
貴様、この白門の向こうが気になるのか?
気になるというか、用があるのよ。

この先は皇民街区。市民権ある者と、聖皇の御許しある者しか通すことはできない。貴様のような傭兵には縁遠い場所だ。すみやかに立ち去るがよい。
市民は入っていいんだ?

ちょいと、お待ちよ。衛兵サマってのは、いつだってつっけんどんだから嫌んなるね。
なんだ貴様……あぁ、サラヒム・センチネルの者か。どうした?貴様も皇民街区には行けぬ身分だろう。……言伝でも持ってきたのか?
入れない?
ナジャ社長、アルザビに住んでるけど市民にはなっていない?

フン。
どこ出身なんだろう。
南のミスラの国、ガ・ナボ大王国?
まさか、ツァヤ…?
確か他にもいくつか国があったはずだけど…。

そんなまわりくどいことするために……

このあたいが!

わざわざ!

……白門くんだりまで出向くわけがないだろう?

うちの社員であるこのりぃと、あたいはね宰相のラズファードさまから、皇宮への招待をうけてるんだ。

あんた、いつも聖皇さまのお許しがあれば、向こう側に行けるって言ってるだろう?
そのとおりだ。
だったら、宰相さまのお許しがある者も構わないだろうね?
むっ……。

なるほど。たしかに、ラズファード様のサインだ。ちょっと待っていろ。今、確認してこよう。

フンフンフフーン♪
ご機嫌だぁ!

……御免!
のわぁ!?
おやおや!ゲッショーじゃないか!

ご無礼、お許しくだされ。社長殿、そしてりぃ殿。あぶくーば殿から皇宮へ向かったと聞き及び、慌てて追いかけてきた次第。
拙者、御二方に折り入って頼みたきことがござる。
なんだろう?

幽霊船に乗った者の話を聖皇様が直々に聞きたがっておられ……中間を1名、連れてゆかねばならぬとか?
中間(ちゅうげん)ってのは、武家の召使いのことだって。

滅多なことではご尊顔を拝することあたわぬ聖皇様に、ご拝謁かなう、またとない機会にござる。
ゲッショーは聖皇に会うためにアルザビに来たのかしら。
アトルガンと争っている東の国から…。
まさか、かつてのミリみたいに聖皇を暗殺するため?
拙者も是非とも……

!!!

ひいいいい!!

(……こは、まさしく阿修羅の如くなり。)
ピリついて誰も動けん!!

貴様ら、確認がとれたぞ。あの通用口を通って白門を抜けるといい……
今のやり取り見てない人が来て助かったー!

!?
そりゃいきなりヤグードいたら怪しいよね!

おい、待て!!貴様は何者だ!?
拙者か?かの者らの中間でござる。御免!
ついてこようとしてるー!

おい、待て!許可なき者が通ることまかりならん!
無礼な!拙者とて「さらひん・せんちなる」のれっきとした社員、御国のために働いている傭兵でござるぞ。
勘違いするな。傭兵であるかどうかなど関係ない!
許可ある人と市民のみだものね。入れるの。

ゲッショー。

あたいに言わせてもらえば、あんたの、その露出の高い過激なファッションは、とてもじゃないけど……皇宮に、参内しようかという者には見えないネェ。
た、確かに……素っ裸!?
いや、靴は履いてて、胴にも何か着けてるのかな?よく分からないや。
万が一、将来あんたがこの門を通り抜けられたとしても!

皇宮にたどり着く前に!!

あたいが、あんたの首根っこつかまえて連れもどすからね!!

我が社の看板にドロを塗るようなマネだけは、許さないよっ!

……理不尽でござる。
な、何か身に付ければきっと大丈夫…。たぶん。