……おもてを、あげよ。
……わらわの傭兵。そして、従者サラヒム。……わらわのため、皇国のため、よくぞ幽霊船の正体をあばいてくれた……。
……大儀であった。
アヴゼンの他に白いオートマトンがいる。
はは~っ。
……だが……
!?
……わらわは……わらわは不快であるぞ……。
えっ、何が?
……アシュタリフ号……、……亡者の国、イフラマドの船とは……。
ああ、まぁ、アトルガンが滅ぼした国だしね…。
おいたわしヤ。せいこうさま。オきもチ、オさっしイタシマス……。
デスガ、イフラマドのぼうれいナド、いまハもうムカシのもの。それニ……ウルグームずいいちノわガアトルガンノ、ぐんじりょくヲもッテスレバ……
おそレルニ、タラ~ズ!
??? : ……怖れるに、足らず。
しかし、監視哨の報告によれば、その幽霊船、いまだ暗碧海を我が物顔でうろついているとか……。もし、真に幽霊船の正体がイフラマドの抵抗のシンボル、200年前に沈んだブラックコフィン号であったとすれば……。
やがて、真実を知った旧イフラマド系の人々に、動揺が走るのは避けられないかもしれない。
そうかも。
そして盛り上がりそう。悪い方向に…。
そうでなくても、度重なる蛮族の侵入で、人民街区の民衆の不満はピークに達しているのだから。
ブラックコフィン号だけでなく、その提督であったイフラマドの英雄ルザフまでも、甦っているとなれば……
……騒動、いえ、暴動に発展しかねないわ。そうなれば、皇都は内から崩壊するでしょうね……。
なんてことだ……。
もうすでにルザフっぽい人いたのよね。
本物かどうかは分からないけれど。
でも、そっくりなあの人が「俺はルザフだ」って言えば、もうそれで十分なんだろうな。
ラウバーン隊長に進言し、コルセアもどきの海猫党対策に当たっている隊士の一部を、亡霊コルセアの探索に割いていただこう。
そうね。急いだほうがいいわ……。
ん?そこにいる坊主の人、ラウバーンじゃないのかしら。
ふめつたい。ごぜんデアル、ひかえヨ。
そういえば聖皇の前なのに自由に喋ったわね。
アフマウに聞かせたかったことなのかな。
??? : ……静粛に。
ん?
このオートマトン、ひらがなで滑らかに喋るのね。
アヴゼンはカタカナ交じりでちょっとたどたどしい感じだけど。
からくり士クエのエリザベスも滑らかに喋ってたなぁ。すごくお口が悪かったけど。
師匠のオートマトンはカタカナだったな。
どういう違いなんだろう。
マスターと信頼関係より深く築かれてるほど滑らかに喋るようになる、とか?
……それにしても、りぃよ。
ははーっ。
……此度のはたらき、まことに見事であった。よって、わらわから褒美をつかわそう……。
ご褒美!?
……メネジン、これを……。
白いオートマトン、メネジンっていうのね。
……つかわす。
ありがとうございます。
グローリークラウンを手にいれた!
アトルガンの勇者に贈りし冠?
幽霊船見つけただけで大袈裟じゃない!?
……そのグローリークラウンは、わらわから、そなたへの信頼の証……。
……わらわは聖皇…………聖皇は国家なり……。
……わらわの信頼、それは皇国からの信頼……。
……わらわの望み、すなわち皇国の望みなのじゃ……。
本当にアフマウが言ってるのかな。
そうだとしたら、相当無理してそう…。
ソレニシテモ……しずカナおうきゅうナンテ、ツマンナイトコロダ。
……あの傭兵…………りぃ……。
ウム。ソウダナ。マタ、あやつッテミタイやつダッタゾ。
また操る?
仕事出して何かさせるってことかしら。
トニモカクニモ、オそとハにぎやカだナ。ばんぞくニ、めいろノきし。そして……ブラックコフィンごうト、ルザフおうじ……。
……。
なんデ、コンナコトニナッテルノカ、きニナルナ!
……そのための、傭兵。
ソウダナ、ソノためノようへい!
ゆうれいせんノぼうれいノコト、りぃト、モットはなシタカッタ。
セッカク、ここマデきテクレタノニ……シカシ、くわシイコトハなにモきケズ!!ヤッパリ、マタあイタイモノダ。
……ワラワノのぞミ、ソレハ、りぃニ、モウいちど、あウコト……。
わらわ?
…………。
……。
ナンチャッテ♪
……かわいくないぞ。
んん?
普段は自我で動いてるけど、アフマウが操って喋ってる時もあるってこと?
いま、なにカいッタカ!?
あれっ、アフマウ!?
いつの間に。
ん?
あ、丞相。
!?
!!
アフマウ逃げたー!
……。
あれ?
そういえば、丞相から招待状貰って来たのに、いなかったね。今来たの?
……丞相。
……。
……ご苦労。東方戦線の様子、いかがであった……?
……陛下。私の留守中、いったい陛下は何をなさっておられたのでしょうか?
……わらわは存ぜぬ……。
何をしていたんだ!?
えっ!?
ため口で怒った!!?
…………。
私の名を騙り、傭兵どもをここに招き入れたというのは、本当か!?
と、聞いている……。
ちょっと冷静になった!
いやでもあの書状、聖皇自らこさえた偽物だったんかい。
少しばかり、お遊びが過ぎるぞ……。
聞け。聖皇として生きんとするなら、何よりも、まず分別を身につけろ。与えられた役割だけを果たし、それ以外のことには……目をつぶり、耳をふさぐよう、心がけよ。それが、御身を保つただひとつの道なのだ。
おわかりか?
アフマウが聖皇になる前から知ってて、小さいころからお世話してた。とかなのかな。
私は、陛下が心配なのです。国家の闇で、陛下の御手を汚させたくはないのです。そう、私のように……
アフマウを守るため、汚れ役を全部やってる…っぽいな…。
自重なさっていただきたい。
……丞相。……心配も度を超すと……身体にさわる……。
ソウダナ。しんぱいノシスギダトおもウゾ。
カホゴ・カホゴ・カホゴ!
こっ、これは、アヴゼンが言ってるのか、アフマウが言ってるのか…!?
黙れっ!!
怒ったァ!
……ご、ごめんなさい。
そっちにいたの!?
話し相手になって差し上げろ。陛下は……、御一人では何もできない。
んん???
あっ、五蛇将のクエストやったからアフマウが聖皇だ。って分かったけど、ミッションだけやってたらまだ分かんないんだな!?
アフマウが謝ったのは無手の傀儡子としてで、アフマウに聖皇の話し相手になれと命じた……と、ミスリードを誘ってるんだ。
本当は、アフマウが謝ったのは勝手をしたからで、話し相手になれとはアヴゼンに言ったのね。
…あれ?
アヴゼンはいつもアフマウといるからアフマウが操ってるオートマトンだとして、メネジンは誰が?
側に実はもうひとり誰かいるのか……。
無手の傀儡子ってふたつ名が付くくらいだから、普通のからくり士とは一線を画す何かがあるはずよね。
もしかして、2体ともアフマウのオートマトン?
まだまだ分からないことだらけ。
謎が、深い。