昇進試験~曹長

軍曹のアサルトを終わらせて。

ナジャ・サラヒム りぃ伍長!

ナジャ・サラヒム …………。

ナジャ・サラヒム おかしぃネェ……?この、あたいの耳に返事が聞こえてこないなんて。

あれ?
伍長じゃなくて、軍曹だったよね。

りぃ 違うよ?

ナジャ・サラヒム ……ヘェ!あんた、「軍曹」だってことはちゃんと自覚してるんだ?だったら、それらしいところをそろそろ見せてもらわないとネェ。

ナジャ・サラヒム アブクーバ!!
アブクーバ はっ、はいぃぃ!

ナジャ・サラヒム 例の3人を連れてきなっ!
アブクーバ ……というと、あの「窓際3人組」のことですか?

窓際…?
窓際族ってこと?何十年ぶりかに聞いた言葉だな。

ナジャ・サラヒム いちいち聞き返すんじゃないよ!他に誰がいるんだい!?
アブクーバ わっ、わかりましたっ!!

アブクーバ 連れてきましたっ!

カリムル カリムル三等傭兵であります……。
ワルジャル ワルジャル三等傭兵であります……。
ザルドゥル ザルドゥル三等傭兵であります……。

りぃ 三等傭兵?

ナジャ・サラヒム フフン……。「三等傭兵」ってのが気になったかい?こいつらは他の社員より、チィ~とばかし成績が伸び悩んでたからね。特・別・に!こしらえてやった新しい階級だよっ。

ということは、傭兵長の試験の時の土下座のファルズンよりも成績が悪いってこと!?

ナジャ・サラヒム どれくらい成績が伸び悩んでいるかっていうと……アブクーバ!

アブクーバ 入社以来の公務達成総数3回。内容は……

アブクーバ 噴水周りのゴミ拾い1回!

アブクーバ 噴水のラクガキ消し1回!

アブクーバ 噴水の水さらい1回!

アブクーバ 公務代理店から我が社に送られたマージンの総額は……

それ傭兵じゃなくて、お掃除の人の仕事やん!

ダンッ!

ナジャ・サラヒム もう、いいっ!

ナジャ・サラヒム ……というわけで、このままじゃあ、もう1つ階級を新設しなきゃならないのさ……。

四等傭兵…?

ナジャ・サラヒム まっ、しばらく懲罰営倉にぶち込むっていう最終手段も残されてはいるんだけどネェ。

懲罰……ヒィ。

ナジャ・サラヒム そ・こ・で♪りぃ!あんたにはこの3人をみっちりと鍛えなおしてもらおうって、わけ。
りぃ ええっ!

鍛えてどうにかなるものなのでしょうか!?

ナジャ・サラヒム いいかい?こいつらはみーんな、あんたのかわいい後輩たちだ。それはつまり、後輩の教育を怠った、あんたにも責任があるってことさ!
りぃ ええーっ!?

初対面ですし!?

ナジャ・サラヒム あんたがちゃんと軍曹としての責任を果たせるかどうか、きっちり見せてもらうよっ!

ナジャ・サラヒム さて……傭兵は、やっぱり体が資本。まずは基礎体力作りから始めないとネェ。いいかい?こいつらときたら懸垂もできないような貧弱な男どもだ。一から鍛えなおしていくよ!

ナジャ・サラヒム よしっ、まずは腕立て伏せからっ!りぃ、任せたよ!

えっ、何を?

アブクーバ ナ、ナジャ社長……。
ナジャ・サラヒム ……ったく、なんだい?

アブクーバ 軍曹とはいえ、りぃさんも調練を任されるのは初めてのご様子。
ナジャ・サラヒム チッ……仕方ないネェ。じゃあ、まずはそこで見てなっ。ただし!3人のうちの誰かが、サボったりしてないかしっかりとその目を光らせとくんだよっ!

ナジャ・サラヒム ……自分のやること、ちゃんとわかっただろうネェ?
りぃ 具体的に何をするのかさっぱり分かりません…。

アブクーバ (……つまり、ナジャ社長が指定した回数分、全員がちゃんと腕立て伏せをやるかしっかりと数えておけ、という意味です。)
りぃ あ、わかった。ありがとう。

ナジャ・サラヒム よーし、じゃあ腕立て10回、はじめ!

メモとペン用意して3分割したから、見ながら回数チェックすれば余裕だね。

えっ、ちょっと待って!
こんなバラバラに動くの!?

手元見ながら正の字書く余裕がない!

と、とりあえず3分割の位置を想像しながら動いたら点をつけて後で数を数えるしか……うわあああああ!!

ナジャ・サラヒム よーし、そこまで!……さぁ、りぃ軍曹。回数を誤魔化していたような不届き者はいなかったろうネェ?
りぃ えーと……全員10回やった!………はず。

ナジャ・サラヒム よろしい!

