神子さま、申し訳ありません。我々がいながら、神子さまの眼前にまで敵の侵入を許すとは…
私は、すぐに奴を追います。残していく守護戦士たちには、アジドマルジドに従うように言っておきます。
待て、追っても無駄だ。あれは、誰にも止められないぞ。
なに!?奴が何なのか、知ってるのか!?
…神子さま、奴が使ったのは人の魔法ではなかった。あれは、「星月の力」。ホルトト遺跡や魔導球の力と同じ力…。
星月の力のカタマリ…。
あれは、満月の泉にいた大いなる獣フェンリルの力だ。そうだろう?
満月の泉から得た力ではなく、フェンリルそのもの!?
ばかな!大いなる獣フェンリルは、もう…!
…もう、なんなんだ?満月の泉にフェンリルはいなかった。
確かにいなかった。
分かっているのは、いないという事実だけ。
どうしていないのかは…。
神子さま、俺は「神々の書」を読んだ。ウィンダスの始まりの時、始まりの神子がなにをしたのか、すべてを知った。
今のアジドマルジドは英知のカタマリ…。
だから、教えてくれ。20年前に、満月の泉でなにがあったのかを。
…そうですね、話さなくてはならない時が来ました。
始まりはずっと昔。ウィンダスの始まりの神子さまが、満月の泉で詠んだ「月詠み」の予言です…。
いつも神子さまがやってる「星詠み」ではなく、「月詠み」なのね。
その予言は、数百年前から20年前まで続いた、それはそれは永いもの。
えっ、満月の泉って、こんなだったの!?
この前見た時、真っ暗だったのに…!
「月詠み」で得られた予言は天の塔にある、天文泉に記憶されました。
ここにはそんな情報があったのね。
そうして、私たち星の神子は「星読み」を行うことでその予言を読み、ウィンダスを導いてきたのです。
なるほど、2代目の神子さまからは、月詠みの情報を見て、ウィンダスを導いていたのかー!そして600年以上その予言通りに動いてきたと?
魔法を会得したのも彼女だし、初代星の神子リミララ、すさまじいな!!
…始まりの神子さまの予言は、ウィンダスを繁栄に導き、栄華をもたらしました。しかし、私の「星読み」が見たのは…。
見たのは。
「滅び」でした。
ズババ様が言ってた。
今の神子さまが初めて星読みの力を使った時にクリスタル戦争の事を見てしまい、倒れてしまった。と。
そう、それは大いなる破壊…。ウィンダスは燃え上がり、水に飲まれ、光が空を焼き、人が倒れていく様…。
確かにウィンダスはクリスタル戦争の時に市街地戦にまでなってしまってる。
私は、満月の泉に佇む大いなる獣…神獣フェンリルさまに尋ねました。
民を滅びから救いたいか?小さく弱き神子よ。
おおっ。
満月の泉とフェンリル!
しかし無駄だ。星月の意志は天の意思。最初の神子が最後に滅びを見たように、人は恐れながらも滅びを望むもの。
最後に滅びを見た?
神子さまが見たクリスタル戦争の?
あれが、予言の最後だったってこと?
ってことは、本当に滅んでウィンダスは終わりだったってこと…?
この我と渡り合ったあの神子ですら、自らの怯えに屈した。我を前に震えるばかりのそなたに、一体、何ができよう?
ああっ、神子さま怯えてるぅ。
フェンリルの力が圧倒的過ぎて怖いのかな。
そう、私は恐ろしさに震えるしかありませんでした。
しかし、あの時代…私の側には、とても強い人…カラハバルハがいた。
それもまた運命?
星月の意志を変えようと、彼は神獣さまの心を支配する魔法を…「召喚」の魔法を、生み出したのです。
星月の意思=力=フェンリル。として、フェンリルの考えを無理矢理変えることで、月詠みの最後の「滅び」を別のものにしようとした…ってことだったのかな。
だから、「召喚」が必要だったのね。
しかし…
えっ、なんかすごい装置と、フェンリルと、カラハバルハが。
やめて…。やめて、カラハバルハ!
