おぉ、りぃか。ちょうどいい、今ドラギーユ城から冒険者を1人呼んでほしいとのお達しがあった。
今回は名指しではないのね。
なんでも、亡きローテ王妃様にまつわる仕事らしい。直接王室に関わるなど、一介の冒険者にはなかなかできない経験だ。もちろん、やってくれるな?
うん。
王妃様関係は気になること多いからね。
何か分かるかな。
うむ、その返事を期待していた。では、早速ハルヴァー様のもとへ行ってくれ。くれぐれも粗相のないようにな。
りぃか、これは心強い。今回のミッションだが、これは亡きローテ王妃様がお出しになったといっても間違いではない。くわしい話は王が直接される。
王妃様が出した?今??
うーん、謎すぎる。
王妃様ってどんな人だったの?
なに、ローテ王妃様の話を聞きたい、と?なるほど、仕事の前に知っておかねばならぬこともあろう。
そうだそうだ!
ローテ王妃様は、もともとはタブナジアの姫君であられた。大戦前にここドラギーユ家に嫁いだのだが、それはもう可憐で聡明な姫君で、国中の羨望の的であった。
タブナジアの!?
ははぁ、なるほど。ふむ…。
…えっ、ってことは、
王妃様の弟のロシュフォーニュはタブナジアの王子!!?
まじか!
どこかの貴族どころじゃなかった。
だからヴォーダラムとつるんでるのね。
ということはそのうちアタルフォーネも絡んでくる…?
かくいう私も…、コホン、それはまぁいい。
えっ、ちょっとアンタ…。
まさかのハルヴァーの淡い青春の1ページ情報が!
が、貴公も知っているように残念ながらタブナジアは大戦時に滅亡してしまった。そのことをローテ王妃様はお亡くなりになるまで心苦しく思われていたようだ。表には決して出さなかったがな。
そりゃあそうだよね。
自分の生まれ育った国が滅んだとか…。
もしタブナジアがいまも興隆を誇っていれば、領主アルテドール侯の息子、つまり王妃様の弟君が後を継がれていたことだろうに…。滅亡とともに行方不明になってしまったそうだ。
やっぱりロシュフォーニュが。
侯爵ってことは、聖名はIで、「ロシュフォーニュ・I・タブナジア」が名前?
滅亡以来行方不明ってことになって…ん?
かの侯爵が、すべてを思い出すまで、20年も待ったのだ。後は亡国の復興を目指すのみ。
って言ってた。
この侯爵ってのはロシュフォーニュの事で、何かしらの原因で20年も記憶を失ってて、思い出して今。ってことなのね。
ロシュフォーニュもタブナジアの復興を目的としているのかな?
…ちょっと待って。
アタルフォーネが死刑になっているとされているのが20年前。
実際はわざとに毒入りの食事を取って死んだふりをして逃げて、
奴はあの後、西の異国へ高飛びしていたが、近頃になって舞い戻ってきたらしいからな。
って。
まさか、ロシュフォーニュ=アタルフォーネ。とか。
有る?有るの!?
記憶をなくしてたのは、毒の後遺症とか。
いや、さすがに考えすぎかなぁ。
うーん、どうなる!?
戦とは常に人の運命を変えてしまう。二度とあのような争いを起こさないように、貴公も尽力してくれ。話が長くなったが、そろそろ王のご用意も整った頃だろう。謁見の間に入ってくれ。
はっ、そうだった。
長い話よりも思考の方が長くなって忘れてた!
謁見の間へ行きましょう。