よ、よかった。合ってた!!

ナジャ・サラヒム でも、もうこいつら、へばっちまってるようだネェ。今日の調練は終了だよっ!

ナジャ・サラヒム しっかり見ていたようだね、りぃ。この調子なら明日は任せても、大丈夫そうかネェ。
りぃ 明日も?

ナジャ・サラヒム ……ん? あんたまさか、1日で鍛え上げられるなんて思ってたんじゃないだろうね?調練ってのは、日々これ積み重ねだっ!

ひぃえ。

ナジャ・サラヒム それじゃあ、明日も頼んだよ!りぃ!

ナジャ・サラヒム 来たね、りぃ。ウチじゃ、早くもあんたの噂でモチキリだよ。一切サボりを許さない、キビシ~~教官だ!!ってね。
りぃ えーっ!?

ナジャ・サラヒム アブクーバ!例の3人を呼んできな!
アブクーバ は、はいっ!

ナジャ・サラヒム じゃ、今日は腹筋運動をやってもらおうかネェ。 腕立て伏せのときはちょいとバラバラだったから、今日はこっちの合図に合わせてやってもらうよ。

ナジャ・サラヒム ほらっりぃ!合図はあんたが出しな。
りぃ う、うん。

ナジャ・サラヒム いいかい?タイミングをきちんと合わせるんだよ。早すぎたり遅すぎたりして、腹筋運動を妨げたら……そいつはあんたの責任になるんだからねっ。
りぃ えーっ!!

ナジャ・サラヒム …………。

ナジャ・サラヒムはアブクーバをじっと見つめた……!

アブクーバ ……?(あぁ、そんな目で見つめられたら……僕は、僕は……。)

えっ、アブクーバ、ナジャ社長の事好きなの?

ナジャ・サラヒム ……アブクーバ。
アブクーバ ……は、はい。なんでしょうか?ナジャ社長。

ナジャ・サラヒム あんた、服を脱ぎな。
アブクーバ え!ええ!?な、なぜですかっ!?(そ、そんなっ、大胆すぎますっ!!!)

ナジャ・サラヒム だって、いきなり本番ってのもなんだからネェ?まずはあんたが練習台になっておやり。
アブクーバ はいっ!練習台にですね!

アブクーバ ……って、それはつまり……僕に腹筋運動をしろ、ということでしょうか……?
ナジャ・サラヒム 他になにがあるっていうんだい?ほら、さっさと!服を脱いで寝っ転がるんだよ。

色々と、不憫。

ナジャ・サラヒム アブクーバ!……覚悟はいいかい?
アブクーバ は、はひっ……。

ナジャ・サラヒム とりあえず、10回くらいやってみようか。それじゃあ、用意ッ……はじめっ!

アブクーバ、白パンツなのか!!!

む、むむっ。
勝手がよく分からん。

……よ、よし。慣れてきたぞ。

練習は1回で大丈夫かな。

ナジャ・サラヒム だいたいのコツはつかめたかい?
りぃ うん。

アブクーバ ハァ……ハァ……お、終わりました……?

ナジャ・サラヒム ったく、あんたはちょいと運動不足なんじゃないかい?
アブクーバ そ、そんなっ……!……それに、僕は人事担当ですよ?

ナジャ・サラヒム フン。……さて、待たせたね。それじゃあ本番といこうじゃないか。今度は3人だから、全員のタイミングが合うように調整するんだよ。わかったかい?
りぃ うん。

えっ、これもこんなにバラバラなの!?
そして3人目が背中着いてから笛吹いてるのに成功しない。

タイミングがシビアすぎる!!!

アブクーバひとりの時とは難易度が段違いだ!

ナジャ・サラヒム なんだいなんだい、そのテキトーな合図は!そんなんじゃ敵弾のいい的だっ!明日もう一度、やり直しだよ!!
りぃ こんなん無理ー!!!

アブクーバ (まさか僕ももう一度やらされるんだろうか……。)

そして…

繰り返すこと

9回目。

1ミスでクリアうわあああああ!!!

ナジャ・サラヒム うん。悪くないネェ。この調子で、明日も頑張りな!
りぃ もうやだ!!

アブクーバ 社長……あの……スケジュールのこともありますし、あまり時間をかけすぎるのもいかがかと……。
ナジャ・サラヒム ナニ言ってるんだい!調練に手を抜いて、いい人材が育つとでも思ってるのかい?……と、言いたいところだけど、あたいも暇じゃないしねぇ。

ナジャ・サラヒム よし、それじゃあ明日はりぃにぜんぶ任せるとしようか。いいかい?手を抜くんじゃないよ。3人の仕上がりがそのまま、あんたの評価になるんだからネェ。がんばるんだよっ!

