昇進試験~傭兵長 其の壱

上等兵のアサルトもクリアしていくぅ!

このライアーフって人、風蛇将ナジュリスの弟なんだって。

アブクーバ ファルズンさん……。だんだんと、他の社員さんとの勤務評価に、差がついてきてます~。

ファルズン ……そう、ですか。
アブクーバ このままだと、僕は君に、キビシ~査定を下さなきゃならなくなっちゃいます。

上手く結果を残せてないのね。

アブクーバ あ!りぃさん。
りぃ こんにちは。

アブクーバ ……君たちは、同じ時期に傭兵になったというのに。彼女は、今や上等傭兵なんですよ。それなのに君ときたら……。

まだ二等兵なのかな。

アブクーバ 人事の僕から言わせてもらえば……
ファルズン だって!ボ、ボ、ボクにはっ!……ボクには、じ、自分の勤務評価を自分の力だけで、どうにかする自信なんて、ないんです……。

ファルズン ナジャ社長のトゲトゲは、怖いし……

ファルズン ナジャ社長の机を叩く音も、怖いし……

ファルズン 最近だと、ナジャ社長のあの目で見つめられるだけで……

ファルズン ……ボクは……。

ファルズン ……ボクは……。

ファルズン ……ボクは……。

ファルズン 怖くて怖くて仕方なくって……今じゃ、あの曲がり角だって曲がれやしないんだっ。
アブクーバ マジっすか……。(なんで傭兵になれたんだ、この人……。)

そもそもどうして傭兵になろうと思ったんだ。

アブクーバ でも、ファルズンさん。傭兵勤務評価の基準、ちゃんと覚えてますよね?
ファルズン はい、覚えてます……。

アブクーバ だったら、この前ナジャ社長に頼まれたことだけは、何があってもやり遂げないとダメです。

アブクーバ さもないと……。
ファルズン わ、わかってます!わかってますから……、もう少しだけ。待っててください……。

アブクーバ ……大丈夫なんです?
ファルズン ……わからないです。でも、とりあえず水だけでも汲んできます。それくらいならボクにも、きっとできるはずだから……。

ファルズン (たぶんですけど……。)

そんな大変な所に水を汲みに行かないといけないのかな。

アブクーバ ふ~。どうやら、やる気になってくれたみたいです。よかったよかった……。

アブクーバも大変なんだなぁ。

あの社長で、曲者ぞろいの傭兵で。
上手く回してるアブクーバ、只者ではないのでは!?

アブクーバ え?彼はどうしたのかって?実はですねぇ~……

ナフィワー ナジャ社長。お使いいただいてる「水晶指向儀」の具合はいかがですか?
ナジャ・サラヒム 上々だよ♪

ナジャ・サラヒム こいつのおかげで、あたいのかわいいモチゴマたちが……いつどこにいるのか、手にとるようにわかるんだからネェ。

…ん?

ナジャ・サラヒム ……このスイッチを押すだけで。ターゲットの経緯がわかるだなんて、皇国の錬金術ってのは計り知れないネェ。
ナフィワー お褒めに預かり、光栄ですわ。

持ち駒……傭兵たちに、GPS仕込んでるってこと!?

ナフィワー このたびナジャ社長を訪ねたのは、ほかでもない、水晶指向儀に関することでご相談があるからなんですよ。

ナフィワー サラヒム・センチネル社には傭兵が増えてきておりますでしょう?そのため、階級章に仕込んであるクオーツ発信器の製造がおいつかなくなってきていまして……。

階級章に仕込んでる!?
なんてこったい!!!

ナフィワー クオーツ発信器は、ターゲットの経緯を、水晶指向儀に逐一、伝達する役割を担うもの。その発信器の材料となる「霊晶水」が、足りなくて困っているのです。

ナフィワー 霊晶水は、「霊晶泉」の水の霊晶濃度を調整することで、作り出すことができます。

アブクーバが出たり引っ込んだりしながらコソコソ聞き耳立ててる。

ナフィワー どなたか、手の空いている傭兵の方をお貸しいただけないでしょうか?

ナフィワー 霊晶水の水汲みを、手伝っていただきたいのです。

ナジャ・サラヒム ファルズン!

ファルズン ……はい。

ダンッ!

ナジャ・サラヒム 声が小さいっ!!
ファルズン はっ、はい!

ナジャ・サラヒム あんたってば、ちぃ~っとも勤務評価が上がらないネェ。自分でもそのことは十二分にわかってるんだろう?

怖いけども、社員がどういう状況かちゃんと把握してるんだよねぇ。

ナジャ・サラヒム そんなあんたのためにっ!社長のあたいが、わざわざ仕事を見繕ってやったよ!

そして出来そうな仕事を回す、と。

ナジャ・サラヒム ありがたく、受け取りな!!
ファルズン こ、これは……。

ナジャ・サラヒム そのメモを読んだら、さっさと錬金術ギルドにお行きっ!
ファルズン は、はい……。

ナジャ・サラヒム わかってるんだろうけど、ま・さ・か、こんなこともできやしないなんて……言わせやしないよっ!!

アブクーバ で、そのメモにはなんて書いてあったかですって?僕には、さっぱり理解不能な複雑な計算式がビッシリ……でした。

水汲みだけじゃない?
ファルズン大丈夫かな。

戦闘は苦手だけど、賢かったりするのかな。

アブクーバ ……。

アブクーバ 心配だなぁ。そう思いません?りぃさん。
りぃ うんむ。

アブクーバ ナジャ社長には、ほんとのほんとに、こっそりひそかにナイショですけど……同じ日に傭兵になったよしみということで、ファルズンさんを手伝ってやってはもらえませんか?
りぃ いいよ。

アブクーバ よかった!僕の見込んだとおりの人です!

アブクーバはやさしいね。

アブクーバ さっそく、ファルズンさんを追いかけてあげてください!きっとまだ、錬金術ギルドの辺りでウロウロしてるんじゃないでしょうか……。