しかし、解せぬ……。
あ、いた。
…ん?もうひとり?
ワラーラ寺院の連中め。貴公の申したとおり、このト……いや、このライファルを愚弄しているとしか思えなかったぞ。
……ヤグードのゲッショーよ。
あっ、西方のヤグード?
王子知り合いなの?
いや待って。
獣人が街中の茶屋でくつろいでて、みんな平気なの!?
あれだけ蛮族攻めてきてて怖い思いしてるのに!!
キキルンが溶け込んでるくらいだから、攻撃してこない獣人は受け入れる国民性なのかなぁ。
……らいふある殿。拙者からも耳寄りな情報がござる。「星気(せいき)の風」。この言葉を、街の者たちが話しているのを耳にいたした。
星気の風?
然様。「魔笛」なる宝物から吹き出る風のこととか。なんでも、その魔笛を「座(くら)」に安置すれば、その風がいずこからともなく吹き出し、霊験あらたかな音色を奏でるそうでござる。
霊験あらたかな音色?
座に置けば…ってことは、単体では効果を発揮しないのね?
なんとも面妖な……。魔笛というからには楽器の類には違いないのだろうが……。
それは、拙者にはなんとも。少なくとも、わらあらの寺男、「なでいゆ」はそう申していたが……。
その男ならあったことがある。
私が、この国と獣人どもとの争いの火種が魔笛であると睨んでいる、と言っても、別段、驚いた様子もなかった。
確かに。
カマかけてたのか。
それにしても合点がいかぬ。魔笛が自国の民を秤にかけるほどの代物とは、私には到底思えん。
そうよねぇ。
まず守るべきは国民なのに。
だが、あるいはそれが真に皇国の秘宝ならば……
うーん、秘宝としても…。
独裁国家ならあり得るか。
それか、失えばもっと酷い状態になってしまう。とか?
いや、それならもっと厳重に管理するよね。
蛮族に「ここにありますよー。欲しいんでしょ~。」って言ってるような場所に置いとかなくてさ。
あいや、待たれよ。其は、いまの少なき情報で論じても詮無きこと。これから拙者らが地道に調べてゆくしかござるまい?
そうだね。
推測しかできないから、あまり意味ないね。
されば、これにて……。
おい、ゲッショー。
あの会社……「サラヒム・センチネル」は止めておけ。
入社しとるんかい!
いや、今から潜入捜査とかするのかしら。
何も言わずに去っていった…。
む?お前は……「サラヒム・センチネル」の社員だったか?
うん、まぁ。
今のこと、誰にも言うなよ。特に、あのミスラにはな。もし言えば……後はわかるな?
わきまえております。
お前……気づいているか?
選択肢だ。
「アトルガン皇国」のこと
「ワラーラ寺院」のこと
「サラヒム・センチネル」のこと
いや、一番気づいてるのはトリオン王子のことだけど。
選択肢に無いじゃないですか。
うーん、ただの傭兵会社じゃなくて何か目的がありそうだと気づいてるってことで。
「サラヒム・センチネル」のこと
むむむうっ!まさか、お前も知っておったとは……。
あの会社は……我が人生に最大の屈辱を与えたところだ!
そんなことかよ!
あら。全部聞くタイプのやつなのね。
「アトルガン皇国」のこと。
むうっ!まさか、お前も知っておったとは……。
ここ「アトルガン皇国」は、マジャーブ朝第16代聖皇、ナシュメラ2世によって統治されている。
聖皇の名前はナシュメラ2世っていうのね。
首都は東と西、2つある。広大な領土を統治するためと聞く。あらためて言うまでもないが、ここは西の首都アルザビ。皇都とも呼ばれているな。
首都が2つあるの?
東西にそんなに広いって、アメリカくらいあるのかしら。
…え?
そんなに大きな国の首都がこんな状態って、どうなの。
東の首都はちゃんとしてるから大丈夫とかなのかなぁ。
「ワラーラ寺院」のこと
むむうっ!まさか、お前も知っておったとは……。
寺院の中心には「ゴルディオス」と呼ばれる、奇妙な球体が安置されていた……。
これ、ゴルディオスっていうのね。
ん?ゴルディオス?
なんか聞き覚えが…。
天晶暦元年、突如として天空に昼なお輝いた超新星のこと。
1年もの間、夜が消える現象が続き、ヴァナ・ディールの人々の間で、女神の降臨が囁かれた。
ああー、だから聞いたことあったのか。
どうしてこの超新星の名前が付いてるのか。
コレ、なんなのだろう。
はるか昔、それは「賢者ワラーラ」によって一度だけ紐解かれ、世界の理が読まれたる宝物、と坊主どもには伝えられているようだ。
紐解いた内容、詳しく残さなかったの!?
寺院に秘匿されてるのかな。
あっ、全部聞いたら出た!
「ライファル」の秘密!
はて……私の秘密?なんのことだ?私は、サンドリアの神殿騎士くずれで今はしがない傭兵。それだけの男にすぎぬが?
王子でしょ。サンドリアの。
な……
そんなにびっくりするほどバレてない自信があったのか!!
このライファルは、あのような……誇り高き騎士、いや、騎士の傭兵ではないわっ!
焦りすぎて変な事言ってる。
トリオン王子。
な、なに?たわけが!このトリオンを、あのような……
……ぅああ。
…………。
………………。
……ぬかったわ。トリオン・I・ドラギーユ一生の不覚……。
向いてないのよ。コソコソするの。
……ふん。実は、とうに気づいておったのだろうが?お前は、冒険者なのだからな。
ひと目見た時からね。
戯れがすぎるわ。
だが……だ、正体を知りながら、私を愚弄した罪は重い。罰として、お前に使いを申し渡す!
ええー。
愚弄してないよ。頑張って正体隠そうとしてたから言わなかっただけで。
この書状を、ただちに「ドラギーユ城」のハルヴァーに届けて参れ。名高き賢者ライファルから預かったと言ってな。
トリオン王子からじゃなくて、ライファルからなの?
その書状に、この国の今後、そして我が国を含む、アルタナ四国の未来が託されていると思え!
必ずやその手で、「ドラギーユ城」へと届けるのだ!さもなければ、二度と我が国の土を踏ませぬぞ!
うん。わかった。
だいじなもの:ライファルの書状を手にいれた!
ちょっと待って。トリオン王子の手紙ってことは。
やっぱりねー!!
伝わるのか?これで…。