ヘェー!さっそく、幽霊船の情報を得たって♪しかも、アフマウさまじゃなく、いの一番にあたいに報告に来るなんて、あんたも傭兵にとって必要なことがわかってきたようだネェ。
阿修羅に逆らうと怖いですからね…。
よくやったっ!
褒められた!
で、どういった情報を得られたんだい?事細かにあたいに話してごらん。ただちにそれを、アフマウさまたちにお伝えして、「さすがはサラヒム・センチネル社!」な~んてお褒めの言葉をいただかないとだネェ♪
かくかくしかじか。
……なんだって?アズーフ島で海洋騎士の亡霊に面会し……
幽霊船の正体は、噂どおり、亡国イフラマドの「ブラックコフィン号」らしいことがわかったって?
うん。
おぉ、やだやだ!幽霊船の正体を暴けって言われたときはあんまし考えないようにしてたけど……幽霊船に幽霊はつきもの……。
おお、やだやだやだやだ!アシュタリフ号にオバケが集まって、皇国に復讐を企ててるだなんて想像したくもないネェ!
ナジャ社長、おばけ苦手だものね。
ダンッ!
……って、りぃ!ふざけるのもいい加減におしっ!!そんなタワゴト、どこの誰サマが信じてくれるっていうんだい!?
えーっ!?
ナジャ社長、結構ノリツッコミするよね!?
ダンッ!
論拠のない亡霊の妄言を報告するために、のこのこ皇宮に出向くだなんて、あたいは死んでもご免だよっ!
これ拾ったんだよ。
おや?なんだい、それは?
騎士の亡霊が現れたお墓で拾った金貨……。ふーん……かなり純度の高い金を使ってる贅沢な貨幣だネェ。今時分、こんなの使ってる国なんて聞いたことも……
!!!!!
どうしたの!?
とげとげを落とすほど驚くなんて!
この王冠をかぶったイルカの紋章は……。
「イフラマド王国」のものじゃないか……。
200年近くも昔に滅ぼされた王国の、しかも、ご禁制になっている貨幣が、こんなに綺麗なまま見つかるなんて……。
あそこで野ざらしになってたわけじゃないってことね。
ん?そーいえば、あんたは、この辺りの歴史に疎くても仕方ないんだったネェ?
うん。まだ全然。
あたいだってそうだったんだ。そんなことは、自分で調べてなんとかしなっ!って言ってやりたいとこだけど……とびきりの仕事に関わることだから特別に、あたいが教えてあげよう。
ん?
ナジャ社長もアトルガン出身ではないの?
むかしむかし……、そう、200年は経つってくらい大昔の話さ。このエラジア大陸には、交易で得た莫大な富と、精強な海軍をもった小さな海運国家があったんだよ。
王国の名はイフラマド。その頃、すでに大国だった隣国のアトルガンと対等に渡りあえるほど、意気盛んな小国だったらしい。
へぇ。すごい。
だけど今……イフラマド王国は影もかたちもないだろう?
うん。
皇国に滅ぼされたんだよ。
えっ…。
だから海洋騎士ジャザラートはあんなに恨んでたのね。
このアルザビって街はネェ、元々はアトルガン皇国の都じゃない。……おわかりかい?
まさか、イフラマド王国の首都だった…。
大国は小国を滅ぼしのみこんで、国を広げてくのさ。
さっ、社長直々のありがたい歴史講座はここまでだよ。
ありがと。
いいかい?りぃ。我が社の傭兵は皇国のために働くことが第一の条件!敗戦国の貨幣なんて見せびらかしてたら、不滅隊の方々にしょっぴかれても弁解のしようがない……。
そうなのかな。
それに、イフラマド由来の品を引き取ってくれる店もないだろうし、溶かしてるところを見つかってもやっかいだ……。
確かに。
面倒なもの貰っちゃったのね。
こんな物騒なもんは、とっとと暗碧海にでも捨ててきなっ!!
ナジャ・サラヒムはイフラマド金貨を投げつけた!
えーっ。
でも王子に渡してって頼まれちゃったんだよねぇ。
ダンッ!
……そもそも、あたいは幽霊船について調べろって言ったハズだけど……。
ダンッ!
あんた、いったいどこを捜し回ってるんだい?まさかネェ?船がどういう乗り物か、わからないなんてのたまったりしないだろうネェ?
ほら、船は、どこを走る乗り物なのか、試しに言ってごらん?
違う事言ったらまた怒られそうだから素直に答えておこう…。
海。
……フーン。そうかい。ちゃんと知ってるのに、陸を調べてたなんてずいぶんとトンマなお話だネェ。
幽霊船じゃなくていつのまにか幽霊捜しになってたわ。
ダンッ!
仕事をなめてんじゃないよっ!
ウゥ……あんたと話してたら頭痛がしてきたよ……。これだから冒険者上がりの傭兵は……
確かに最初から傭兵の人に比べてちょっと自由なのかもしれない?
あぁ、そういえば……あんたの他にも、幽霊船を捜しに行かせた傭兵がいるんだったよ。そいつは「『ドゥブッカ島の西』の方から禍々しき妖気を感じるから、そっちを重点的に調べる」とかなんとか言ってたっけ……。
ゲッショーかしら。
その物騒なもんを捨てに行くついでに、足を伸ばして、あいつに協力するのも手かもしれないネェ。
さぁ、思い立ったが吉日だよ。さっさと出発!とっとと仕事!ってね。
はぁい。
今度、半端なもん掴まされてきたら、この「モーニングスター」であたいが朝までたっぷり可愛がってやるよっ!