泡沫の宝冠 其の弐

聖皇ナシュメラ ……おもてを、あげよ。

聖皇ナシュメラ ……わらわの傭兵。そして、従者サラヒム。……わらわのため、皇国のため、よくぞ幽霊船の正体をあばいてくれた……。

聖皇ナシュメラ ……大儀であった。

アヴゼンの他に白いオートマトンがいる。

ナジャ・サラヒム はは~っ。

聖皇ナシュメラ ……だが……
ナジャ・サラヒム !?

聖皇ナシュメラ ……わらわは……わらわは不快であるぞ……。

えっ、何が?

聖皇ナシュメラ ……アシュタリフ号……、……亡者の国、イフラマドの船とは……。

ああ、まぁ、アトルガンが滅ぼした国だしね…。

アヴゼン おいたわしヤ。せいこうさま。オきもチ、オさっしイタシマス……。

アヴゼン デスガ、イフラマドのぼうれいナド、いまハもうムカシのもの。それニ……ウルグームずいいちノわガアトルガンノ、ぐんじりょくヲもッテスレバ……

アヴゼン おそレルニ、タラ~ズ!
??? : ……怖れるに、足らず。

リシュフィー しかし、監視哨の報告によれば、その幽霊船、いまだ暗碧海を我が物顔でうろついているとか……。もし、真に幽霊船の正体がイフラマドの抵抗のシンボル、200年前に沈んだブラックコフィン号であったとすれば……。

アミナフ やがて、真実を知った旧イフラマド系の人々に、動揺が走るのは避けられないかもしれない。

そうかも。
そして盛り上がりそう。悪い方向に…。

アミナフ そうでなくても、度重なる蛮族の侵入で、人民街区の民衆の不満はピークに達しているのだから。
リシュフィー ブラックコフィン号だけでなく、その提督であったイフラマドの英雄ルザフまでも、甦っているとなれば……

アミナフ ……騒動、いえ、暴動に発展しかねないわ。そうなれば、皇都は内から崩壊するでしょうね……。
リシュフィー なんてことだ……。

もうすでにルザフっぽい人いたのよね。
本物かどうかは分からないけれど。

でも、そっくりなあの人が「俺はルザフだ」って言えば、もうそれで十分なんだろうな。

リシュフィー ラウバーン隊長に進言し、コルセアもどきの海猫党対策に当たっている隊士の一部を、亡霊コルセアの探索に割いていただこう。
アミナフ そうね。急いだほうがいいわ……。

ん?そこにいる坊主の人、ラウバーンじゃないのかしら。

アヴゼン ふめつたい。ごぜんデアル、ひかえヨ。

そういえば聖皇の前なのに自由に喋ったわね。
アフマウに聞かせたかったことなのかな。

??? : ……静粛に。

ん?
このオートマトン、ひらがなで滑らかに喋るのね。
アヴゼンはカタカナ交じりでちょっとたどたどしい感じだけど。

からくり士クエのエリザベスも滑らかに喋ってたなぁ。すごくお口が悪かったけど。
師匠のオートマトンはカタカナだったな。

どういう違いなんだろう。
マスターと信頼関係より深く築かれてるほど滑らかに喋るようになる、とか?

聖皇ナシュメラ ……それにしても、りぃよ。

ははーっ。

聖皇ナシュメラ ……此度のはたらき、まことに見事であった。よって、わらわから褒美をつかわそう……。

ご褒美!?

聖皇ナシュメラ ……メネジン、これを……。

白いオートマトン、メネジンっていうのね。

メネジン ……つかわす。
りぃ ありがとうございます。

グローリークラウンを手にいれた!

アトルガンの勇者に贈りし冠?
幽霊船見つけただけで大袈裟じゃない!?

