団長より伝言を預かっているであります!「大人たちに先を越されるのがイヤなので、先に出発することにする。オレたちは先にバタリア丘陵へ向かう。お前はひとりで勝手についてこい」
えーっ!
……以上であります!きっと今ごろはジャグナー森林あたりに着いたころと思われるであります!
ジャグナーね。急がないと危険すぎる。
ほんとにもうー。
いくら強かったとしてもまだ子供なんだから、オーク相手に圧倒的に体力も筋力も足りないでしょうに。
あっ……りぃ!!た、大変なんだ!!
どうしたの!?
僕ら、バタリア丘陵へ向かうためにジャグナー森林を抜けようとしたんだけど……途中でオーク兵に襲われて……。
……あれっ!?
エグセニミルがいない!?
何ィ!?
あいつ、途中まで一緒に逃げてたのに……まさか、はぐれたのか!?
唯一勝るであろう修敏さで生き延びてたけど、追い込まれちゃった!
ゼェッ……ゼェッ……やっと追いつめたぞ!!すばしっこい小僧め!
あっ、このオーク体力無さそうだわね。
……ふんっ。て、てめぇらなんかオレひとりで充分だ!まとめてかかってこい!
グフフ……。このゾッグボッグ様に向かって、威勢だけはいいじゃねぇか、小僧!
(クロッグヴォッグホッグ、ゾックヴォックゾッグ?)
(グロッグ、ドレッグブルックノッグ……)
……ハグレたか。ケッ、どいつもこいつもウロチョロしやがって……。
オークの方も仲間とはぐれたのね。
オイ、小僧!運がよかったな。お前の相手はコイツとこのオレサマだけだ。
コデックドロッグヴェックヴォックブロックグレッグ!
貴様のような生意気で憎たらしいガキは、オレサマがメッタメタに切り刻んでやる!
……と、コイツが言っている。オレサマの脚色つきだがな。
ヴォックブロックグレッグ!ヴォックブロックグレッグ!ヴォックブロックグレッグ!
何を連呼しているのか分かんないけど、アホっぽいのは分かる…。
くっ……
子供だからって、なめるなよっ!
ヴォックロックヴォッグクラットゲック……何だ、この感じは……
お前の、その目……かつて、どこかで……。
かつて?
前に会ったことあるの?
……君らは王都に走って、誰かに……アルテニアにも知らせてくれ!
僕らはここから東のほうで待ち伏せしていたオーク兵に奇襲を受けたんだ。
僕もあいつを捜しにいきます。どうかりぃもエグセニミルを!
うん。
いた。
(クロッグクレック!?)
(クレック?)……誰だ!?
お前は……し、新入り!?
エグセニミル!!
……ラーアル!!
…………エグセ……ニミル……だと?
……そうか。道理で、あの眼は……つまり、お前がこの時代の……。
この時代の?
あっ!
このオークも未来から来たんだな!?
グフフ……。ついに見つけたぞ、エグセニミル・M・オルシャー!
よほど恨みが?
北の地に進軍した時にメタメタにやられたのかしら。
……気やすくオレの名前を呼ぶんじゃねぇ!それにオレはまだ……
爵位継いでないからその呼び名は正しくない、と。
ともあれ、騙したこんにゃろめをぶっ飛ばしてやる!
……んっ?おやおや……見憶えのある顔だと思えば……。あのときオレサマをサンドリアの牢から解放してくださったお優しい方ではないか……。
……!?
オークを牢から……りぃが……?
いやまぁ、その、いろいろと…。
お優しい方、申し訳ない。牢を出た後、ワタクシはひとつ重要なことを思い出してしまったのだ。そう……ワタクシはエルヴァーンのような野蛮な連中とは違う。
オレサマは初めから嘘つきなオークだったんだってなァ!!
それにしてもどうしてこんなに流暢に人間語話すんだろう。
コデックドルックレッシュブレック!
……そうか、ガマンがねぇなぁ。まずはあのマズそうな飛び入りからやっちまえ!小僧どもはメインディッシュに残しておけ!!
くっ、若くなくてマズそうですまねぇなあ!!!!
ケェェェェェッグ!!
許さん!!!