ついにこの時がやってきた。このサンドリアを継ぐ、次期国王を選定する「継承の儀」が北サンドリアの大聖堂にて行われる。
おおーっ。
「成人の儀」のこともあり、式には関係者以外は参加できぬことになっている。しかし、貴公には大聖堂の周辺警備も兼ねて、式への参加が認められている。
やったぁ。
我々騎士団も式の際に大聖堂に入ることは許されておらぬ。貴公がどれぐらい王室から信頼されているかが分かる。まったくうらやましい限りだ。では、準備が整い次第、大聖堂に赴いてくれ。
ここだけの話、貴公はどちらが継承者にふさわしいと考えているのだ?
選択肢にクレーディ王女が無いやんけ。
この2人なら、トリオン王子かなぁ。ピエージェ王子が参謀につくことが条件だけど。
ふむ、確かに嫡子であられるし、大方の見方ではそうなのだが、ピエージェ様は思慮深いお方だ。これからはああいうお方が王になられるのもサンドリアのためかもしれぬ。
ふむ、確かに今まで勇猛な王様が多かったのかな?
まぁでも、本人も言ってたけど、一歩引いたところの方が存分に力を発揮できそうな気がするよね。
もっとも我々が噂したところで、聖剣がどちらを選ぶか次第なのだがな。くれぐれも今の話は内密にな。ハルヴァー様に大目玉をくらってしまうゆえ。
おっけぃ。
おおっ、さすがに警備が厳しいぞ!?
えーっと…。冒険者のりぃです。
こ、これでいいのか…?
証明書とか持ってないぞ!?
通してくれた!
よかったぁ。
これより次期国王選定式、「継承の儀」をとりおこなう。選定方法は、先だって発見されたランペール王の石版に刻まれた内容……
そういえばこれまではどういう方法で次の王様決めてたんだろう。
“ドラギーユの真の継承者をもって聖剣はその身を大気にさらさんその時、この世に光、満ちあふれん”
この言葉どおりに行われる。すなわち王子2人に、ここにあるランペール王の聖剣をさやより抜いていただく。聖剣を抜いたものこそが次期国王と認められるであろう。
継承者じゃないと抜けないとか…本当にそんなことあるのかなぁ。
陛下、異議はありませぬな。
ウム、異議はない。
では、まずトリオン王子に……。
ドキドキ。
どうなる、どうなる?
待てっ……!
誰だ!?現在、ここで何が行われているか知ってのことだろうな?
あーっ!
えっ、どうやってそこに現れたの!?
クリルラもラーアルも無反応で建物の奥に現れるとか、どういうこと!
2階にも警備兵いたよ?
もちろん、知っているとも。知っているから来たのさ。
コトールポワン?なぜお前が……。
いや、その声は……、貴様はロシュフォーニュ?
クレーディ王女、びくともしてない。ってことは、示し合わせてのことだね。
そう、俺だ。お前たちの茶番劇などどうだっていい。宣言どおり聖剣をいただきに来ただけだ。
お前は死んだはずではなかったのか!どういうことだ!?
フッ、残念ながらあの暗殺者は今頃海の底に沈んでいるだろう。一瞬の油断が不幸を招くのだよ……。
殺して入れ替わったのか…!
隠蔽された彼らの存在が俺にとっては幸いしたようで、この大聖堂にもたやすく入ることができた。
この姫の首が体から離れるのを見たくなければ、その剣をこちらに渡すがいい。さぁ、トリオン!
ウグッ……。
よし、分かった。これから3つ数える。私は剣を投げる。お前はクレーディを放せ。いいな!?
1、
2、
3!
姫、2度目のロシュフォーニュからの突き飛ばされー!!
賢明だな、トリオン。
はっ、お仕事しなければ。
お褒めいただいて光栄だ。しかし、今のお前は騎士団に包囲されている。果たしてここからどう脱出する?
この聖剣を手に入れるまでの労苦に比べれば脱出などたやすきことだ。
では、その剣が聖剣でなかったら貴様はどうする?
なに?まさか……!
貴様が来ることなぞ、お見通しだったよ。死体があがらなかったのだからな。貴様のことだ、必ずや生きているだろうと。もっとも兵に紛れているとまでは思わなかったがな。
クッ……!
王家の方が一枚上手だった…!
貴様とその古き闇、永遠に断ち切ってしんぜよう。この真の聖剣でな!
抜けるのか!?