北の地に調査に向かったある冒険者が、何者かに襲われたらしいのだ。それが話を聞くと、その風貌は明らかに暗黒騎士ザイドだった、と言うのだ。
ええっ!?
ザイドとおぼしき人物は、逃げ帰る冒険者に、手紙を渡したらしい。その手紙の内容が何やら問題らしいのだが……。
手紙を渡すだけでいいのに、わざわざ襲ったの?なんで??
ひとまず大統領執務室に向かうように、とのことだ。
おお、君か。とても信じられない話だが、どうやら本当らしいのだ……。
さっぱり分からん。
あの暗黒騎士ザイドが北の地の調査に訪れた冒険者を襲った。そして、隊長に手紙を持っていけ、と……。
その手紙の内容が信じられないものだったのだ。そのために今……。いや、まずは入ってくれ。話はそれからだ……。
どういうことですか、プレジデント!
おおっ!?
プレジデントに対して激怒してる!?
30年前の事件の真相を私に隠していた理由をお聞かせ願いたい!
いや、フォルカー……別に隠していたわけでは……。
あぁ…そのことを手紙に書いてたのか。
工房長も……ご存知だった……?
う、うむ……まあ、なんというか、その……。
……君も……か?
う、うん…。
というか私が魔晶石で過去を見て話し持ってきたよね…。
30年前の事件の真相を知らなかったのは、その呪われた血に連なる私だけだったと!?
いや、アイアンイーターにもルシウスにも言ってないよね?
知ってるのはプレジデントとシド、そして私だけだったのでは?
無様だな、ラオグリムよ!
ウルリッヒ、貴様……!
前からおまえは、気にくわなかったんだよ!
自分が何をしているのか、分かっているのか?
黙れ!
……コーネリア!?
う、ああ……。
決して、あの叔父に影響されて銃士隊に入った訳ではない……。しかし、昇進するたびに叔父の力だと陰口をたたかれ……。
そっか、ウルリッヒはミスリル銃士隊の隊長だったね。
ミスリル銃士となり、その隊長にもなったが、待っていたのはこの真実か!?そしてその真実も隠されるような薄っぺらい信頼か!?
……だからどうした?
……何?
私も工房長もおまえに明かさなかったのは、こうなることが目に見えていたからだ。
だねぇ…。
信頼とか関係なく、知らないままでも問題ない事だし。
だって、プレジデント、シド、私の3人以外世界の誰も知らない事なんだから。
あ、あとザイドもか。
ザイドはどうやって知ったんだろう…って思ったけど、闇の王が言ってたね。
「俺は友に裏切られ、殺された」
「獣人との和平の道を訴えていた俺が、ウルリッヒはジャマだったのだ。」
「コーネリアも、俺をかばって、ヤツらに…。」
って。
実際、その通りだろう。それとも、一緒にその呪われた運命を嘆いてほしいのか?
おまえには関係ないとなぐさめてほしいのか?それでおまえの心は安まるのか?どうやら、貴様を買いかぶっていたようだ、フォルカー。
カルスト!口が過ぎるぞ!
今の貴様など役に立たぬ。さがれ。当分の間アイアンイーターに隊長代理をまかせる。
プレジデント!
貴様が役立たずのままならせめてNo.2のザイドとやらをここに連れてこい。よっぽどおまえより役に立つだろうな。
……わかった。プレジデントの意志に従おう……。
隊長……っ!
まぁ、今はこれが良いだろうね…。
ウルリッヒと同じ隊長の座について悶々としてるより、一旦離れさせて、目的を持たせて、解決に向けて動かせた方が。
プレジデント、やってることは良いと思うんだけどなぁ。
いつもいつも口と態度が悪いんだよなぁ。
わしの……せいだ。いつか話そうと思いながらここまで……。
そこまでの男だったということです。おかげで冒険者に説明する手間も省けました。
プレジデント、シドには敬語なんだ。
おそらく、ザイドの意図はフォルカーを呼び出すことだろう……。そのために、冒険者を追い払い、真実を告げる手紙を持たせた。しかしフォルカーのあの様子では、果たしてザイドと向き合う決心もつくかどうか……。
フォルカーが迷いを断ち切るのを待ってる訳にはいかぬ。冒険者を襲ったザイドをひったててこい。
簀巻きにしちゃって良いでしょうかね?
罪人として扱うか、フォルカーの後釜に据えるかは私が決めよう……。
プレジデント!それではあんまりです!隊長も、ザイドもこの国のために……。
そうだぞ、カルスト!おまえはそんな男ではないはずだ。一時の感情にまかせてそのような……。
感情にまかせてる…かなぁ?
フォルカーがザイドと会う確信が持てないし、いつになるか分からないのを待ってられないから、ザイドの方をこっちに連れてきてしまえ。って事でしょ?
これは……プレジデントの命令だ。二度は言わぬ。
奴には人望がある。銃士ではこの調査は務まらぬ。有能な冒険者を彼の地に派遣しよう。闇の王を倒した冒険者なら……できるはずだ。
……。
行ってくるのだ……。再び決戦の地、ズヴァール城へ。
うん。