クレーディ王女様が、以前貴公が持ってきた種が花を咲かせたからぜひ見に来てほしい、とおっしゃられている。
花?
あ、ローテ王妃の遺言で取ってきた夢幻花かな。
あの庭園に招待されるとは名誉なことだ。そのうち王室の園遊会にも招待されるかもしれん。一介の冒険者に過ぎなかった貴公がここまでになるとはな。
へっへっへ。
さぁ、王女様を待たせてはならない。急ぐがいい。
はーい。
姫様、今日の水やり、終わりましたー!
いつもありがとう。
今日はもういいぞ。ご苦労じゃった。
じゃ、失礼しまぁす!
あの娘もあれ以来ずっとふさぎ込んでおったのが、この庭園を手伝うようになって表情が明るくなりましたな。
えぇ。……でもあの子の親は戻ってこない。
ヴァナ・ディールで罪なき血が流される限り、あの子のような悲劇はなくならない。
姫様……。
こんちゃ。
りぃ、よく来てくれました。あなたの持ってきてくれた夢幻花が花を咲かせたのでお礼をと思って……。
見たい~。
あなたはいつもドラギーユ王家に尽くしてくれています。でも私など花の種1つ手に入れることができない……。自分の力のなさに歯がゆくなります。
姫様が自ら敵地へ赴かれるなどとても無理な話でございます……。
前線で何かするよりも、後方でできること、王女にしかできないことが山盛りあるよね。
では、大戦中のタブナジアのような状況になった時はどうします?みすみす王都が滅ぼされるのを待つだけ?
そ、それは……。
あの時オークをはじめ獣人たちは、タブナジアに兵を集中させました。そして謎の爆発が、あの国を壊滅に導いた……。
謎の爆発?
その爆発で、半島だったタブナジアは大陸から引きちぎられ、孤島となりました……。
えっ、それってとんでもない規模なのでは。
一体獣人たちの目的は何なのでしょう……。あのような悲劇は二度と繰り返してはなりません。
でも、私には一体何ができるのでしょうか。りぃ、あなたの勇気がうらやましい……。
姫様、そのような話ばかりされては、せっかくの花も咲きしぶります。
そうだわ、肝心の花を見ていただかなくては。ごめんなさい。ではごゆっくりと、りぃ。
相当思い悩んでるなぁ。
兄のように武術に秀でてるわけでもないだろうから、それも一因だろうけども。
王妃様が生きてたら、自分の力を早くに見いだせたんだろうな…。
…って、結局、夢幻花はどこに植えたんだろうな?
全然分かんねぇよぉ。姫様ぁ。