聖皇ナシュメラ ……そのグローリークラウンは、わらわから、そなたへの信頼の証……。

聖皇ナシュメラ ……わらわは聖皇…………聖皇は国家なり……。

聖皇ナシュメラ ……わらわの信頼、それは皇国からの信頼……。

聖皇ナシュメラ ……わらわの望み、すなわち皇国の望みなのじゃ……。

本当にアフマウが言ってるのかな。
そうだとしたら、相当無理してそう…。

アヴゼン ソレニシテモ……しずカナおうきゅうナンテ、ツマンナイトコロダ。

メネジン ……あの傭兵…………りぃ……。
アヴゼン ウム。ソウダナ。マタ、あやつッテミタイやつダッタゾ。

また操る?
仕事出して何かさせるってことかしら。

アヴゼン トニモカクニモ、オそとハにぎやカだナ。ばんぞくニ、めいろノきし。そして……ブラックコフィンごうト、ルザフおうじ……。
メネジン ……。

アヴゼン なんデ、コンナコトニナッテルノカ、きニナルナ!
メネジン ……そのための、傭兵。

アヴゼン ソウダナ、ソノためノようへい!

アヴゼン ゆうれいせんノぼうれいノコト、りぃト、モットはなシタカッタ。

アヴゼン セッカク、ここマデきテクレタノニ……シカシ、くわシイコトハなにモきケズ!!ヤッパリ、マタあイタイモノダ。

アヴゼン ……ワラワノのぞミ、ソレハ、りぃニ、モウいちど、あウコト……。

わらわ?

メネジン …………。

アヴゼン ……。

アヴゼン ナンチャッテ♪
メネジン ……かわいくないぞ。

んん?

普段は自我で動いてるけど、アフマウが操って喋ってる時もあるってこと?

アヴゼン いま、なにカいッタカ!?

あれっ、アフマウ!?
いつの間に。

ん?
あ、丞相。

メネジン !?
アヴゼン !!

アフマウ逃げたー!

ラズファード ……。

あれ?
そういえば、丞相から招待状貰って来たのに、いなかったね。今来たの?

聖皇ナシュメラ ……丞相。
ラズファード ……。

聖皇ナシュメラ ……ご苦労。東方戦線の様子、いかがであった……?
ラズファード ……陛下。私の留守中、いったい陛下は何をなさっておられたのでしょうか?

聖皇ナシュメラ ……わらわは存ぜぬ……。

ラズファード 何をしていたんだ!?

えっ!?
ため口で怒った!!?

聖皇ナシュメラ …………。
ラズファード 私の名を騙り、傭兵どもをここに招き入れたというのは、本当か!?

ラズファード と、聞いている……。

ちょっと冷静になった!

いやでもあの書状、聖皇自らこさえた偽物だったんかい。

ラズファード 少しばかり、お遊びが過ぎるぞ……。

ラズファード 聞け。聖皇として生きんとするなら、何よりも、まず分別を身につけろ。与えられた役割だけを果たし、それ以外のことには……目をつぶり、耳をふさぐよう、心がけよ。それが、御身を保つただひとつの道なのだ。

ラズファード おわかりか?

アフマウが聖皇になる前から知ってて、小さいころからお世話してた。とかなのかな。

ラズファード 私は、陛下が心配なのです。国家の闇で、陛下の御手を汚させたくはないのです。そう、私のように……

アフマウを守るため、汚れ役を全部やってる…っぽいな…。

ラズファード 自重なさっていただきたい。
聖皇ナシュメラ ……丞相。……心配も度を超すと……身体にさわる……。

アヴゼン ソウダナ。しんぱいノシスギダトおもウゾ。

アヴゼン カホゴ・カホゴ・カホゴ!

こっ、これは、アヴゼンが言ってるのか、アフマウが言ってるのか…!?

ラズファード 黙れっ!!

怒ったァ!

アフマウ ……ご、ごめんなさい。

そっちにいたの!?

ラズファード 話し相手になって差し上げろ。陛下は……、御一人では何もできない。

んん???

あっ、五蛇将のクエストやったからアフマウが聖皇だ。って分かったけど、ミッションだけやってたらまだ分かんないんだな!?

アフマウが謝ったのは無手の傀儡子としてで、アフマウに聖皇の話し相手になれと命じた……と、ミスリードを誘ってるんだ。

本当は、アフマウが謝ったのは勝手をしたからで、話し相手になれとはアヴゼンに言ったのね。

…あれ?
アヴゼンはいつもアフマウといるからアフマウが操ってるオートマトンだとして、メネジンは誰が?

側に実はもうひとり誰かいるのか……。

無手の傀儡子ってふたつ名が付くくらいだから、普通のからくり士とは一線を画す何かがあるはずよね。

もしかして、2体ともアフマウのオートマトン?

まだまだ分からないことだらけ。
謎が、深い。