だいじなもの:イフラマド金貨を手にいれた!
渡し賃ゲット。
??? : うふふふふふふ……。
暗礁域のはずれの渡船場に、また足を運ぶなんて……素敵な人。
出たぁ。
あなた、もう一度漆黒の柩へ行ってみたいのね……ちがう?
行く。
あなたのイフラマド金貨、渡し賃として……いただくわ。うふふふふふふっ……。
あたしの連絡艇はあなたを、求める柩へと連れてゆくわ……。
……さようなら……。
……ルザフさん。あいつを、どうするおつもりなんです?
…………。
あ、起きてる。
あのお方もお待ちかねです。早いところ始末して、ハザルムに行き叙任式を執り行いましょうよ。
あの方?
叙任式?
ヨウ、るざふ!まタセタナ!!
やれやれ、もうお掃除に飽きちゃったんですか?さすが、育ちのよい方は違いますねぇ。
失礼しちゃう。ちゃ~んと甲板をピッカピカにしてきたんだから!
あふまうハ、みテタダケダケド、ナー。
んもうっ!アヴゼンったら!!しーっ!
う~ん、それなら、次はですね~。
待て、フリット!俺は、この者らと話がある。少しの間、お前が外してくれないか?
ホホウ!ていとくハ、はなしガ、わカルデハナイカ?
し、しかし、ぼくの話はまだ……。
フリット。同じことを2度言わせるな。
……あいあい、さ~。命令には絶対服従ってね。
アフマウ、座った位置からちょっとルザフの方に寄りましたね!?
あの…………具合は、どうなの?
ああ、もう大丈夫だ。一睡もせずに、看てくれていたそうだな。感謝する。
……うん。
アヴゼンの座り方が可愛いな。
……あっ、でも、あの……マウのこと……。
ああ……アトルガンの聖皇、ということか?
……ええ。
以前の俺なら、もう、君を斬っているだろう。
!!
案ずるな。君を斬り、小さな復讐を果たしたところで俺の心は浮かばれない……。
ルザフ……。
膝に手を置きよりそうアヴゼン。
かつて俺は、イフラマド王国の皇太子だった……。だが、留学中に故国はアトルガン皇国に侵攻され帰るべきところを失ってしまった……。
留学中だったの。
どこの国に行ってたんだろう。
俺はあきらめきれず王国の残存艦隊を集め、反皇国組織コルセアを結成し皇国軍と戦うことにした。
くる日も、くる日も続く戦いの日々だった……。そして、ある日ラミアを用いた皇国軍の策略によってコルセア艦隊は、一夜にして母港で壊滅させられた……。
母港…ナシュモか。
唯一、難を逃れたこのブラックコフィン号も皇国軍に包囲され、撃沈され……
そのとき、俺は死んだんだ……。
ルザフ、あなた死んだって、ほんとなら……その……やっぱり亡霊なの?
亡霊か……ふっ、そうかもしれない。
でも、あなたはちゃんと生きてるようにみえる。触ることだってできる……。
今の状態を生きている、と呼べるかどうか……。
どういうこと?
今も、俺は冥界の虜囚だからな。
……ペリキアで、あなたから現れたあの影が関係してるの?
ああ。あれは、我が神オーディンから定められた俺の未来の姿……。
ええっ、いずれあんなんなっちゃうの!?
あっ、もしかしてアトルガン周辺のフィールドをうろうろしてる冥路の騎士って、オーディン自身じゃなくて先代の選ばれた人?
だからオーディンとか黒き神とかじゃなくて「冥路の騎士」なのね。
ルザフが冥路の騎士になったら、現冥路の騎士はどうなるんだろう。
成仏するのかしら。
冥路の……騎士ね。
察しがいいな。
ブラックコフィン号から投げだされ、暗い海底へと沈みながら俺は、願ったんだ……。
我が王国、イフラマドの守護神オーディンよ。もう1度……一太刀でいい……皇国に復讐するチャンスがほしい、と。
そのとき、俺の前にオーディンが現れたのだ。
……!
神は言った……「審判の日、近づきし時、我は汝が望みをかなえよう……。ただし、復讐を果たした後は、我が騎士となりて宿敵アレキサンダーを討て。」と。
アレキサンダー……
皇国が危機に陥ったとき、鉄巨人に宿って復活すると伝えられる秘せられた救世主の名だわ。
宿る?
アレキサンダー自身じゃなくて、オーディンみたいに力の一部の依り代になるってことなのね。
そっか、オーディンとアレキサンダーの本体がドンパチやったら国がひとつ吹っ飛ぶくらいで済まないか。
知っている。だからこそ、俺は契約をのんだ。皇国への復讐。ただ、それだけのために……。
次に目覚めたとき俺は、沈んだはずのブラックコフィン号の甲板で寝ていた……。まるで長い夢を見ていたかのように。だが、そこは……。
現代……200年後の世界だった……そうなのね?
……ああ。
200年ずっと生きてたわけじゃなかったんだ。
死ぬ前に契約して、今目覚めさせられたってことは、ルザフは亡霊じゃなくて生身っぽいわね。
それから俺は、対皇国戦準備のため蛮族と手を組み……また、鉄巨人奪取のためにカギとなる人形を探し求めた……。
アヴゼンとメネジンが、鉄巨人奪取のカギ?
だが、俺は気づいた。いや、気づかされたというべきか……。俺が憎んでいたのは王国を滅ぼした聖皇と……奴が治めていた……俺が生きていた時代の皇国だ。
復讐すべき相手は今の皇国にはいないし、ましてアフマウ、君じゃない。
ざまぁないだろう?これまで、復讐のことだけを考えていたのに、俺は針路を見失ってしまったわけだ……。
気づいて許せるって、ルザフはとても優しい人なのね。
……情けないな……。
なに!?
あなたにはまだ、イフラマド王国の再興という夢があるはずじゃない!
しかし……。
マウは、寺院にいたからいろいろ知ってるの。皇都に暮らすイフラマドの末裔の人たちが、今でも王国時代を懐かしんでることとか……。
そのために、戦ってる人たちがいること……。ルザフが、その人々が幸せに暮らせる道を探しだせばいいのよ。
……そうか……。今でも、イフラマドの民は……。
……だが、それは再びアトルガン皇国と戦火を交える血塗られた道だろう?
オイ、ていとく。イヤ、るざふおうじヨ。オまえハ、だれトはなシテイルノダ?
!
わらわに、任せるがよい!
頼もしい!!
ふっ。ははは。そうだった、俺もコルセアだ。君の大きな賭けにのってみよう。
うん!そうこなくちゃ!だったら、早速そのオーディンとの契約を取りやめないと……。
……ああ。そのためにも、オーディンに謁見せねばな。