りぃ君。待っていたぞ。テンゼン君やスカリー君から、ざっと話は聞いたが、あれは本当なのかね?
どれ。
プリッシュ君が「世界の終わりに来る者」だったという話も驚いたが……タブナジアのミルドリオン枢機卿が、永遠の命をもって、ジュノの要人に納まっていたと聞いた日には、ハンマーで殴られたかと思ったぞ。
ああ、うん。
りぃ君、おぬしからも詳しい話を聞かせてくれ。さぁ、皆を集めよう。
シドの所で立ち話じゃなくて立派なお部屋だわ。
……なるほど。そういうことでござったか。ミルドリオン枢機卿はセルテウスが霊獣バハムートとの間に交わした契約を果たすために、男神を降臨させようとしていたのでござるな……。
プリッシュの胸に魔晶石が埋まっていたのは、プリッシュの内なる闇が封印されたためだというのか?
私は、罪狩りのミスラながら過ちをおかしてしまった。魔晶石を前にしてこそ、冷静でいなければならぬというのに……!
プリッシュ君は、その重い定めを背負いながらも泣き言ひとつ言わなかった。そして、ウルミア君は幼い頃より、そんな彼女を見てきた。
ウルミア君にとっても、その真実は自分のことのように重いはずだ。あのふたりにとっても、これ以上に過酷な運命はあるまい……。
我らはどうすればいいのでござろう。
我輩の鳳凰丸は、霊獣バハムートを討つことだけはしてはならぬというでござる。
けれども、霊獣バハムートさえ討てば、真龍との戦いに勝機が生まれるぞ。私たちの一番の脅威は、霊獣バハムートの用いる空の魔法だ。
そうだな。すべてを知ったわしらの前に続く道は、3つある。
真龍率いる竜族との全面戦争の幕開けを待つか……
わしの作った飛空艇にて、ジュノと共に真龍どもへ急襲をかけるか……
5つ目の歌を聞かせ、プリッシュ君に男神を降臨させるか……
男神……人に争いの……呪いをかけた神……。
男神……倒せば……、人の……呪い……消えるはず……。
なるほど。
世界の終わりに来る者じゃなくて、大本の男神叩けばいいのか。
じゃあ、プリッシュにじゃなくてタブナジアの魔石の方に男神を降臨させてやっつければプリッシュも死なずにすんで万々歳なのでは?
……でも……人……ほんとに……勝つこと……できる……?
プリッシュ殿は、りぃ殿がその力を持つと言っていたそうでござる。それに加えて我輩の鳳凰丸があるでござる。
しかし……、正直、我輩も不安でござる。霊獣ディアボロスは、人は決して「世界の終わりに来る者」には勝てぬと言っていたでござる。鳳凰丸からも、答えは得られぬ……。
世界の終わりに来る者には勝てなくても、男神には勝てるんじゃない?
……確かに、わしらは恐ろしいことをしようとしている。プリッシュ君が戻ってきてくれれば、わしらがどうすべきなのか、その答えを得られるのだろうか。
りぃ君、テンゼン君、罪狩りのミスラ君。君らは先に、タブナジアへ向かってくれ。プリッシュ君が戻り次第、わしらも飛空艇にてタブナジアへ向かおう。
タブナジアへ?
タブナジアには、ギルガメッシュの使いがやってきているはずなのだ。
高度を保つための最後のパーツは、わけあってバストゥークには持ち込めない代物でな。わしらが追いつくのをタブナジアの港で待っていてくれ。
inタブナジア
シド殿!お待ちもうしていたでござる!
ウルミア君とルーヴランス君を連れてきたぞ。しかし、プリッシュ君はダメだった。大変なことになってしまった。
そ、それはどういうことでござる!?
詳しくは、彼らに聞いてくれ。わしは、ギルガメッシュの使いからもらわねばならんものがある。
プリッシュは……、見つかりませんでした……。
歌を覚えてきてくれって言った後、走ってどこへ行ったんだろう。
プリッシュは……、どうやら、ジュノ戦闘艇隊に隠れて乗り込んでいってしまったようなんです。
なんと!?
プリッシュ殿は、またなぜ、ウルミア殿を待ってはいられなかったのでござろう!?まさか、ひとりで霊獣バハムートと戦う心積もりではあるまいな!?
ありえそうで否定できない。
……きっとプリッシュは、私が追いかけてくるって、信じているのでしょう。
ああ、そうかも。
プリッシュは、人の心が読める。私の心も読んでいるはず……。けれども、心が読めるのなら、なぜ、私にこんな悲しい選択をさせるのでしょう。
信じるって、信じられるって、こんなに悲しいことなんて……。
……人……言葉……通じても……、悲しいことある……。心……通じても……、悲しいことある……。
それは……世界が……悲しさに……満ちてるとき……。世界そのもの……変えないと……だめ……。
……。
深い…。
……。そうですね。私たちに残された道は、もう世界を変えるしかないのかもしれません。
1万年の時をかけ、多くの人々の生死を経て、この世界が生まれた。男神の呪いに縛られた世界……。プリッシュも、その世界を変えるために行ったのね……。
みな、大丈夫か!?最新型飛空艇も完成したし、出発の準備ができたぞ!
早いな!?
わしは、これからギルガメッシュの船に乗って帰り、各国にこの現状を伝えるつもりだ。おぬしたちが霊獣バハムートを止めることができても、配下の竜たちの暴走など、予想もつかぬことがおきるかもしれんからな。
シドさん……。いろいろとご協力、ありがとうございました。
……いやいや。わしももうちょっと若ければ一緒に行くがな。ギルガメッシュに先に釘を刺されちまった。バストゥークを守るために残れとな。
おぬしたちも自分の国を守るために行くのだろう。そしてそれは、命がけの旅となろう。しかし、おぬしたちならできると思うぞ!
なぜなら、わしの「プリティラブリー戦艦シド号」がついているのだからな!ワッハッハッハ!
プリティラブリー!
操縦のことでしたら私にお任せください。
うむ。では、任せたぞ。若人たちよ。……クリスタルの戦士たちよ。
クリスタルの戦士たちだったの?
決まった…。って感じで行ってしまった。
さぁ、行きましょう!プリッシュの元へ、バハムートの元へ!
もうプリッシュに会うことはできないかもしれないと、ウルミアから聞いた。
そうか、そうかもしれない…。
プリッシュは自らの命を投げ出し世界を救うために、真龍のもとへ旅立ったのだと。
……。無事に帰ってきてくれ。もちろん、プリッシュもおまえも皆そろってな。
うん。