ついたぞーい。
……あ、付き人君!お、遅かったじゃないですか……!ここですよ!ハァ…ハァ……よ、余裕でわたくしの勝ちでしたね。待ちくたびれて暇つぶしにレベルを3つも上げちゃいましたよ。
ハァハァ言ってるじゃないか。
……っん?
ガダラル?
こんな所で花持ってる。
シ~ッ!静かに。誰かこっちに来ます、隠れて!
これ隠れてんの!?
……待て!そこのあなた、待ちなさい!!
ああ、見失ってしまった……。
聞こえなかったのか、無視したのか?
……誰だったんでしょう?軍人みたいですが、炎蛇将だったのでしょうか……ん?
……何か、落ちてますね。
……ふむ、花びらのようですね。さっきの人影が落としたに違いありません……
ファリワリはハイドランジアを拾った。
うーん、ますますもって謎ですね!ともかく、付き人君!さっきの人影を捜し出しましょう!ゴーゴーゴー!
ごーごー。
……ふむぅ。たしかにこちらに向かったと思ったんですが……?
やはり、見間違いでしょうか……?考えてみれば、花束なんか持ってたようだしあまりにも炎蛇将のイメージとかけ離れ……はっ!
楚々とした清涼たる花弁……人里はなれた僻地での密会……匂います匂いますよぉ……秘めたる熱情の薫りがッ!
ファリワリ結構そういうの好きよね。
職業柄かしら。
……!?
あっ…。
……ほう。俺には、硫黄の臭いしかしないが?
ガ、ガ、ガダラル将軍!いえ、その、わたくしたちは将軍についての詩を……そ、そうだ!「将軍たちの休日」というエッセイをですね……
黙れッ!俺の身辺をこそこそ探るとは貴様ら、たいした度胸じゃねえか。当然、覚悟はできてるんだよなァ?
ち、ちがうんです!!わたくしは猛反対したんです!それなのに、この付き人君が、どうしてもって言うからッ……!
何言ってんのー!
や、やめてやめてぇっ!おねがいっ!どうかファイガだけは……
ぎゃー!!
熱ゃぁぁぁぁぁぁあーーー!!
……フン。
……いてててて。ああ、酷い目にあった……。付き人君もだいじょうぶでしたか?
斬新な叫び声だったわね…。
ファリワリが、ポーションを使用した。
あっ!自分だけー!
くぅぅぅぅ!またしてもこんなッ!一度ならず二度までも、焼かれてしまうなんてッ!この恨み、はらさでおくべきか……ん?
えっ、こんなところにヤグード?
人が倒れてる!
は、はわわ……いったい何事です!?付き人君、急いであの人を助けなくては!
ん、灰が落ちてる?まるで龍の炎にでも焼かれたみたいな……
炎…?
さあ、もうだいじょうぶです。しっかりして……う……うわ~!息を、息をしてない!?
えっ!?
??? : 動くな!
なっ、なんなの!?
不滅隊がいっぱい来たー!!!
挙動不審の2人組がザザーダ島に向かったというのではるばる、出張ってきてみれば……いったい、ここで何が起きたというのだ!?おい、息があるかどうか調べろ!
ではわたくしたちは、これで……
うむ。
帰ろ。帰ろ。
待て!お前らは、皇都まで我々と同道してもらおう。
やっぱりそうなりますよね…。
??? : ……。
この人は誰だろう。
なにこれ。
プレッシャーが凄すぎる。
……だーかーらー!何度も申し上げているではないですかっ!わたくしたちではありません!何も知らないのです。ファイガのあと、目を覚ましたら、あんな……
ファリワリくん、と言ったかな?我々は、なにもそなたらの証言をウソだと決め付けているわけではないのだ。
あれらは、国境に配備していた我が軍の精兵。そなたらのような者に易々と倒せる相手ではない。
でっしょー?わたくしたち、虫も殺さぬ平和主義者です。はやく解放してくださいよー。
とはいえ、現場にいた者をこのまま「はい、そうですか」と帰すわけにもいかん。わかるな?
まぁ、ねぇ。
そなたらが聖皇さまに弓引く逆賊と結託していた可能性も捨てきれんしな……
ご冗談を!
ふむ……ならば、自ら、身の潔白を証明してみせよ。そなたら、あそこで何をしていた?あそこで倒れていたのは相応の理由があってのことだろう?いったい、誰に気絶させられた?ん?
(……どうしましょう、りぃ……。ガダラル将軍のこと、チクるべきでしょうか……?)
(不滅隊にそんなネタ渡したらもっと大変なことになるから黙ってようよ。)
(で、ですよね……!もちろん、わたくしだってすでに腹をくくっていましたよ!なんといっても、義理人情と気っ風が自慢の下町吟遊詩人ですから!)
何をコソコソ談じている?やはり、やましいことが……
いいえ!何も存じません!見てません!
事の次第はこうでございます。たくましい軍人さんと違って、わたくしは非力で病弱なウラ成りでして……
そこで、このりぃに請うてゼオルム火山に連れてってもらい、山籠りを……そう、精神の鍛錬に励んでいたのです。
……それは殊勝な。だが、ゼオルム火山はトロールどもの縄張りだぞ?
え……ええ。そのとおりです。それで、山のように大きなトロールにばったり出くわしてしまいまして……!この者ともども打ちのめされてしまった……という次第。いやぁ、慣れぬことはしないもんですな!
さすが舌先三寸詩人!!!
……悪いことは言わぬ。正直に申せ。変な義理立ては命を縮めるぞ。
ヒィッ!!
脅しじゃないですか!!
(……ど、どうしましょう。りぃ……。)
(絶対話さん!!)
い、いいえ、以上です!他に申し上げることはなにひとつ、ございません!
ファリワリ、かっこいいぞ!!
……なるほど。よろしい。
おい、お前。この者たちを解放しろ。調査は一からやり直しだ!
……は?ははっ!!
はー、やれやれ。
……ふん、狸め。少々脅せば、すぐに尻尾を出すと思ったが……。
??? : ……では予定どおり、私にお任せを……。
……よかろう。だが、その執着……命取りにならんと良いがな……?
??? : ……はっ。肝に銘じておきましょう……。
ふぅ……やれやれ。なんとか虎口を逃れましたねぇ……。
さすがに切っ先を突きつけられた時は覚悟しましたよ……わたくしの舌先に感謝してくださいね、付き人君。
お見事でした。本当に。
それにしても思わぬ時間のロスでした。ここは、いったんシャヤダルさんに現況を報告したほうがよさそうですね。
うん。
まだ、決定的な「無実の証」は見つかってませんが火山で拾ったハイドランジア。あれを見せましょう。手がかりの足しぐらいには……
……あれ?あれれ?たしかにポーチに入れたのに……あわわ……落としちゃったみたいです……いったい、どこで……
あら。
そうだ!!きっと、不滅隊に縄をかけられたときです!ずいぶんと乱暴にふん縛られましたからねぇ!
付き人君……みなまで言わずとも、わかりますよね?だって、ほら。わたくしはシャヤダルさんにアポを取らねばなりませんから……
えぇ…。
だいじょうぶ!付き人君なら、ゼオルム火山まであっという間!サボテンダーより速く走って、ブツを見つけチョコボより速く、戻ってくると信じてますから!
また火山行って取ってくるのぉ?
うえー。