……!
……りぃ……!
……起きろってば、りぃ!!!
う、うーん…。あと5…50分…。
……なんだよもう。こいつ、見事に行き倒れやがって……。
んん!?あれは、あの空飛ぶ船は!?
丁度ジュノ便が来たのかな。
畜生、あいつのせいでこんな妙な場所に来ちまったんだな!
そういえば、バハムートが怒って光ってここにいたよね。
どうなってるんだ。
まっちやがれーーーーー!!!
第3章
うたかたなる夢
3章だー!
うたかたというに丁度いい感じの空模様の時に飛ばされたわね…。
見事に置き去りにされてしまった。
追いかけるか…。
あ、見っけ。
おい!てめぇら!あのでかい船はてめぇらのもんか!
……え?
……はい?
初対面の人に酷い言葉遣い!
だから、あのでかい船がてめぇらのもんかってきいてんだ!さっき飛んでっただろ!
飛空艇のことですか?
ひくうてい、っつーのか。
はい、飛空艇はここバストゥークのシドさまが作られた偉大なる大発明で……
作ったのはシドっつう奴か!どこにいやがんだ、そいつは!
……え、ええ、シドさまでしたら大工房に……
だいこうぼう、だな!よくわかんねぇが、わかったぜ!
行ってしまった…。
色々と…なんてこったい。
まぁ、飛空艇乗り場の職員の人は日々いろんなお客に接してるから困った人の対応にも慣れてるんだろうな。
おつかれさまです…。
ふぅ、酷い目にあったぞ。……ん?なんだ?言葉づかいの悪い娘さんを知らんかと?
うん。
ああ、おぬしはあの娘さんの知り合いだというのか!いやぁ、まいったまいった。あの娘さんの剣幕ときたら……
先ほどの狼藉者は、留置所へ連行いたしました。
留置所!
コーネリアさまがお話相手になってくださっています。工房長、お怪我はありませんか?
コーネリアが相手…!?
意気投合して大変なことになりそうじゃないですか!?
ああ、大丈夫だ。いや、彼女はだいぶん混乱しているようだったから、少し休んでもらってから話をきこうと思ってね。別になにされたというわけでもないし、罰を与えたりするわけではないから安心したまえ。
そっか、よかった。
……それで、おぬしは彼女がなにを言わんとしていたか知っているかね?「飛空艇が、バハムートが、」と意味のわからんことを繰り返していたが?
それは…かくかくしかじか。
なに!?武装した飛空艇が!?黒衣の研究者が!?それはおそらく、ジュノの研究者達。その武装した飛空艇とやらは、20年前の大戦時に開発を進めながら、戦争終結と同時に封印された戦闘用の飛空艇だ。
そんなもの作ってたの。
早くに実用化できてたら、タブナジア滅びずにすんでたのかな。
わしは20年前の大戦時、技術者としてジュノに招待され、あの戦闘艇の開発に携わっていたからよく知っている。
なんと。ジュノで研究してたの。
そこで待っていたジュノの研究者たちは、みな黒衣を羽織っていた。彼らは決して表舞台に出ようとはしない。しかし、わしらが想像だにしない高度な技術を隠し持っているのだ。
特に彼らが用意した、「クリスタル推進機関」は特別でな。あれを動かすには、8つの属性のクリスタルを超えた、とてつもなく強いエネルギーが必要だった。
今の飛空艇は、この時に得た技術をもとにシドが改良して作ったやつなんだって。
そのエネルギーをどこから得たのか、得ているのか、はたまた質問は式を遡って、そのエネルギーとはいったいなにか?それは、今も解けない謎のひとつ。だからわしは、彼らの動きには注意してきたのだ。
デルクフの塔の地下で、アークから母なるクリスタルのエネルギー集めてるのって飛空艇に使うためなのかな。
そして近頃、彼らがホラの岩まわりで怪しい動きをしていると知り、その原因を探っていたのだが……とうとう、あの戦闘艇を繰り出したとは!しかし、いったいなぜタブナジアに?
やつら、バハムートを捕らえに来たんだ!
!?
シドおじさま。この方、プリッシュさんとおっしゃるんですって。お話できるくらいにまで落ち着いたようですから、連れてきましたわ。
おお、ありがとう、コーネリア。プリッシュさん、手荒な真似をして悪かったな。……それで、そのバハムートというのは……?
ああ、真龍のでっかい王様さ。突然タブナジアの近くに現れて、タブナジアのまわりを飛び回ってるんだ。
だから俺たち、そいつに会いに行ったら、その戦闘艇ってやつと鉢合わせしちまってよ。あいつらとやりあってるうちに、気がついたらここに飛ばされちまってたんだ。
まぁ、なんてこと。あなたジュノとやりあってしまったの!?
しょうがねぇだろ。あいつらから襲ってきたんだから。あいつら、バハムートをぶっ殺しにきやがったんだぜ?
そうそう。いつも向こうから手を出してくるのに、こっちを悪者にしてくるのよ。許せん。
バハムートが「世界の終わりに来る者」だとかなんとか、気になることをしゃべってたってのにさ。
世界の終わりに来る者……?
……ふぅむ。世界でなにかが起きているのはたしかだ。
少し前、デムの岩などにあるテレポイントが原因不明の衝撃で壊れた。それと同じ頃、ジュノの沖合いに巨大な竜が現れたという報告がある。ふたつの事件は繋がっているはずだ。
……そうか、やっぱり俺、バハムートにもう一度会いに行くためにタブナジアに戻らなきゃ。俺、ジュノに行ってみるぜ。
なに?ジュノに行ってどうするつもりだ?
ジュノの天晶堂ってとこに、古い知り合いがいる。あいつに頼めば、タブナジアへの船を出してくれるはずだ。
天晶堂に?
ああ、アルドかな。
じゃあな、世話かけたぜ!
えっ、そのまま飛び出すの!?
ちょっと、ジュノにどうやって行く気!?ジュノがどこだか、ジュノまでどれくらいあるか知っているの!?
行ってしまった…。
あの勢いで道行く人に「ジュノはどこだ」って聞きまくりながらたどり着くんだろうな。
真龍の王バハムート、そしてタブナジア、か。いやまったく、あのお嬢さんの勢いにも驚かされたが、その内容もまた驚くべきことばかりだったな。
そうだねぇ。
改めて考えると、とんでもないな。
しかも、彼女はジュノの天晶堂へ向かったようだ。本当にあそこに知り合いなどいるのかな?
私も行くかぁ。