あっ、神子さま。
その場にいたのね。
これ以上は無理です!あなたの心が壊れてしまう…!
心が…。
なるほど…。これが人の定めに抗う力か…。
神子よ、怯える必要はない。恐れる必要はない。
導きの光なき闇夜が来るが、決して歩みを止めてはならぬ。歩みを照らす光はないが、光なくとも道はあるのだ。
フェンリル、これから起こること予想できてた…?
…そして、大いなる獣フェンリルは死んでしまった…?
ええ、そうです…。神獣の心は広く深く…、どんなに強いあの人の心でも、神獣の心を受け入れることはできなかったのです。
カラハバルハも、フェンリルも死んでしまった…。
あれ?
ウィンダスのみんなが言ってる、「ウィンダスを救った英雄カラハバルハ」って、一瞬でもフェンリルの力を使って市内に攻めてきたヤグードを一掃したのかと思ってたけど、そうじゃなかったのかな。
ウィンダスの民には、カラハバルハがヤグードを倒した。とかいう風に伝わってるんだろうけど、フェンリルを弑して月詠みの予言を破棄して、滅びの未来を変えたから。が真実?
あっ、ヴァナ・ディール トリビューンでこんな記事を発見。
「その名はフェンリル!」
これが本当なら、死ぬ前にひと暴れして敵を倒したのかもしれない。
ウィンダスは、星月の加護を失いました。ホルトト遺跡は役目を果たすことができなくなり、魔力の水は枯れ、星の大樹は枯れていきました…。
フェンリルの力、すごいんだなぁ。
そもそも、クリュー人がフェンリルの力を利用するためにホルトト遺跡作って満月の泉に留めたって言ってたけど、フェンリルは納得の上だったのかなぁ?
クリュー人と何か契約でもしたのかしら。
けれども私は、星の神子として民を導かなければなりません。光なくとも、光を示さねばなりませんでした。
今までの神子さまは星詠みをしてそれを伝えればよかったけど、神子さまは自分でどうするか考えないといけなかったのね。
誰にも相談できず、ひとりで、国政を?
ひえぇ。
あれから20年…。私は星読みをする真似ごとで、民を導いてきたのです。天文泉は何も映らない。映る未来などないのだから…。
み゛ござま゛ぁ゛(号泣)
…。
…しかし、神子さま。未来は続いている。フェンリルが言ったように、俺たちの前に道は続いている…。
カラハバルハが月詠みを反故にしたから続いた道…?
平和が約束されていないとは、滅びも約束されていないということだ。俺たちは自分で光を掴まないと…!
…!
カラハバルハが死んで以降、初めて神子さまが前向きな考えになれた瞬間!?
神子さま、俺にカラハバルハの心の院へ入る許可をください。
カラハバルハも俺も、想いは同じです。ウィンダスを救いたい。そのために、俺にカラハバルハの叡智を…。
…アジドマルジド…。
わかりました。あなたには、カラハバルハが残したものすべてと、そして自由を与えましょう。
おおっ。
神子さま…よろしいのですか!?
もう、隠さねばならぬことはすべて明かされてしまいました。それでも歩み続けると、彼は言うのです。それにあの黒い生き物がいったい何なのか…確かめなくてはなりません。
…。わかりました。
あれ、そういえば、私が心の院に行ったとき神子さまにばれて、立ち入り禁止の場所に入ったのだから処罰を考えますよ。って優しく言われたのだけど。
まだ処罰与えられてなくない?
よし、じゃあ俺はさっそくカラハバルハの研究室…心の院に行ってくる。
神子さまの部屋からつながってるから、あっという間に行けるわね。
アプルルには、おまえから言っといてくれよ。よろしく頼むぜ。
うん。わかった。
アプルルちゃん心配してるだろうから、すぐ伝えに行こう。