止まれ、あやしい奴!ここは少年騎士団の領地なるぞ!用なき者と、大人はとっとと立ち去れ!……であります。
これまた可愛い子ですね。
??? : ……ロロン、うるさいですよ。もう少し静かにしてください……。
えっ、オークの戦車がこんなところに?
ってか、喋った。
??? : ふむ、ここがこうで……。
だ、団長と副団長のご帰還であります!
少年騎士団の団長がエグセニミルで、副団長がラーアルなのね。
よーし!お前ら、集合しろっ!
私、しれっと混じってるじゃないですか。
エグセニミル団長!ラーアル副団長!任務遂行、ご苦労さまであります!
うむっ。ロロン警備隊長、見張りご苦労。
おいっ、ビスティヨ作戦本部長!
……騒々しいですよ、騎士団長。
んなとこ引きこもって勉強ばっかしてねぇで、ほらっ、はやく例のブツ……
……なあ、エグセニミル。
ん、なんだよ?
……変なのがいる。
げげっ、なんでオレたち少年騎士団の領地に大人がいんだよ!
バレた!!
おいっ、ロロン!まさか団則その3を忘れてねぇだろうな!?
イエッサー!少年騎士団則その3!いかなる大人も、われわれ少年騎士団の領地に立ちいれてはならない、であります!
だったらなんですぐに追い払わねーんだよ!
タイミングが悪くて追い払う暇がなかったよね。
おい、お前っ!何の用か知らねーけどここはオレたち少年騎士団の領地だ。どっかに行きやがれ!
エグセニミル団長!!
今度はなんだ!
報告であります。従騎士アルテニア様の、ご来訪であります。
大人だ。
あらあら、みんな。ずいぶんと楽しそうにしてるじゃない?
ふふっ、任務ご苦労、ロロン警備隊長どの。
ありがたき、お言葉であります!
入ってもいい大人なのかな。
あら?エグセニミル。こちらの方は……もしかして新しい騎士団員?
はぁ!?ち、違うっ!こいつが勝手に、オレたちの領地に、突っ立ってるだけだ!
あら、そうなの。
お邪魔しております。
はじめまして。あたしはアルテニア。ボーレル家の者よ。王立騎士団の従騎士でもあるわ。
ボーレル家。
爵位があるのかな。
えーと、あなたは……。
りぃでっす。
……そう、りぃさん。
なー、アルテニア。はやくその変な大人、どっか連れてってくれよ。
はいはい、わかったわかった。それじゃ、おジャマ虫は、あちらのほうでお話でも。
何か話したいことがあってここへ来たんでしょう?そういう顔してるわ。
よぉーし、お前たち。作戦会議だ!!
敷地内にとどまってるじゃないですか。
全然どっかに行ってないけどこれでいいのか少年騎士団。
……なんですって?オークの虚言に騙され、オークの脱走を助力してしまったですって?
ああっ、口が勝手に喋ってしまったぁ。
…………。
……いいわ、信じましょう。よく、正直に話してくれたわ。
ああっ、ありがとうっ。
オルシャー家ゆかりの者を名乗る口達者なオークに、一角獣の紋章が入った指輪、神殿騎士ダルヴィーユと牢の鍵……もし、オークが持っていた指輪が本物なら、きっとそれはオルシャー家の当主の証。間違いないわ。
当主しか持たない指輪なのか。
でも、それはアルフォニミル伯爵が所有するもののはず。なぜ、オークが持っていたのかしら……。
過去の当主がオークにやられたとかいうのも無い感じなのかしらね。
それにあの神殿騎士ダルヴィーユ……、そう……。
あっ、これを伝えられてよかった!
……ねえ、りぃさん。あなたを見込んで、ひとつお願いがあるの。
なに?
ここの少年たちの後見人になってもらえないかしら。
後見人に?
本当はあたしがついていてあげたいのだけれど、任務もあるしずっと一緒にとはいかなくて、困っていたの。こんなにも王都で奇妙な事件が頻発すると、あたしとしては、子供たちがとにかく心配で……。
ああ、そうだねぇ。
その代わりといっては何だけどオークの脱走の件は、あなたとあたし、ふたりだけの秘密にしておいてあげるわ。安心して。
是非お願いします。