少年たちの贈り物 其の参

ロロン 止まれ、あやしい奴!ここは少年騎士団の領地なるぞ!用なき者と、大人はとっとと立ち去れ!……であります。

これまた可愛い子ですね。

??? : ……ロロン、うるさいですよ。もう少し静かにしてください……。

えっ、オークの戦車がこんなところに?
ってか、喋った。

??? : ふむ、ここがこうで……。

ロロン だ、団長と副団長のご帰還であります!

少年騎士団の団長がエグセニミルで、副団長がラーアルなのね。

エグセニミル よーし!お前ら、集合しろっ!

私、しれっと混じってるじゃないですか。

ロロン エグセニミル団長!ラーアル副団長!任務遂行、ご苦労さまであります!
エグセニミル うむっ。ロロン警備隊長、見張りご苦労。

エグセニミル おいっ、ビスティヨ作戦本部長!
ビスティヨ ……騒々しいですよ、騎士団長。

エグセニミル んなとこ引きこもって勉強ばっかしてねぇで、ほらっ、はやく例のブツ……

ラーアル ……なあ、エグセニミル。

エグセニミル ん、なんだよ?
ラーアル ……変なのがいる。

エグセニミル げげっ、なんでオレたち少年騎士団の領地に大人がいんだよ!

バレた!!

エグセニミル おいっ、ロロン!まさか団則その3を忘れてねぇだろうな!?
ロロン イエッサー!少年騎士団則その3!いかなる大人も、われわれ少年騎士団の領地に立ちいれてはならない、であります!

エグセニミル だったらなんですぐに追い払わねーんだよ!

タイミングが悪くて追い払う暇がなかったよね。

エグセニミル おい、お前っ!何の用か知らねーけどここはオレたち少年騎士団の領地だ。どっかに行きやがれ!

ロロン エグセニミル団長!!
エグセニミル 今度はなんだ!

ロロン 報告であります。従騎士アルテニア様の、ご来訪であります。

大人だ。

アルテニア Altennia あらあら、みんな。ずいぶんと楽しそうにしてるじゃない?

アルテニア ふふっ、任務ご苦労、ロロン警備隊長どの。
ロロン ありがたき、お言葉であります!

入ってもいい大人なのかな。

アルテニア あら?エグセニミル。こちらの方は……もしかして新しい騎士団員?

エグセニミル はぁ!?ち、違うっ!こいつが勝手に、オレたちの領地に、突っ立ってるだけだ!
アルテニア あら、そうなの。

お邪魔しております。

アルテニア はじめまして。あたしはアルテニア。ボーレル家の者よ。王立騎士団の従騎士でもあるわ。

ボーレル家。
爵位があるのかな。

アルテニア えーと、あなたは……。
りぃ りぃでっす。

アルテニア ……そう、りぃさん。

エグセニミル なー、アルテニア。はやくその変な大人、どっか連れてってくれよ。
アルテニア はいはい、わかったわかった。それじゃ、おジャマ虫は、あちらのほうでお話でも。

アルテニア 何か話したいことがあってここへ来たんでしょう?そういう顔してるわ。
エグセニミル よぉーし、お前たち。作戦会議だ!!

敷地内にとどまってるじゃないですか。
全然どっかに行ってないけどこれでいいのか少年騎士団。

アルテニア ……なんですって?オークの虚言に騙され、オークの脱走を助力してしまったですって?

ああっ、口が勝手に喋ってしまったぁ。

アルテニア …………。

アルテニア ……いいわ、信じましょう。よく、正直に話してくれたわ。
りぃ ああっ、ありがとうっ。

アルテニア オルシャー家ゆかりの者を名乗る口達者なオークに、一角獣の紋章が入った指輪、神殿騎士ダルヴィーユと牢の鍵……もし、オークが持っていた指輪が本物なら、きっとそれはオルシャー家の当主の証。間違いないわ。

当主しか持たない指輪なのか。

アルテニア でも、それはアルフォニミル伯爵が所有するもののはず。なぜ、オークが持っていたのかしら……。

過去の当主がオークにやられたとかいうのも無い感じなのかしらね。

アルテニア それにあの神殿騎士ダルヴィーユ……、そう……。

あっ、これを伝えられてよかった!

アルテニア ……ねえ、りぃさん。あなたを見込んで、ひとつお願いがあるの。
りぃ なに?

アルテニア ここの少年たちの後見人になってもらえないかしら。
りぃ 後見人に?

アルテニア 本当はあたしがついていてあげたいのだけれど、任務もあるしずっと一緒にとはいかなくて、困っていたの。こんなにも王都で奇妙な事件が頻発すると、あたしとしては、子供たちがとにかく心配で……。

ああ、そうだねぇ。

アルテニア その代わりといっては何だけどオークの脱走の件は、あなたとあたし、ふたりだけの秘密にしておいてあげるわ。安心して。
りぃ 是非お願いします。