……さて、御主にだけ折り入って話がござる。
どうしたの?
拙者、近頃はしばし皇都を離れ蛮地を巡っていたのでござるが……
おっと、此はあくまで物見遊山の土産話にござれば。くれぐれも社長殿には内密に頼み申すぞ。
うん。わかった。
さて、どの蛮地より語ろうか?
全部教えてくれるのかな。
マムークのこと。
其は過日のこと。
わじゃあむ樹林を散策していた折……運悪く、まむうじゃの哨戒部隊に捕まり、まむうくに連行されてしまったでござる。
あらま。
其処は、うっそうと茂る木々の奥に築かれた都。拙者の故国にも似た紅葉の美しき土地でござった。
もし、懐中を調べられ社の階級章でも見つかったときは命はあるまいと腹を括り、辞世の句を認めており申したが……
御白洲にて取り調べを行ったまむうじゃ四天王がひとり、賢哲王のもらあじゃ殿は、拙者の手足を見るや……
「古き鱗の友よ。汝は我らが同胞なり」と、拙者を解放したばかりか……なんと!自宅に招いてくださったのでござる。
鳥の手足のあれって鱗だったんだ。
そういえば考えたことなかったや。
腹を割って話してみればもらあじゃ殿は、拙者同様に国を憂えるまことにできた御仁にござった。
夜を徹して、さまざまなことを語り合ったのでござるが……中でも興味深かったのは魔笛についての見解でござった。
ほほう。魔笛。
もらあじゃ殿は、皇国の喧伝している魔笛の役割は偽りであり、おそらくは軍事的な利用法が別にあると睨んでいたのでござる。
それが確立せし時、恐ろしき災厄がまむうくにもたらされるは必定……故に単に魔笛のもたらす益のためならず、皇国の目的抑止のためにもまむうじゃは魔笛を手にせねばならぬ、と。その根拠についてまではさすがに言葉を濁らせられたが、まむうじゃの大義、拙者にも痛いほど伝わり申した。
星気の風に釣られてるわけじゃなくて、その先や裏まで考えてたのね。
のう、りぃ殿。魔笛とは……そして皇国のまことの目的とは何でござろう。我ら傭兵はこのまま皇国の走狗となっていて、果たしてよいのでござろうか?
多分、魔笛でオーディンか白き神を呼び寄せて使役するつもりなんだろうと思うけど…。
まだ予想であって確証はないから分かんないなぁ。
さて、どの蛮地より語ろうか?
ハルブーンのこと。
残念ながら拙者そこには、まだ行っておらぬでござる。
あら、そうなの?
されど、とろうるの都はるぶうんは、早急に訪れてみたき場所の一つではござる。りぃ殿。何故だか分かり申すか?
わかんない。
驚きめされるな。かの都の港にくだんの幽霊船あしゅたりふ号もとい、ぶらっくこふぃん号が出入りしているようなのでござる。
ハルブーンに!?
幽霊船と、とろうる。一見なんの縁もなき両者を結び付けているもの……その答え、かの地にあるに相違ござらぬ。
ふぅむ。
……ぬっ!?拙者が蛮族情勢に執着するは何故かと?
聞いてないけどそれはそう。
いやいや、拙者ども一傭兵とて之は捨て置けぬ事実にござるぞ。
なにしろ勇猛なとろうると幽霊船の物の怪どもが共闘し、一斉に陸と海より、あるざびに攻め寄せた暁には……いかに我ら傭兵や五蛇将が奮闘しようとも、護るは至難でござれば……のう?
まぁ、それはそうだけど、ゲッショーは東から何か目的をもって来たはずだものね。
何なのだろう。
さて、どの蛮地より語ろうか?
アラパゴのこと。
拙者、あの幽霊船の一件の後、今一度かの地へと赴いたでござる。
あら、そうなのね。
あの幽霊船あしゅたりふ号……何より、るざふという男が気になり申して……。されど、あいにく幽霊船にもるざふにも会うこと叶わなかったでござる。
残念。
りぃ殿。
うん?
あの海賊の物の怪ら、まことに数百年の時を経て黄泉より甦った者であるとすれば……やんごとなき大いなる意志が働いているのではござるまいか?
そうだと思う。
はっ、大いなる意志…。
まさか、オーディンとか白き神とかレベルの力が動いてる…?
彼らといい、かの地に出没する亡者の軍団といい……今尚、血みどろの小競り合い続く東方の戦線といい……此の国の周辺には常に、死が溢れているでござる。
そうだよねぇ。
首都までこんな戦地になって…。
拙者は知りたいのでござるよ。ただ、その理由を……。
ゲッショーがここに来た目的って、アトルガン皇国を倒すとかじゃなく、もしかしてこれが本音なのかも?
……さて、土産話も語り尽くしたでござる。
うん。ありがとう。
拙者、次は……
ぬ……殺気!
えっ?
!?
こっ、これはバースト!?
殺気を感じてから即放たれた古代魔法。
しかも効果時間がやたらと長い。
撃ったのは…!
ああっ!ゲッショー!!
!!
うおお!
消えたぁ!
これは忍びの技…!
??? : オーホホホホ!街のド真ん中でヤグードが茶をすすっていたように見えましたけれど……
あーっ!やっぱり!!!
わたくしの気のせいでしたようね?
ウィンダスからしたらヤグードと街中でお茶してるとかとんでもない出来事なわけで、シャントット様が問答無用で攻撃するのも理解できる…。
ここは一旦隠れた方が良さそうだっ。