それぞれの死地へ 其の壱

ディオルディン Diordinne なに?少年騎士を捜しているだと?
りぃ うん。

ディオルディン ……ふむ。確かに、従者や難民の少年ならこの要塞にもいるが……

ディオルディン 貴様、紹介状は?そいつの主君なり保護者なりの許可は当然、得ているのだろうな?
りぃ えっ、保護者の許可?

保護者…アルテニアでいいのかなぁ。

ヴェラニス おや!?あなたは、ええと……

ヴェラニス そう、りぃさん……ですよね?
りぃ うん。

ヴェラニスだ。

ディオルディン 失礼しましたヴェラニス様。こちらも「ご親戚」の方だったので?
ヴェラニス あ、ああ。まあ、そんなところさ。

こちらも?

ヴェラニス 先日は失礼しました。私はヴェラニス。鉄羊騎士隊の一小隊を預かる騎士です。

小隊長なのね。

ヴェラニス 言葉を交わすのは初めてでしたね。でも、あなたのことはいろいろと聞いて、存じているのですよ。
りぃ えっ!?

嫌な予感しかしませんが!?

ヴェラニス ほら、彼らからね。

ラーアル りぃ!どうしたんだい?遅かったじゃないか!

ああ、ヴェラニスが親戚ということにして保護してくれてたのね。
よかった。

ラーアル ……でも、遠路よく馳せ参じてくれたね。団長としてうれしく思う。
りぃ うん。

ラーアル そうだ、驚くなよ。なんと、我が鷲獅子騎士団はこの要塞の北東エリアの防衛を任されたのだ!
ヴェラニス おい、待て。清掃担当の間違いだろ?

埃からの防衛…!?

シラヌス どっちでもいっしょさ。オークどもが攻めてきたら、おれたち騎士団が、蹴散らしてやるんだから!
マシェーグ おう!

ヴェラニス ははは。勇ましいな。君たち騎士の双肩に、北東エリアの美観がかかっている。期待しているよ。

ディオルディン ヴェラニス様。少々甘すぎやしませんか?ほどほどになさらぬとこいつら、つけ上がってなにか仕出かすに決まってる。
ヴェラニス まあ、そうかたいこというなよ。事実、彼らのおかげで食糧貯蔵庫からネズミを一掃できたんだし。

それはすごい。
大手柄では?

ディオルディン それは、そうですが……。

ティアノン Thianond 緊急事態です!ヴェラニス様!て、敵が!
ヴェラニス 落ち着け。どうした、ティアノン?

ティアノン 敵襲であります!炊事兵が全員犠牲に……。
ラーアル !?

大変なことじゃないですか!

ヴェラニス 炊事兵だと?なぜ、厨房が戦場の彼らが要塞の外にいた?
ティアノン はっ。いえ、それが……厨房で犠牲になったのであります!

ああ…。

ヴェラニス 厨房?北東エリアだな。なんてこった!特別警戒区のど真ん中だぞ?

なんで特別警戒区のど真ん中に厨房があるの!?
一番安全な所にしようよ!

ディオルディン いつもの烏公の特殊部隊の仕業か?
ティアノン いえ、それが目撃者の報告ではゴブリン兵だったらしく……。

ヴェラニス ゴブリン……おそらく賞金稼ぎだろう。とにかく、調べてみよう。

誰が雇ったんだろう。

ヴェラニス ティアノン、案内してくれ。

ヴェラニス ディオルディン。司令官閣下、および各騎士隊への連絡を頼む。
ディオルディン 了解。ヴェラニス様、どうも嫌な予感がします。くれぐれも注意してください。

ヴェラニス ありがとう。君もな。

マシェーグ 兄じゃ。北東エリアといえば、我が鷲獅子騎士団の所領では?
シラヌス ああ。そのとおりだ。どうする、団長?

ラーアル コックのルエルジュ爺さんは僕ら騎士が地下牢に放り込まれた時、こっそりソーセージを提供してくれてた。助けなきゃ!

一度捕まったんかい。

マシェーグ じゃあ、急いでヴェラニスさんを追おうよ!

ラーアル うん、そうしよう。りぃ。着いて早々ですまないけど、後から君も来て!
りぃ うん。