたタブナジア侯国でも目指したんじゃないかと思ってな。
タブナジア?
……。サンクティア……。……おまえもとうとう、父さんに愛想をつかしてしまったのか……?
つかすに決まってるだろう。
こんなクズクソ親見限って自由に生きた方が良い。もう戻ってこなくていい。
荷運びのサンクティアがいなくなってしまったのじゃと?それで……チェルバデュライさんが捜しまわっていると?
うん。
……まさかとは思うが、ワシがノーグで聞いてきた噂話を信じてしまったのじゃろか。
冒険者よ、頼みがある。サンクティアを捜してやってくれい。あの娘は、20年前の大戦で滅びたタブナジア侯国を目指しているのかもしれん。もしそうであるなら、タブナジア群島へ渡るための船を求めて、ノーグへ行ったことじゃろう。
海賊がタブナジアに船を出すとかいう話だったのかな。
しかしノーグは、バストア海賊どもの巣窟。サンクティアは、ひどい目にあわされるやも……。
確かに若い娘さんには危険すぎる。
報酬はワシが出そう。ノーグでサンクティアを捜してくれい。
うん。わかった。
ゾリボはサンクティアを可愛がってるのね。
戻ってこない方が良いけど、無事を確かめないと心配だから急ごう。
なんだい、汗くせぇ冒険者だな!
毎日お風呂入ってるよ!?
こちとらせっかく一仕事終えて、一杯やってんだ!さっさと出てきな!
へへへ、どうだ、うまそうな飲み物だろう。いいか、若造。これはなぁ、東の国でしか手にハイらネェもんなんだ。
日本酒かな?
小娘。俺たち海賊はな、おまえみたいな冒険者きどりが大っ嫌えなんだ。船のひとつも持ってネェおまえたちの冒険なんざ、俺たちから見りゃガキのおままごとみてぇなもんだぜ。
王家を救わず、闇の王も倒さず、新たな月詠みを導かず、1万年越しの滅びから世界を守らず、バハムートと対峙もせずこんな所で酒をかっくらってる方がずっとおままごとだぜ?フフン。
おお?なんか言い返したいような顔だな。じゃあ、海賊の俺たちが驚くような変わったもんを持ってきたら、一杯、飲ませてやるぞ。
へへへ。まぁ、おまえのようなチンケな冒険者にゃ所詮、無理な話だろうぜ。
ソヒョンのアニキは、俺たち海賊の憧れ、肩に乗ってしゃべくりまくる鳥を飼ったことがあんだぜ?
オウムかな?
あとはもう、俺たち海賊の憧れ、赤いヒゲでもはやしてみせるしかねぇだろうな。
……ワッハハハハ。そりゃさすがに無理を言い過ぎだ。じゃあ、こういうのもアリにしてやろう。
女だしね…。
俺が満足するような一杯を持ってきたら、ここノーグにあるもんで、おまえがほしいもんを、ひとつやろう。
ハハハ、そりゃあいい。
この前、ノーグに迷い込んできた2人組の片方がいいんじゃねぇか?
たしかにな。きっと、なにかに使えるだろうよ。
人でもいいの?
それなら、サンクティアを所望すればいいのか。
ただ、わかってんだろうな?もうひとりの方は、俺がおつきあいさせてもらうんだからな?
落ち着け、バカども。……まぁ、用件はわかったな、冒険者。冒険者ならではの洒落た一杯を待ってるぜ?フッフッフ。
ワシュウさんが助けてくれるんだって。
……。この水筒を渡すから、これをいっぱいにしてきなさい。コロロカの洞門にある4つの大きな貝殻……。いいかい、頼んだよ。
あー、あの青いの。
それを、ソヒョンに渡してみなさい。
ありがと。
だいじなもの:ワシュウの水筒を手にいれた!