これ以上大変になったりするの?
もう…無理よぉ…。

ナジャ・サラヒム 来たね、りぃ。あんた、今じゃウチでなんて呼ばれてるか知ってるかい?容赦ないシゴキを課す、超キビシ~~「鬼軍曹」だってさ!
りぃ そんなぁ。

ナジャ・サラヒム さて、今日はあたいは見てやれないけど、一層のシゴキっぷりを発揮してくれることを期待してるよ!

むしろ私の方が社長からしごかれてないでしょうか。

ナジャ・サラヒム 例の3人を連れてきなっ!
アブクーバ は、はいっ!

アブクーバ さて、本日の調練メニューについてですが、先ほど、社長から言付けを承りました。それは……「今日の調練は大通りでのランニング。」

アブクーバ 「りぃが先導し、遅れている者には檄を飛ばし、ついてこさせるように。」……だ、そうです。

私も走るのか!

アブクーバ というわけで、今日はりぃさんに教官を務めていただきます。では、あとはお任せしてよろしいですか?
りぃ やだ。

アブクーバ そう言われましても……。ナジャ社長のご指名ですし、僕だって走りたくな……んでもないです。

たまに出る本音。

アブクーバ ただ、いっしょに走って遅れだした人がいたら、檄を飛ばせばいいんですよ。誰も遅れてないならその必要もないですから。どうです?りぃさんにお任せしてもよろしいですか?
りぃ わかったよぉ。

アブクーバ じゃあ、お願いします。

アブクーバ いちおう、スタートの合図だけやらせていただきましょう。それでは、位置についてください。

アブクーバ そうそう!あんまり厳しくしすぎると、みんなついてこれなくなっちゃいますから、それだけ注意してくださいね~。

あまり声をかけすぎるなってこと?

アブクーバ では、いきますよ。よ~~~い……どんっ!

1回目はどこまで離れたら駄目かとか、声かけすぎってどのくらいとか分からなくて失敗。

でも、2回目で。

アブクーバ お疲れ様です!これで今日の調練も終わりですね。

やった終わったあああああ!!!!

これが昇進試験の中で最難関だったらしい。
どう考えても腹筋のシビアさですね…。

アブクーバ 明日以降に関しては……うーん、どうしましょうか……。

もう何もなしでお願いします。

アブクーバ とりあえずナジャ社長に報告しておきますので、明日もまた、会社へ来てください。
りぃ はーい。

アブクーバ では、今日はお疲れ様でした!また明日お会いしましょう!

ナジャ・サラヒム 来たね!りぃ軍曹!

まだ何かあるんかな…。

ナジャ・サラヒム 何をビビってんだい?あんた、やってくれたそうじゃないか!

何を?

ナジャ・サラヒム アブクーバ!例の3人を連れてきなっ!
アブクーバ は、はいっ!

ナジャ・サラヒム 大したもんだよ、りぃ!こいつらをここまで屈強な傭兵に育てあげるとはネェ!

りぃ …は?

え?

坊主の方が3人ですが、どちらさま…?

ナジャ・サラヒム どうだい、あんたたち。生まれ変わった感想を聞かせておくれよ。

カリムル おかげで彼女ができました!

カリムル の人だ。

ワルジャル 身長が1イルム伸びました!

ワルジャル の人。

ザルドゥル ラッキーロールが当たりました!

ザルドゥル の人。

りぃ え、えええええええええ……??

ど、どうしたの?
あんな基礎的な運動でこんな!?

一体何が…。
私のシゴキが本当に厳しかった!!?!?

ナジャ・サラヒム よしよし、これはまたウチのパンフの「感謝の声」に載せられそうだネェ。

か、感謝の声…?

ナジャ・サラヒム あんたは最高の軍曹だよ!いや、もう軍曹なんてあんたには役不足だね!

ナジャ・サラヒム 傾注!りぃ軍曹!!

ナジャ・サラヒム 本日よりりぃ曹長と名乗ることを許可するっ!
りぃ は、はい…。

ナジャ・サラヒム これからも、ドンッドン会社に尽くしてガンッガン稼いでおくれよ♪

アブクーバ おめでとうございます!

アブクーバ (……しかし、本当にあの3人には何があったんだろう……。ひょっとしたらりぃさんは、元は有名な冒険者だったりです……?)

ナジャ・サラヒム ほらほらっ、いつまでも呆けてないで、曹長就任祝いにご公務をサクッとこなしてきなっ!
りぃ ええー。ちょっと休みたいぃー。

アブクーバ (……まさか、ですよね。)

だいじなもの:山猫曹長バッジを手にいれた!
「曹長」に昇格した!