まず、約束してください。このミッションを受けたことを、誰にも言わないということを。
え?うん、わかった。
こんな前置きするなんて、どうしたんだろう。
これは、手の院のアプルル院長からのミッションなのですが、守護戦士さまを通していないミッションなのです。
このミッションを守護戦士さまが許すとは思えません…。ですから、私たちガードが相談して決めました。アプルル院長を助けるために黙っていることを。
なんと。
何かよほどの事が起きてるのね。
手の院へお急ぎください。アプルル院長が、あなたのことをお待ちでしょう。
アプルルちゃん、来たよ。何があったの?
ありがとう。ガードの人たちから聞いたと思うけど、こんな大変なミッションに来てくれて本当にありがとう。
うん?
そういえば内容聞いてないから…そんなに大変なの?
あなたも知ってるとおり、わたしのおにいちゃん…アジドマルジド院長が闇牢に入れられちゃって、もう随分たつわ。
まだ出してもらえないの?
早く見せたい本があるんだけどな。
おにいちゃんは、とっても強い人。だけど、闇牢はどんな魔力をも吸い取る部屋。こんな長く入れられたら…。
えっ!?そんなえげつない部屋だったの!?
お願い!おにいちゃんを助けるのに協力して!いけないことだってわかってるけど、おにいちゃんを助けたいの!
いいよ。わかった。手伝う。
アプルルちゃんのためならひと肌ふた肌ぬぎますよっ。
アジマルにも何かとお世話になっちゃってるしね。
…ありがとう。りぃさん…!
わたしね、おにいちゃんを助けようと思って、一生懸命、調べたの。
くっ…。なんていい子っ。
中央塔にある小部屋は、星月の力で封じられたもの。だから天の塔で星月の力をこめて作られる「札」がないとあの部屋の扉は開かない。
神子さまが札を作るんだったよね。
でも、同じように星月の力がこめられたものといえば、院長の指輪があるの。院長が変わるとき、新しい院長のために作られ、天の塔から手渡される指輪よ。
だからわたし、手の院の指輪を持って、闇牢へ向かったの…そして…。
だめですわよ、アプルル。あなたには無理ですことよ。
…シャントット博士…。
あなたが闇牢のことを尋ねまわっていると聞いて、ピンときましたことよ。…というより、あれじゃあ、「牢破りをするから捕まえてください」というようなものじゃないの。
シャントット様、心配になって見に来たのね。
あさはかですわ。優秀な生徒の考えることじゃありませんわよ。
アプルルちゃんのことも気に入ってるご様子。
だってわたし、おにいちゃんを見捨てることなんてできないんです!でも、このままじゃおにいちゃんは、おにいちゃんは…
わかってますわ。わたくしも、あの子を失うわけにはいきません。せっかく、口の院を任せることができるようなタフな魔道士に育てあげたっていうのに…。
シャントット様がタフって言うほどって、アジマルどんだけ…。
いいですこと?わたくしのいうことをよくお聞きなさい。
その扉は、前に教えた通り星月の力で開くものですわ。ホルトト遺跡はすべて星月の力によって制御されているからですのよ。
ホルトト遺跡は、クリュー人が月光の力をエネルギーに変える機関として作ったんだったね。
けれど20年前の戦争の時ホルトト遺跡のいくつもの装置が、大きく損傷したことで、その扉の魔力も弱まっていたわけです。
戦争で壊れるまでずっと普通に稼働してたってこと?
1万年近く?
古代技術すごいな…。
ですから、今までは「天の塔の札」でしか開かなかったものが、院長の指輪1つでも開くようになっていたのです。
…!
ほら、気づきましたわね?あなたも、ちゃんと考えればわかる子なのに。
えっ、なになに?
普通の頭脳の一般人だから分からん…!
そう、アジドマルジド本人がホルトト遺跡の力を復活させたでしょう?そのせいで、この扉も院長の指輪1つでは開かなくなってしまったのですことよ。
オホホ、おろかですわ!
…。
あ、アジマルゥ!!
…あら、ごめんあそばせ。けれど、わたくしを恨むのは筋違いですことよ。わたくしには、1つの素晴らしいアイディアがあるのですからね!
本当ですか、シャントット博士!わたし、どうすればいいのですか!?
ろくでもない作戦なのでしょうか!?
オホホ!院長の指輪を5つ集めてごらんなさい。そうしたら、あなたの魔力でもきっとその扉を開くだけの力になるでしょう。
おおっ…。
いいですこと?5つの指輪を集めたら、このわたくしのところへ持っていらっしゃい。どうにかしてあげますわ、オホホ!
…ありがとうございます、このご恩は忘れません、シャントット博士。
それともう1つ、忘れては困ることがありますわ。あなた、5つの指輪探しを自分でやろうなんて思ってませんわよね?
絶対思ってるよね。
冒険者に頼みなさい。りぃとかいう便利な冒険者をごぞんじ?
えっ?
おもしろいほど、面倒ごとに首をつっこんでくる冒険者だということですわ。これを利用しない手はありませんことよ。
シャントット様ー!?
だから、あなたにお願いしたいの。…これ…、わたしの手の院の指輪。
くぁーっ!
アプルルちゃん本当に素直なんだから…!!!
大変なことを頼んでいるのはよくわかっているの…。でもお願い。おにいちゃんを助けて。お願いします。わたしの、たったひとりのおにいちゃんを…。
まかせてー!!
だいじなもの:手の院の指輪を手にいれた!