ふたつの道 – ルーヴランスという者

白タルの散歩道

ヒナリー なんですって?ルーヴランスに会ったのですか?あの方はお元気そうでいらっしゃいました?
りぃ うん。とっても。

ヒナリー ……そうですか。ずいぶんと姿を見せないので心配しておりました。ええ、もしもその身に何かあるようでしたら、ミスタル伯爵夫人に申し訳がたたなくて……。

伯爵夫人って言ってるから、おばあちゃんかな。

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ヒナリー え?30年前、北の地に送られた調査隊のことを?
りぃ 何か知ってる?

ヒナリー ええ、覚えておりますわ。あのころ私は、今はダボイと呼ばれているラヴォール村の屋敷に住んでおりました。ラヴォールの丘の上には修道院がありまして、その関係で前の教皇ムシャヴァットさまをよくお迎えしておりましたの。

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ヒナリー 教皇さまはたしか、「共同調査隊は、バストゥークから得た情報を確かめるために組むことになった」とおっしゃっておりました。なんでも当時のバストゥークは、死せる北方の大地に大いなる力が眠っていると主張していたとか。

シドが発明した機器で感知した。とかなのかしら。

ヒナリー もちろんムシャヴァット教皇さまは、バストゥークの言うことに半信半疑でいらっしゃいましたわ。

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ヒナリー ですが、主人が「もしやそれは楽園の扉かもしれぬ」と申しまして……
ウルミア カッファル伯爵夫人さま!やはりサンドリア大聖堂は、楽園の扉を見つけたのですか!?

ヒナリー あなたは!?

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~ かくかくしかじかタイム ~

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ヒナリー 驚きましたわ。タブナジアからの小さなお客さまが、こんなに大きく美しくなられて。しかも、そちらの冒険者の方ともお知りあいでしたのね。
ウルミア 失礼致しました。カッファル伯爵夫人さま。自制心を失ってしまって、ご挨拶もせずに……。

ウルミアは昔サンドリアに来たことがあったのね。

ヒナリー いいえ。いいのですよ。今日は嬉しい知らせばかり。20年もの昔にお迎えしたタブナジアからの小さなお客さまを、こうしてもう一度お迎えすることができるなんて。
ウルミア その節は、私のような者にまで、心のこもったおもてなしをいただきましてありがとうございました。

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ヒナリー いいえ、あなたがたは大切なお客様でしたもの。タブナジアのミルドリオン枢機卿さまがおっしゃっていましたわ。今日連れてきたのは、世界に名だたる小さな吟遊詩人だと。

小さなころから歌姫だったのか。

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ヒナリー ふふふ。あなた、本当にまだ小さくて、世界を見たいからついてきたとしっかりしたことをおっしゃいましたわね。
ウルミア これはまた……。お恥ずかしい限りです。

ヒナリー そうですわ、あのとき、一緒にいらしたもうひとりのお嬢さんは?
ウルミア ……。

プリッシュかな。

ん?ウルミアが昔来たのは20年以上前だろうから、やっぱりプリッシュは見た目通りの年齢じゃないのね。

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ヒナリー いいえ、ごめんなさいね。私ったら、思慮のないことを。
ウルミア いえ、お気になさらずに。彼女も元気です。あの戦火をともに生き延びることができました。

ヒナリー まぁ、それは本当に良かったですわ。暁の女神さまのご加護がありましたのね。あの頃は良かったわ。主人も、ムシャヴァット教皇さまもミルドリオン枢機卿さまも健在で……。

カッファル伯爵とムシャヴァット教皇は故人。
ミルドリオン枢機卿は20年前戦火のタブナジアで行方不明。か。

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ヒナリー お三方が集まると必ず、楽園の扉についての議論が夜通し続きましたわ。
ウルミア カッファル伯爵夫人さま、今日はその「楽園の扉」について、お話をお聞かせ願えませんでしょうか?私がここを訪れましたのは、サンドリア大聖堂にてその話をきいたからなのです。

ヒナリー ……。
ウルミア たくさんの観客を前に、もったいぶって繰り広げられていた説話は、私の詩歌よりも酷い出来でした。

ズバッと言ったああああ!!

