シド殿!ウルミア殿はお戻りか!?それに……プリッシュ殿は……!?
!?どうした!?何か重大なことがあったようだな?
霊獣たちが、そのようなことを言ったというのか?にわかには信じられぬが……
そりゃそうだ。
しかし、ナグモラーダの言うことには、思い当たる節が幾つかある。
各地の岩から伸びているライン状のクリスタルの反応……。かねてよりわしも、そのラインについて研究を行っていた。古代人の生き残りたちが、あのラインを使ってクリスタルの力をひとつにしようなどと、大それたことを考えているとは思わなかったがな。
そしてそのとき、「楽園の扉」が開くという……。
ふぅむ。神がかった話だが、その論、ありえんことではない。なんといってもジュノには、黒衣の研究者たちがいる。あれだけの技術をもつ奴らが言うことだ。
ただ、奴らの神都アル・タユとやらは、その試みが失敗して、消滅の憂き目にあったわけだろう?楽園というものもよくわからぬというのに、古代人のもくろみを、このまま捨て置くわけにはいかぬが……。
確かにそうでござるが、それよりもシド殿。我らの憂い事は、「世界の終わりに来る者」でござる。
我輩、「世界の終わりに来る者」は、かの少年セルテウスだと思っていたでござる。しかし霊獣フェンリルが言うには……
……。タブナジアに「世界の終わりに来る者」が生まれ落ちるという話か……。
おぬしはそれがプリッシュ君のことを指すと言いたいのだな?
そうとしか、ねぇ。
おぬしの話を聞くに、タブナジアでの彼女の扱い、尋常なものではなかったようだからな。
そうでござる。しかしそこは、鳳凰丸に尋ねても、わからぬと繰り返すのみ。
フェニックス、分かんないの?
ああ、カー君が「30年くらい前に誕生を感じたけど数年したら消えてしまった」って言ってたから、今は分からないんだな。
ただ、もしもプリッシュ殿がそれだというのならば、非情なれど、我輩はプリッシュ殿を……
待て待て!まだ、プリッシュ君のことを指すとは決まったわけではないぞ!
彼女は確かに粗暴で粗野だが、それは自分に正直ゆえのことだとわしは思う。おぬしも、まさかあの子が恐ろしい男神の意志を継ぐようなものとは思わんだろ?なぁ?
しかし……霊獣フェンリルが見せた、古のやりとり、霊獣のたばかりだとは思えぬでござる。
楽園への扉が開かぬことを願う彼らにとって、それを願う「世界の終わりに来る者」は、まごうことなく彼らの敵。もしかしたら、プリッシュ殿は、目覚めていないだけなのかもしれぬでござる。その身に宿る、男神の意志に……。
……。まぁ、このことはプリッシュ君を見つけ出してからの話にしよう。
どちらにしても、わしらはやれることをやるしかない。どんなに悲劇的な状況となったとしてもな。
そうだねぇ。
それに、そうそう、テンゼン君には、新しい情報もある。セルテウスというあの少年を、幸運にもルーヴランス君が見つけたのだ。
北の海の底にあるという5つ目の母なるクリスタルへの道も、開かれるかもしれん。
な、なんと!?
詳しいことは、直接、ルーヴランス君から聞いた方がよかろう。ライバート、ルーヴランス君の居場所を教えてやってくれ。
テンゼンと偽ヴランス合流するのか。
あとはウルミアだね。
りぃ君、正直言って、わしらはとんでもないことに首を突っ込んでいるようだ。
そうだよぉ。
今までは、ただ自分の知識欲やら正義感やらを満足させるために進んできたが……、ここからは用心せよと、長年の勘が囁いている。
テオクレダヨー。
特に、おぬしたちの言う古代人の生き残り。奴らが、ジュノの底まで根を下ろしているのならば、彼らを止めるのは厄介なことだ。真龍や、獣人たちの脅威をよそに、ジュノとの戦争などゾッとせん。
各々目的がバラバラだから、そこをうまく利用してなんとかしないとだよなぁ。
でも、どうなるのが全員にとって一番いい方法なんだろう。
しかも実はな、わしにはもうひとつ、気がかりなことがある。
うん?
テンゼン君の来た「東の国」。海賊たちの話を聞くにも、遠く閉ざされた国ゆえ謎ばかり。信用してもよいものか……。
国はまだ疑っておいた方がいいだろうけど、テンゼンは信じていいと思うよ。
嫌な雲ゆきだな。誰が真実を語り、誰が真実の友かわからんぞ。下手に動けば、転覆させられそうだ。おぬしも自分の国を守りたいのならば、人に流されず、自分の目で見、自分の頭で考えねばならんぞ。
うん。
……さて、と。わしの説教話はここまでだ。それに、自分で考えろと言ったばかりでなんなのだが、わしは一刻も早く、プリッシュ君を探す必要があるように思う。
そうだね。
ウルミア君は、サンドリアを目指すと言っていた。おぬしもサンドリアへ行ってみてくれ。
もしもプリッシュ君が本当に忌むべき子だというのならば、おそらくウルミア君がカギになるはず。取り返しがつかなくなる前に、考える材料を集めてくれ。頼んだぞ。