りぃ!噂は、もう耳にしてるね!?
噂?知らない。
なぁあんだって!?まだ知らないっていうのかいっ!フフン♪まったくもう、しようがないネェ。
なんだかご機嫌?
心の準備は……OKかい?あたいが教えたげるから耳かっぽじって、よぉ~くお聞き!
なんとっ!あのコルセアの一派があろうことか、聖皇さまのお命を狙ったって話さ!!
コルセアの一派?
もしかして、クルタダたちのこと?
とんだ濡れ衣だ!
いやはやいやはや……そんな大胆不敵なことをするヤツが、この国にいようとは恐れいったネェ!
しかも、ウソかマコトかあの警備厳重、堅牢無比な白門を突破してさらには皇宮内にまで忍び入ったらしいのさ。
えぇ…?
噂っておそろしい。
だけどさ、不謹慎だとは思うんだけど、ちょいとわくわくしないかい?
選択肢が出た。
ナジャ社長に本当のことを言いますか?
いや、口止めされてるから言わない。
おやぁ……なんだか目が泳いでるネェ、りぃ……。
そんなことナイヨ。
さては、あんたなんか知ってるね!!それについて、あたいにきっちり話してもらおうじゃないか。んんん?
ひぃー!
……魔笛が完成した、というのは本当か?
えっ、残りの4つ見つけたの!?
はい。座に設置してみましたが、間違いなく認証されました。
これで我々は、不可能かと思われた魔笛探索のくびきから解放され……父上……いや、アトルガン歴代王朝にまたがる宿望をやっと果たすことができるのだ。
それは、まだ早計にございます。
なぜだ?魔笛はそろったのだ。後はあれを起動するだけだろう?
確かに、私の作った新型魔笛は古の魔笛と同様……いえ、それ以上の力を発揮できるものと確信しております。
作った?
魔笛見つからないからガッサドが作っちゃったの!?
なんかもう色々と有能すぎるのでは。
しかし、5つの魔笛を制御する装置の完成の目処が、立たぬのです。
それは、あれには不可欠なものなのか?
……はい。5つの魔笛が生み出す力はあまりにも膨大。ひとつ制御を誤れば、我が国土が一瞬にして灰燼と帰すでしょう。
むう……。
ひぇ。
ご存知でしょうか?我々人間は心の臓で考えているのではなく頭の中、つまり脳で考えているということを。
ああ。幼少の頃、お前から教わったな。
恐れ入ります。人間は、脳の制御なしには見る、聞く、話す、手足を動かすは無論のこと呼吸や鼓動すら、ままなりませぬ。
ふむ、つまり心臓にあたる魔笛はできたが脳に当たる制御装置が不完全なため……あれは、いまだ木偶にすぎぬ、と?
そのとおりです。
昨今の第2次遺跡調査でも制御装置は見つからなかったのか?
残念ながら。それが、設置されていたらしき場所は発見できたのですが……
恐らくは、前回の騎士との戦闘後、墜落する前に意図的に破壊もしくは退避させたのかと……。
破壊、だと?おかしいではないか?復活は、アレキサンダーの意思でもあるはずだぞ?
アレキサンダー、復活したがってるんだ?
……はい。そこでございます。まずは、こちらをご覧ください。
縁が光った!!
地図置いてる普通の机じゃなかったんだ。
な、何かが光って出てきたぁ。
ご存知のように、墜落地点は全部で5ヶ所……。
は、ハイテクだぁ!!
ナイズル島にある指令ユニット……。
うおー!飛び出た!
アラパゴ諸島にある右推進ユニット……。
バフラウ段丘沖にある左浮揚ユニット……。
ゼオルム火山のふもとにある左推進ユニット……。
そして、銀海に沈む右浮揚ユニットです。
どれかひとつがアレキサンダーだと思ってたけど、全部合わせてだったの!?
想像以上にでかい!!
まず考えられるのはこれらのいずれかに、制御装置がいまだ発見されず保管されている可能性です。
あれだけ大規模な調査を行ったのに、か?
はい。そうは申しましても我々が調査できたのは広大な遺跡全体の3割程度。
調査の及んでいない場所にそれは隠されている……あるいは、発見したもののまだ用途を解明できていない遺物の中に制御装置が含まれている可能性も十分考えられます。
ひとつだけ、確かなことは各々の遺構が緊密に連絡をとりあっている節がある……ということです。
……ほう?崩壊して、ばらばらの状態にあるこれらが、か?
各遺構の内部では今も、修復装置や防御装置が機能しつづけているのはご存知のとおりですが……あれらの装置は、状況に応じて離れた遺構間を自在に行き来していることがわかったのです。
つまり……それらに指示を出している指令装置が必ずあるはずだ、と?
ご明察のとおりです。それに……
遺構を調査しているとふと、気配を感じるのです。うまく言えませんが、そう……視線のようなものを……。
ひぇ…。それはやだなぁ。
どうした?空想話など、お前らしくもない。
恐れ入ります。
よほどの何かを感じてるってことよね。
まぁいい。いずれにしろ、我々には気長に調査結果を待つ余裕はない。
で、もう1つの可能性とは?
はい。これだけ大掛かりな施設です。必ず、記録が残されているはずなのです。もしものとき、修理や再建できるよう、ある程度恒久的な方法によって……。
その設計図を見つけるほうが早道かもしれぬ、というわけだな。
しかし、それも私の推論にすぎません。はたして、いかなるものか、皆目……。
…………。
……ふふふっ。
……はははははははっ。
いかがされました?
その設計図とやらすでに我々の手中にあるかもしれんぞ。
なんですと?
ナシュメラは愚かよ。
……だが、やはり聖皇の血は濃いのかもしれん。幼き頃よりあれに異常な関心を示していたからな。
! まさか……あのゴルディオスが?
ワラーラ寺院にあるアレ?
あれがアレキサンダーの設計図!?
灯台下暗しとは、このことだな。
しかし、そうだとしてもワラーラが死んだ後、かれこれ数百年あの謎を紐解いた者は1人としておりませぬが。
どうしてワラーラは紐解いた内容を残さなかったのかと思ったけど、ヤバすぎたから。なのかな。
ん?
冥闇の鏡のお話の、天にまたたいたかけらは超新星ゴルディオスで。
地にかがやいた方のかけらはワラーラ寺院のゴルディオスのことなのかな。
「われらは願う。ふたつのかけらをこの手に…と。」
というのは、アレキサンダー復活のため?
安心しろ。……方法ならある。
ゴルディオスどうにかできるの!?
急がねばならぬ。審判の日は、そこまで迫っている……。
えっ、審判の日って、あの火の海がまた起こる予定なの?
やめとこうよ…。