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ウルミア 前の教皇さまが、死の床にて宣託を受けたという話も聞きましたが、街の人々より話を聞けば、どうにも納得がいかないことばかり……。あれはいったい、どういうことなのですか?

やっぱり都合のいいように解釈してるだけだったのね。

ヒナリー ウルミアさん。楽園というのは、死も怖れもないところだそうですわ。

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ヒナリー ラヴォール村がオークに襲われ、残酷な運命の手によって主人を失ったとき、残された私を救ってくださったのは、ムシャヴァット教皇さま、そしてその信仰でしたわ。

ラヴォール村襲撃の時にカッファル伯爵亡くなったのか。

ヒナリー あなたも人の心を歌う身ならば、おわかりでしょう?真実なんて大したことではないのです。真実は皆を救えませんわ。
ウルミア カッファル伯爵夫人さま、それで自分を救えるのなら、私もそれこそ真実だと思います。

ふ、深い。

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ウルミア しかし、ミルドリオン枢機卿さまはおっしゃいました。他の人を救うためには、真実を知る勇気も必要だと。
ヒナリー ミルドリオン枢機卿さまが……。

ヒナリー わかりました。気になっていることならございます。ムシャヴァット教皇さまが亡くなる前、私はお見舞いに参りました。

おっ、新情報?

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ヒナリー その折に、ムシャヴァット教皇さまがおっしゃった言葉は今でも耳から離れません。「真実を手放さざるをえなかった」、と。
ウルミア 真実を……手放さざるを、えなかった?

どえらい証言が出てきたぞ!?

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ヒナリー そうおっしゃる表情は、まるで死人のようでございました。
ウルミア ……。

ヒナリー あのとき、ムシャヴァット教皇さまがおっしゃった「真実」というものが、楽園の扉に関するものなのかどうかはわかりかねます。ただ、あの後、ミルドリオン枢機卿さまが爵位をお返しし、サンドリアから姿をお消しになったことを考えますと、関係は深いのかもしれません。

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ウルミア ミルドリオン枢機卿さまが爵位をお返しになられた?それはいつのことです?
ヒナリー もちろん、20年前のことですわ。タブナジアが獣人軍に急襲を受けた数日後のことだったと記憶しております。そのご様子ですと、ご存じありませんでしたのね?

タブナジアが襲撃された数日後に爵位を返してサンドリアからいなくなった?
つまり、街の人を逃がした後サンドリアまでたどり着いていた…生きとったんかい!

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ウルミア ええ。ミルドリオン枢機卿さまは、あの戦火で亡くなったものとばかり思っておりました。最後にお姿を見たのは、放たれた火に沈むタブナジアの市街地でした。
ヒナリー ……そうでしたの。ミルドリオン枢機卿さまにも、女神さまの加護がありましたのね。

ウルミア ええ。そのようです。それで、ミルドリオン枢機卿さまはどこへ向かわれたのでしょう?
ヒナリー そこまではわかりません。ただ、ミルドリオン枢機卿さまのご捜索を密命として受けた騎士がいるそうですわ。

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ヒナリー その騎士の名は、ルーヴランス。没落したミスタル伯爵家の末裔、元王立騎士団の騎士になります。

ルーヴランスがミルドリオン枢機卿探してるの!?

突然騎士団を辞めて汚名をそそぐ旅に出たっていうのは、この理由だったのか!
見つけ出したら爵位を返してやるって偉い人から言われたのかな。

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ウルミア 「真実を手放さざるをえなかった」……。それは、楽園の扉に関する真実なのでしょうか。それとも、あなたがお探しの調査隊の真実だったのでしょうか。

あー、調査隊の方の可能性もあるのか。

ウルミア それに、ミルドリオン枢機卿さまがご存命だったとは驚きです。ご存命ならばぜひ、お会いして楽園の扉のお話をお伝えしなくては。

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ウルミア あの方ならば、皆を良きほうへと導いてくださるはず……。

ルーヴランスはやく見つけてくれないかなぁ。