泡沫の宝冠 其の壱

Arzizah 貴様、この白門の向こうが気になるのか?
りぃ 気になるというか、用があるのよ。

Arzizah この先は皇民街区。市民権ある者と、聖皇の御許しある者しか通すことはできない。貴様のような傭兵には縁遠い場所だ。すみやかに立ち去るがよい。

市民は入っていいんだ?

ナジャ・サラヒム ちょいと、お待ちよ。衛兵サマってのは、いつだってつっけんどんだから嫌んなるね。
Arzizah なんだ貴様……あぁ、サラヒム・センチネルの者か。どうした?貴様も皇民街区には行けぬ身分だろう。……言伝でも持ってきたのか?

入れない?
ナジャ社長、アルザビに住んでるけど市民にはなっていない?

ナジャ・サラヒム フン。

どこ出身なんだろう。

南のミスラの国、ガ・ナボ大王国?
まさか、ツァヤ…?
確か他にもいくつか国があったはずだけど…。

ナジャ・サラヒム そんなまわりくどいことするために……

ナジャ・サラヒム このあたいが!

ナジャ・サラヒム わざわざ!

ナジャ・サラヒム ……白門くんだりまで出向くわけがないだろう?

ナジャ・サラヒム うちの社員であるこのりぃと、あたいはね宰相のラズファードさまから、皇宮への招待をうけてるんだ。

ナジャ・サラヒム あんた、いつも聖皇さまのお許しがあれば、向こう側に行けるって言ってるだろう?
Arzizah そのとおりだ。

ナジャ・サラヒム だったら、宰相さまのお許しがある者も構わないだろうね?
Arzizah むっ……。

Arzizah なるほど。たしかに、ラズファード様のサインだ。ちょっと待っていろ。今、確認してこよう。

ナジャ・サラヒム フンフンフフーン♪

ご機嫌だぁ!

ゲッショー ……御免!

のわぁ!?

ナジャ・サラヒム おやおや!ゲッショーじゃないか!

ゲッショー ご無礼、お許しくだされ。社長殿、そしてりぃ殿。あぶくーば殿から皇宮へ向かったと聞き及び、慌てて追いかけてきた次第。

ゲッショー 拙者、御二方に折り入って頼みたきことがござる。

なんだろう?

ゲッショー 幽霊船に乗った者の話を聖皇様が直々に聞きたがっておられ……中間を1名、連れてゆかねばならぬとか?

中間(ちゅうげん)ってのは、武家の召使いのことだって。

ゲッショー 滅多なことではご尊顔を拝することあたわぬ聖皇様に、ご拝謁かなう、またとない機会にござる。

ゲッショーは聖皇に会うためにアルザビに来たのかしら。
アトルガンと争っている東の国から…。

まさか、かつてのミリみたいに聖皇を暗殺するため?

ゲッショー 拙者も是非とも……

ゲッショー !!!

ひいいいい!!

ゲッショー (……こは、まさしく阿修羅の如くなり。)

ピリついて誰も動けん!!

Arzizah 貴様ら、確認がとれたぞ。あの通用口を通って白門を抜けるといい……

今のやり取り見てない人が来て助かったー!

Arzizah !?

そりゃいきなりヤグードいたら怪しいよね!

Arzizah おい、待て!!貴様は何者だ!?
ゲッショー 拙者か?かの者らの中間でござる。御免!

ついてこようとしてるー!

Arzizah おい、待て!許可なき者が通ることまかりならん!
ゲッショー 無礼な!拙者とて「さらひん・せんちなる」のれっきとした社員、御国のために働いている傭兵でござるぞ。

Arzizah 勘違いするな。傭兵であるかどうかなど関係ない!

許可ある人と市民のみだものね。入れるの。

ナジャ・サラヒム ゲッショー。

ナジャ・サラヒム あたいに言わせてもらえば、あんたの、その露出の高い過激なファッションは、とてもじゃないけど……皇宮に、参内しようかという者には見えないネェ。

た、確かに……素っ裸!?

いや、靴は履いてて、胴にも何か着けてるのかな?よく分からないや。

ナジャ・サラヒム 万が一、将来あんたがこの門を通り抜けられたとしても!

ナジャ・サラヒム 皇宮にたどり着く前に!!

ナジャ・サラヒム あたいが、あんたの首根っこつかまえて連れもどすからね!!

ナジャ・サラヒム 我が社の看板にドロを塗るようなマネだけは、許さないよっ!

ゲッショー ……理不尽でござる。

な、何か身に付ければきっと大丈夫…。たぶん。