
 なに?少年騎士を捜しているだと?
 うん。
 ……ふむ。確かに、従者や難民の少年ならこの要塞にもいるが……

 貴様、紹介状は?そいつの主君なり保護者なりの許可は当然、得ているのだろうな?
 えっ、保護者の許可?

保護者…アルテニアでいいのかなぁ。

 おや!?あなたは、ええと……

 そう、りぃさん……ですよね?
 うん。
ヴェラニスだ。

 失礼しましたヴェラニス様。こちらも「ご親戚」の方だったので?
 あ、ああ。まあ、そんなところさ。
こちらも?

 先日は失礼しました。私はヴェラニス。鉄羊騎士隊の一小隊を預かる騎士です。
小隊長なのね。
 言葉を交わすのは初めてでしたね。でも、あなたのことはいろいろと聞いて、存じているのですよ。
 えっ!?
嫌な予感しかしませんが!?

 ほら、彼らからね。

 りぃ!どうしたんだい?遅かったじゃないか!
ああ、ヴェラニスが親戚ということにして保護してくれてたのね。
よかった。

 ……でも、遠路よく馳せ参じてくれたね。団長としてうれしく思う。
 うん。

 そうだ、驚くなよ。なんと、我が鷲獅子騎士団はこの要塞の北東エリアの防衛を任されたのだ!
  おい、待て。清掃担当の間違いだろ?
埃からの防衛…!?

 どっちでもいっしょさ。オークどもが攻めてきたら、おれたち騎士団が、蹴散らしてやるんだから!
 おう!
 ははは。勇ましいな。君たち騎士の双肩に、北東エリアの美観がかかっている。期待しているよ。

 ヴェラニス様。少々甘すぎやしませんか?ほどほどになさらぬとこいつら、つけ上がってなにか仕出かすに決まってる。
 まあ、そうかたいこというなよ。事実、彼らのおかげで食糧貯蔵庫からネズミを一掃できたんだし。
それはすごい。
大手柄では?
 それは、そうですが……。

 緊急事態です!ヴェラニス様!て、敵が!
 落ち着け。どうした、ティアノン?

 敵襲であります!炊事兵が全員犠牲に……。
 !?
大変なことじゃないですか!

 炊事兵だと?なぜ、厨房が戦場の彼らが要塞の外にいた?
 はっ。いえ、それが……厨房で犠牲になったのであります!

ああ…。
 厨房?北東エリアだな。なんてこった!特別警戒区のど真ん中だぞ?
なんで特別警戒区のど真ん中に厨房があるの!?
一番安全な所にしようよ!

 いつもの烏公の特殊部隊の仕業か?
 いえ、それが目撃者の報告ではゴブリン兵だったらしく……。
 ゴブリン……おそらく賞金稼ぎだろう。とにかく、調べてみよう。
誰が雇ったんだろう。

 ティアノン、案内してくれ。

 ディオルディン。司令官閣下、および各騎士隊への連絡を頼む。
 了解。ヴェラニス様、どうも嫌な予感がします。くれぐれも注意してください。
 ありがとう。君もな。


 兄じゃ。北東エリアといえば、我が鷲獅子騎士団の所領では?
 ああ。そのとおりだ。どうする、団長?

 コックのルエルジュ爺さんは僕ら騎士が地下牢に放り込まれた時、こっそりソーセージを提供してくれてた。助けなきゃ!
一度捕まったんかい。
 じゃあ、急いでヴェラニスさんを追おうよ!

 うん、そうしよう。りぃ。着いて早々ですまないけど、後から君も来て!
 うん。