ああ、りぃさん。あれから気になってミスタル家のことを調べてみたのですが……
おっ、なになに?
気になる。
お久しぶりです。あなたが高僧シャザルヴィージュ様でしたのね。先日は、名乗りもせずに失礼しました。
私は、ウルミアと申します。カッファル伯爵夫人よりお心添えをいただきまして参りました。
ああっ、話が中断してしまった。
……やはり、あなたがそうでしたか。楽園について、男神の呪いについて興味をお持ちでしたのも、それを知ればすべて納得がいきます。
ん?場所移動した。
ウルミア様、そして、りぃ様。この場所ならば、人に聞かれる心配はございません。互いに胸底を明かし、有り体に語り合いましょう。
聞かれたらまずいことを今から話す。と…。
タブナジア大聖堂の聖歌隊が完成を目指していた5つの歌のことを。
あなたは、知っているのですか?……あの歌のことを……?
大戦前、あなたはミルドリオン枢機卿様とそのご友人と共にカッファル伯爵邸を訪問なさいましたでしょう?私もまたムシャヴァット枢機卿様にご同行を許され、その場にいたのでございます。
なるほど。
おそらくその頃のあなたは、あの集いがどのようなものか、ご存知なかったことでしょう。あれは、サンドリア大聖堂とタブナジア大聖堂の解決しがたい反目関係を改善させるがためのもの。
特に、あの頃のタブナジア大聖堂は、内乱の頃より続く徹底した秘密主義のために、良からぬ噂が絶えませんでした。
どうしてそんな集いに子どものウルミアを連れてきたのか?
そこでムシャヴァット枢機卿様は、その噂の真偽を確かめるために、使いを出したのでございます。
しかし、ミルドリオン枢機卿様がお連れになられたのは、年端もいかぬふたりの少女でございました。
サンドリアの人はびっくりしただろうな。
そして、そのおひとり……あなたは、ある歌を歌われた……。
ええ、けれども私、まだうまく歌えませんでした。私の歌を聞いて、ムシャヴァット枢機卿様はお怒りになりました。
いいえ、そうではございません。あのときムシャヴァット枢機卿様が声を荒げたは、あなたが歌ったあの歌の完成を恐れるがため……あの歌がもつ恐ろしい力を、止めようとしたがためなのです。
恐ろしい力!?
これは、ご存知でないままのほうがよいことなのかもしれません。
すべての始まりは、今より約500年前……。私たちエルヴァーンにとって屈辱の時代と呼ばれる頃にまで遡ります。
その頃、ここクォン大陸は、ミンダルシア大陸より侵攻したウィンダス連邦の軍によって支配されておりました。その頃の私たちエルヴァーンには、まだ国を作る意志はなく、いくつかの部族がそれぞれの森にて暮らしていたそうでございます。
魔法の時代か。
しかしもちろん、エルヴァーンの誇り高き血には変わりなく、剣に勝利を誓って立ち上がった勇士がランフォル・ドラギーユ様でした。
後にタブナジア公となられる勇将アルフォロン・タブナジア様とともに、2つの秘宝を使いて、興国を成し遂げたのでございます。
2つの秘宝。
なんだ。
しかし、その戦いが終わりしとき、ふたつの秘宝はどちらも失われておりました。そして、その代わりに2枚の謎めいた石版が、サンドリア大聖堂とタブナジア大聖堂に残されていたのです。
教会のコレ、その時の石板だったのか。
秘宝と入れ替わりでこれがあった?
こんなでかいの、誰が。
コレ、よく見ると、一番下の人っぽい形のが玉掲げてて、その上に小さい人っぽいのが乗ってて、その上から下までわさわさなってるのが羽?
後後ろに11本の何か。
もしかしてプロマシアとアルタナだったりする?あと楽園の扉とか。
私たちは永い間、その謎を解くべく努め、とうとうランペール王の時代に秘宝のひとつ「聖なる剣」を取り戻すことができました。
なるほど、ひとつは聖剣か。
しかし、タブナジア大聖堂はどうしても、もう1枚の石版の内容を教えようとはしませんでした。そこで、サンドリア大聖堂が内偵に探らせました結果、そちらにはある「歌」が書かれていることがわかったのでございます。
そう、それこそがあの歌……あなたが歌われた「神の歌」……。「すべてを歌い終わるとき神が降臨する」歌だったのでございます。
神を降臨させる、歌!?まさかそんな!?
まさか神降ろしの歌とは…。
その歌詞は読みとかれども、その旋律を知るものがなく、タブナジア大聖堂は永い間、その歌い手を探していたようでございました。
けれどもついにその始まりを歌うあなたが現れ、その力を示す足がかりをお作りになった。
でも、私は……!あの歌は、プリッシュが忌むべき子ではないと、そう証明するための歌だと言われて……!
どうしてウルミアがメロディ知ってたんだろう。
作ってみたのが正解だったとか?そんなことある?
存じております。ですから私は、あなたさまをここへ、お呼びしたのでございます。
あんたのこと信頼がおけないと思ってたけど、いい人だったのか。すまない。
そちらの冒険者さまよりサンドリア大聖堂の命を受け、ミルドリオン枢機卿様を捜し求める騎士がいるという話も聞きました。その騎士のことを調べるに、どうやらその者は「忌むべき男神」のことを調査するため、北方を旅していたということ。
!
どっちのルーヴランスだ。
本物の方かなぁ。
北へ行ってたのはお父さんの形見を掘り出すためだけじゃなかったんだ。
その目的はわかりませんが、ミルドリオン枢機卿様もまた、男神のことを追い求めていたそうでございます。
ミルドリオン枢機卿様が!?
お気をつけになってください。あの歌の意味、そしてあの歌を知るあなたの価値。ミルドリオン枢機卿様があなたがたが生きているということを知ったら……。
……!?
ウルミア…すべての陣営が喉から手が出るほど欲しがる超重要人物じゃないか。
ウルミアさん、どうかあなたのご友人を連れてタブナジアへお戻りください。
先の騎士の話を調べるに、ボスディン氷河にいる魔道士たちが教えてくれたことによれば……あなたのご友人はおそらくウィンダス連邦「鼻の院」にいらっしゃいます。
ウィンダス連邦に!?ありがとうございます、シャザルヴィージュ様!私、行ってみます!
あっ!?
今一瞬映って逃げたのは、スカリーX。
立ち聞きしてたな!