いま、プリーン大統領が声明を発表されているぞ。さ、大統領府へ行って拝聴してこい!
……諸君らの献身的な戦いによって、わが国建国以来、最大の危機は去った。
いま、私は高らかに宣言しよう。わが国は、亀どもに勝利したと!
……だが、われわれは決して忘れてはなるまい。この勝利が、兵士、市民、多くの犠牲の上に得られたということを……。彼らのためにしばし、黙祷をささげよう……。
ありがとう……。
さらに、諸君。私はこの場を借りて、発表したいことがある。どうか、冷静に耳を傾けてほしい……。
なんだ?
私は恥じているのだ。あの忌まわしいベルナー軍務大臣暗殺事件……。その嫌疑が無実のペイルイーグル議長にかけられたことを。
ペイルイーグル議長が無実だと……?
どういうことだ……!?
カルスト君。
みんな、聞いてくれ!
私は、ある場所でトンベリの暗殺者に襲われもう少しで命を落とすところだった。それを、身を挺して救ってくださったのは、議長その人だったのだ!
なんだと……!?
議長が……!?
私は暗殺の嫌疑で彼を糾弾していた張本人だった……。もし、彼が容疑をかけられていたような、反政府主義の暗殺者の首魁だとしたら、そんなことをするだろうか?
それに、そのトンベリの懐から、軍務大臣室の見取り図も出てきた。もはや、犯人がだれかは明白となったのだ。
犯人はトンベリだけど、雇い主は?
戦争相手の獣人が裏工作したのか、バストゥークの誰かか……?
やっぱり、ぺイルイーグル議長は潔白だったんだ!
そのとおり!私は、大統領として公式に議長に謝罪しその名誉を速やかに回復したいと思う。そして、この薄汚い謀略を仕組んだ、獣人血盟軍に報復することを、ここに誓う!
獣人がやった証拠があったのかな。
諸君。そのためにどうか、力を貸してほしい!!
うぉおおぉぉおぉおぉっ!!!
……ですが、諸般の事情を鑑みても、内乱罪については酌量の余地はありません。
そうだな……。
閣下。憲兵隊としてはファイブムーンズ容疑者の即時引き渡しを要求せざるを得ません。
待ってくれ。その前に少しだけ、彼と話がしたい。
承知しました。
なにか言い残すことは?
…………。
なるほど。黙して語らず。あとは死をもって己が意を示さんというわけか……。
いい気なものだな?
……!?
違うか?潔く死ねれば、お前は本望だろうがあとに残された者たちはどうなるのだ?お前と行動を共にした同志は?本件で命を落とした者たちの遺族は?そして……
反逆者を出した汚名を被り、何より貴重な戦力を失うお前の仲間……ミスリル銃士隊は?
…………。
もっと言ったれ大統領。
ときに、クララ。いまは戦時だ。ミスリル銃士1人の諜報活動は1個軍団の命運すら左右しかねん。そうだな?
はっ、光栄であります。わが銃士隊の情報力は、同盟国からも高い評価をいただいております。
閣下。おっしゃりたいことはわかりますが……
ありがとう。理解してもらえると思っていたよ、ディーター君。
だ、大統領……!!
大統領の方が上手だったなぁ。
なに、いまさらこやつは逃げも隠れもするまい。軍法会議が始まるまででよいのだ。彼の身柄を私に預けてくれるね?
…………。
……よろしいでしょう。大統領として、閣下が彼の身柄を書面にて保証してくださるならば。
ですが、閣下。いずれ、この件で、ご自身が議会から追及されることになるでしょう。
無論、覚悟の上だとも。
まさかこれが現代でプリーン大統領がいない原因になってたりとか……?
ファイブムーンズ……いや、ガラッグ。君には、これまでどおりミスリル銃士として任務にあたってもらう。よいな?
……隊長が自分を必要とされているなら。
当たり前だ。
よし、決まりだな。
わが国は再び、団結せねばならん。ガラッグ。そのためには、君の意見と行動が必要だ。頼んだぞ。
はっ。
若気の至りを許してもらえてよかったのぅ。
それから、りぃ。
へっ?
突然話題を振られてびっくり。
クララから話は聞いた。君が敵の攻城兵器を破壊してくれたそうだな。おかげで、この街は窮地を脱することができた。この国の大統領として、礼を言う。
これは私からの恩賞だ。どうか、受け取ってほしい。これからも、わが国のためミスリル銃士隊に、君の力を貸してくれたまえ。
ありがとっ。
大統領からお礼だなんて!
何が貰えたんだろう~。
よかったな、ファイブムーンズ!
まったく、人騒がせなんですから。
隊長、自分は……
なにも言わなくていい。お帰り、ファイブムーンズ。
おい、ザイドもなんとか言ってやれよ。
……ふん。
…………。
どっか行っちゃった。
ザイドは本当は良かったと思ってる。かどうか全然分かんないなぁ。
ザイドさんは、相変わらずですね。
しかたあるまい。彼とて、同じガルカ族。いろいろと思うところもあろう。
さて、りぃ。あなたには引き続き、われわれの作戦に協力してもらいたい。引き受けてくれるか?
うん。
では早速、今後の作戦についてだが……
うっ……!
クララ?
隊長……?どうされましたか!?
えっ、私を見て具合悪くなってる!?
……な、なんでもない。少し目眩がしただけだ……
おそらく、疲労でしょう。ここのところ、立て続けの事件で休む間もなかったですからね。すぐに休まれた方がいいです。
それは、あるだろうけど……。
……ああ、そうだな。フォルカー、あとは頼む。すまないが、私は少し休ませてもらおう……。
了解です、隊長。
りぃ。すまないが、見てのとおりだ。また後日、隊長が回復されたら作戦会議の続きをするとしよう。
うん。
クララには何か特殊な能力があるのかなぁ。
でも、今まで一緒にいても特に何もなさそうだったし、何故今?
クララ隊長があんなに憔悴された姿は、いままで俺も見たことがないぞ。心配だ……。
そういえば、シュトルム参謀総長から聞いたぞ。ついにミスリル銃士隊No.6に任命されたそうだな。おめでとう!
えっ。そうなの!?
いつの間にか私もミスリル銃士隊!?
ナジの先輩じゃないですかー!やだー!
自慢してやりたい~~~。
だが、失態とはいえ俺が最初にここを通してあげたからこそ、いまの君があるんだ。それを忘れないでくれよ。
物は言いよう~!
でもまぁ仕方ないなぁ。覚えておいてやるよっ。
共和シルバー章を手にいれた!